作家の妻の死
『作家の妻の死』ロバート・バーナード(ハヤカワ・ミステリ)

ヒルダ・メイチンとヴァイオラ・メイチン――二人の女が住むメドーバンクス荘は、ここ十年近く、危うい平衡を保ってきた。ヒルダは生き別れ、ヴァイオラは死に別れの違いはあれ、どちらも同じ男の未亡人で、その奇妙な同居生活は冷ややかな礼儀正しさを守りながら落ち着いているかに見えた。だが、青天の霹靂のように、生前評価さえrなかった二人の夫、作家ウォルター・メイチンが脚光を浴びたとき、この古屋敷の平和には目に見えないひびが入りはじめた!
マスコミは、先を争うようにウォルターの生涯を取りあげ、二人の未亡人を追いかけた。代表作の再刊はもとより、三十年も屋根裏に眠っていて、最近ようやくアメリカの研究家クロンワイザーの手で複写された未発表原稿も次々出帆されることになった。長年、財産とは縁のなかったメイチン家に、莫大な金が流れこもうとしていた。二人の未亡人をはじめ、それぞれの子供たちの思惑が入り乱れ緊張が高まった最中、ある夜メドーバンクス荘から不審な火があがった。(中略)
アメリカ探偵作家クラブ賞三年連続ノミネートで話題を呼んだイギリス期待の新鋭作家、本邦初登場。人間心理の鋭い描写と魅力的な謎――新・本格推理の注目作!(本書あらすじより)

ロバート・バーナードは2冊目。あらすじはややネタバレかなとも思うので、一部省略しています。バーナードは全部積んではいるのですが、ほとんど手を付けておらず。なお以前読んだ『雪どけの死体』は、ラストこそ輝いていたものの、全体的には地味すぎる作品だったという印象です。
さて『作家の妻の死』。事件の発端こそ魅力的ながらあまりに地味すぎる本格で、中盤もだれるし、正直なところこれといってアピールポイントがあるかと言えばそうでもないのです。ただ、この真相と結末には唸らざるを得ません。本当に上手いです。こういうの好きだなぁ。

ざっくりあらすじ。亡くなった作家・メイチンの二人の妻が住むメドーバンクス荘。彼女らは犬猿の仲であり、互いに干渉せず1階と2階に分かれて暮らしていた。しかしメイチンの作品が再評価されたことで大金が発生し、二人とその親族や関係者の間で緊張が高まる。そしてある晩、屋敷が炎上し……。

物語は二人の妻と仲が良かった青年グレッグ・ホッキングの視点が主となり語られていきます。グレッグは火災により起きた事故死に疑問を持ち、メイチンにかかわる出来事を調べ始める、という素人探偵役。奇妙な状況から幕をあげたわりに、あとはひたすら聞き込みが続くので、少々だれ気味です。
後半は火災よりも、メイチンの過去の調査が主となり、メイチンと二人の妻の関係を調べるようになるため、どちらかというと回想の殺人の趣きが強くなります。調べたことからグレッグが導き出した答えとは……。

いや、これはね、素直にびっくりしました。単純な構図なんですが、よくあるネタの仕込み方と明かし方が抜群に上手いと思います。証拠としては不十分なんですが、それすらこの結末を用意されるとむしろ味わい深く感じます。英国ミステリだなぁ!っていう。

もしかしてロバート・バーナードって、中盤が微妙の極みなのに、謎の用意と、結末の見せ方がすごく得意な作家なのかもしれません。おすすめしてまわるほどの作品でもありませんが、英国本格らしい堅実さが味わえる良作です。あとは、うん、訳さえよければ……。

原 題:Posthumous Papers(1979)
書 名:作家の妻の死
著 者:ロバート・バーナード Robert Barnard
訳 者:水野谷とおる
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ 1413
出版年:1983.05.31 1刷

評価★★★★☆
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://yossiworld.blog72.fc2.com/tb.php/1228-772d61dc