メグレと深夜の十字路
『メグレと深夜の十字路』ジョルジュ・シムノン(メグレ警視シリーズ)

アナセンの車庫の小型車が消えて、かわりに6気筒の新車、しかもなかに、ベルギーに住む宝石商の死体が……。当然アナセンが疑われたが、彼は17時間におよぶ尋問に耐えて、釈放された。パリ南方25キロ、《三寡婦の十字路》と呼ばれる事件現場は、国道に面していて、付近には3軒の人家しかない。ガソリン・スタンドを兼ねた自動車修理屋、問題の新車の持主でもある保険代理人、それにアナセンの家である。メグレが着いた日の夜、第二の事件が起った。殺された宝石商の夫人が車から降りた直後、暗闇で何者かに発砲され、射殺されたのだ……。(本書あらすじより)

毎月恒例月イチメグレですが、わぁ、これは面白いぞ(久々に)。初期メグレの当たり作品。ちなみに河出版は入手しにくいけど、ポケミス版の『深夜の十字路』ならまだ買えるし、あと電子書籍版なら安く買えます。
これまでちょこちょこシリーズ順にメグレを読んできましたが、初期メグレの中でも極めてバランス良い作品だと思います。お得意の冒頭の魅力的な謎をきちんと生かし切っているし、章末でしっかりと引きを作れているので読んでいて楽しい一作。シムノン流謎解き(本格ではない)+スリラーという感じの良作でしょう。

人里離れたパリ郊外のとある十字路には三軒だけ家族が住んでいる。その中の人付き合いをしないデンマーク人の兄妹の家のガレージから、隣家の車が死体入りで発見される。デンマーク人の車は隣家のガレージの中にあり、車が見知らぬ死体入りで交換されていた。この奇妙な状況を調べ始めたメグレ警視は。やがて大がかりな犯罪のにおいを嗅ぎつける。

先に言っておくと、シムノンの謎解きというのは、本格ミステリ的なフェアプレイに撤したものではありません。どちらかと言えば、ホームズなどの古き良き謎解きに近いものだと思います。だからきちんと機能しさえすれば、国際的犯罪者のようなものとの親和性がすごく高いのです。
本作でのメグレはかなり能動的だしキレも良い刑事です(前作までとはかなり違う)。事件が続発し、毎章ぐいぐいと次が気になる引っ張りを見せるなどリーダビリティも高く、明らかにシムノンの筆が載っているように感じます。ダメな時のメグレはあれですからね、作者ともどもマジでやる気を出さなくって捜査に行くのすら気が重そうですからね。
悪女ポジションの妹、陽気な車屋、うるさい保険屋と、キャラの描き分けもばっちりで、それだけに容疑者を集めて行うラストの犯人との対決が光ります。『サン・フォリアン寺院の首吊人』の発展形なのかな。初期メグレではかなり上位に来る出来なのではないでしょうか。

というわけで、うーんこれくらいのまぁまぁ良い作品が読めると、こつこつシムノン読んできた甲斐があるってもんですね……次のシムノンは『港の酒場で』の予定です。

原 題:La nuit du carrefour(1931)
書 名:メグレと深夜の十字路
著 者:ジョルジュ・シムノン Georges Simenon
訳 者:長島良三
出版社:河出書房新社
     メグレ警視シリーズ 46
出版年:1980.06.30 初版

評価★★★★☆
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