鋼鉄都市(旧)
『鋼鉄都市』アイザック・アシモフ(ハヤカワ文庫SF)

突然、警視総監に呼びだされたニューヨーク・シティの刑事ベイリは、宇宙人惨殺という前代未聞の事件の担当にされた。しかも、指定されたパートナーは、ロボットのR・ダニールだった。ベイリはさっそく真相究明にのりだすが、巨大な鋼鉄都市と化したニューヨークには、かつての地球移民の子孫であり現在の支配者である宇宙人たちへの反感、人間から職を奪ったロボットへの憎悪が渦まいていたのだ……傑作SFミステリ!(本書あらすじより)

3月はこの本の読書会のためにちょこちょことSF系の積ん読ばかり読んできましたが、ようやくこれで終わりです。
といっても『鋼鉄都市』は以前すでに感想を書いているので、今回は再読ということになります。ぶっちゃけ前回読んだ時よりはるかに面白かったです。やっぱり再読しないと感想はあてにならないもんですねー。

『鋼鉄都市』は、おそらくいまから2000年ほど未来の地球が舞台となっています。地球上の大都市はドームでおおわれており、地球人は外気に触れることを極端に恐れるようになっています。またはるか昔に宇宙植民に出かけて行った地球人の子孫たちによる宇宙国家が多数あり、地球にはいわば宇宙人の代表が来ている、という状況です。
さて地球では近頃ロボットをあらゆる職場に導入するようになっており、そのせいで職を失った人たちを中心にアンチロボット感情が芽生え、ロボット排斥運動が起きています。そのような中で宇宙人が殺されるという事件が発生。主人公イライジャ・ベイリ刑事は宇宙人の一人と組んでこれを捜査することになりますが、なんとその相棒は一見人間にしか見えない、宇宙でも最先端のロボット、ダニール・オリヴァーだったのでした。

……という設定を飲み込むのが、非SF読みである自分にはなかなか大変で、そのせいで初読時になかなかのれなかったのですが、今回は再読ですし、おまけに続編『はだかの太陽』を読んでいるせいでさすがにこのへん分かりやすく、物語にもすっと入れました。
殺人事件が、仮に地球人が行ったとすれば、ドームから出て外気に触れなければなしえない、いわば心理的な不可能殺人となっているのがポイントです(この地球人の特性についても続編を読まないと詳しくは書いていません)。犯人は宇宙人か、あるいは地球人か?犯行の方法は?と、かなりミステリミステリしており、さらにSFSFしているので、まさにSFミステリど真ん中と言えます。

そして面白いのが、主人公イライジャ・ベイリが推理をはずしまくる、スクラップアンドビルド型でもあることでしょう。結構ありそうで面白い推理を組み立て、それが崩れ、最終的に真相に到達するわけですが、そのボツ推理が真相へのしっかりとした伏線になっているあたり、アシモフの職人芸を感じます。
とはいえ、純粋にミステリとしての完成度がより高いのは、続編『はだかの太陽』でしょう。あちらも不可能犯罪ですが、真相の隠し方がより巧妙であると思います。推理はずしまくって中盤を持たせている『鋼鉄都市』より、第二の殺人事件が起きる『はだかの太陽』の方が楽しいし(まぁロボットと組んで捜査する、というバディ物としての楽しさは続編は皆無ですが)。『鋼鉄都市』を読んで、なるほどアシモフの推理物ってまぁこの程度でしょ、と思った方はぜひもう1作読んでいただければと。っていうかいま『はだかの太陽』は新訳復刊されたのに『鋼鉄都市』は品切れなんですよね……。

ひとつ大きな難点を挙げるとすれば、主人公イライジャ・ベイリになされたあることです。ベイリって、めちゃくちゃ絶妙なキャラ設定なんですよ。一見頭が堅くてとっつきにくく、アンチロボットアンチ宇宙人っぽいのですが、しっかり自分の頭で考え、進歩的なこともよければ受け入れ悪ければ批判するという、なんともいえないバランスを持ったキャラクターなのです。だからこそ、ロボットであるダニールとの捜査が、最初は反発していても次第に距離が縮まる、といういい感じのつかず離れずさを見せられるわけです。
……だとしたらやっぱりあの薬はねぇ、ダメですよ。ラストがすごくかっこいいはずなのに、なんかパッとしなくなっちゃうじゃないですか。なお『はだかの太陽』ではそのへん反省したのか、そういう小細工なしの絶妙キャラになっています。

なんだかんだ言ってここまで「SF」であり「ミステリ」であるシリーズは稀有なわけで、アシモフはすごいのですよね。はやく『夜明けのロボット』読みたいなぁ。

原 題:The Caves of Steel(1953)
書 名:鋼鉄都市
著 者:アイザック・アシモフ Isaac Asimov
出版社:早川書房
    ハヤカワ文庫SF 336
出版社:1979.3.31 1刷
    2001.05.31 21刷

評価★★★★☆
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