はだかの太陽
『はだかの太陽』アイザック・アシモフ(ハヤカワ文庫SF)

すべてがロボットによって管理される惑星ソラリア――だが、そこで、有史以来初の殺人事件が発生した。ロボットしかいない密室で人間が殺されたのだ。ロボットに殺人ができるはずはない。ソラリアの要請で急遽地球から派遣されたイライジャ・ベイリ刑事は、ロボットのオリヴォーとともに捜査に着手するが……『鋼鉄都市』の名コンビがふたたび登場し、完全殺人の謎を鮮やかに解明する、ファン待望の傑作SFミステリ!(本書あらすじより)

今週の土曜日に千葉で行われる『鋼鉄都市』読書会に参加するので、せっかくだから続編のこっちも読んでおこうと積んでいたものを引っ張り出してきました。ちなみに『はだかの太陽』は、去年ハヤカワ文庫補完計画の一環で新訳復刊されました。おぉめでたい。なおシリーズ前作にあたる『鋼鉄都市』は品切れです。ど、どういうことだってばよ。
実は『鋼鉄都市』はあまり楽しめなかったので、今回も「はいはいアシモフの書くSFミステリってSF設定がメインでついでに殺人事件も要素に入れちゃいましたみたいな感じでしょ」と完全になめてかかって読んだのですが、なんとちゃんと面白かった上にちゃんとミステリしてて、えー、土下座して詫びたいですアシモフさんに。

前作では地球で起きた宇宙人殺しをロボットであるオリヴァーとともに捜査・解決した地球の刑事ベイリが、今回は惑星ソラリアで起きた殺人事件を捜査するため宇宙に旅立ちます。他人と直接会うことを決してしないという、ソラリアの文化に基づく特殊設定のもとでの不可能犯罪、というのがすでにアツい。刑事の見ている前で新たな殺人事件が発生したりと、適度なミステリ展開の引っ張りもあり、ミステリ読み的にも面白さ十分なのです。
舞台となるソラリアは警察機構がないため、証拠保全などという考えも当然ありません。そこでベイリが地球のやり方で一から捜査を開始する、という流れがあるのですが、おかげで異星だというのに現地の刑事と衝突とかそういうこともなく、すごくしっかりとした捜査小説、あるいは言ってしまえばハードボイルド/私立探偵小説になっています。今回相棒オリヴァーがおせっかいかつ邪魔する存在でしかないので、『鋼鉄都市』に見られるバディ物要素は完全に犠牲になりましたが、むしろそのせいで単独捜査行感がにじみ出ていて楽しく思えました。

そう、『はだかの太陽』は、ロボット三原則を生かしたトリックだとか、宇宙人と地球人の出会いだとかこれでもかというSFである一方で、オリヴァーの素性を生かしたラストの解決や、真相自体はそこまで意外ではなくてもその上でのワンどんでん返しの盛り込みによって、こじんまりとはした、ある意味すごく堅実なミステリになっているんですよ。だからはっきり言って地味ですが、個人的にはこういうものの方が好きです。
堅実にまとめたぶん、ギャラクシーが云々とかオリヴァー派遣の理由とか色々ほのめかされ広げられた風呂敷を最終的に全くたためなかったのですが、ええいそんなものいらないんじゃ。なんかこう異星まで行っておいて、数人の容疑者を尋問し、被害者の妻といい感じの仲になり、結局せこせこした殺人事件だよ、みたいな地味さがいいじゃないですか(こういうところがまたハードボイルドっぽくてよい)。最後ちょっと警句っぽいことにページを費やすのが若干説教くさいけど(アシモフだから仕方ない)。

あと付け加えておくと、今回新訳ではなく冬川亘さんによる旧訳で読みましたが、これめっちゃ読みやすいですね。『鋼鉄都市』は福島正実訳だったのですが、あちらよりはるかに読みやすいと思います(別に『鋼鉄都市』が読みにくいわけでもない)。

というわけでこれはおすすめ。当然『鋼鉄都市』から読むべきだと思いますが、そこで止まっている人はぜひ次作も読んでみると良いです。このシリーズあと2作あるけど、うぅん、いずれ読むのかな……。どちらかというと『ABAの殺人』とか『象牙の塔の殺人』の方が興味あります。

原 題:The Naked Sun(1957)
書 名:はだかの太陽
著 者:アイザック・アシモフ Isaac Asimov
訳 者:冬川亘
出版社:早川書房
     ハヤカワ文庫SF 558
出版年:1984.05.31 1刷
     2001.05.31 16刷

評価★★★★☆
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