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『二都物語』チャールズ・ディケンズ(新潮文庫)

フランス貴族の子でありながらその暴政を嫌い、家名を棄てて渡英したチャールズ・ダーニー、人生に絶望した放蕩無類の弁護士シドニー・カートンの二人は、罪なくしてバスティーユに18年の幽閉生活を送ったマネット老人の娘ルーシーに思いを寄せる。折しもフランスでは、大革命の日が間近に迫っていた……。パリ、ロンドンの二都を舞台に展開する華麗な歴史小説。(本書あらすじより)

毎年年越しにはディケンズを読もうと決めていまして、今年がその年越しディケンズ企画第2回だったんですが、いきなり年越しに読めませんでした。忙しくて。でも1月上旬に読んだのでセーフです。いいんです。
さて、今年はディケンズの後期代表作の1つ『二都物語』です。ディケンズの長編4天王(知名度的に)と言えば『デイヴィッド・コパフィールド』『オリヴァー・トゥイスト』『大いなる遺産』『二都物語』じゃないかと思いますが、その中でも一番分量的には少ない作品です。ディケンズさんと言えば大長編に大量の登場人物を配置し謎の伏線回収とどんでん返しを連発させるほぼ(行きあったりばったりだけど)ミステリじゃんみたいなところが自分は大好きなのですが、『二都物語』は(ディケンズにしては)短い上に登場人物も少なめ。おまけに孤児ものでも貧乏ものでもなく、なんとフランス革命を扱った歴史もので、どちらかというと異色作なのではないでしょうか。
ただ、フランス革命という歴史小説要素を取り入れてはいるものの、完全に舞台背景としてしか使っていないので、基本的にはロマンス&サスペンスのぐちゃぐちゃストーリーでした。十分面白かったけど、ディケンズお前はもっとやれるはずだという気がするのも確か。

フランスの牢獄に18年間幽閉されていたマネット医師とその娘ルーシー、フランスの亡命貴族チャールズ・ダーニー、そしてチャールズそっくりの弁護士シドニー・カートンを中心に物語は進行します。三角関係っぽく紹介されていますが、シドニーは狂言回しに近いと思います。
フランス革命は舞台装置として機能していて、革命前の庶民を不条理に支配する国家(マネット医師の長期幽閉とか)と、革命後の貴族殺し(チャールズはパリ民衆に追われる立場となる)がともに語られます。ただしあんまり詳述されないので、歴史小説というほどではないのかなー。

こうした舞台の中で、ディケンズお得意の登場人物の正体を明らかにしていく形でのどんでん返しが連発されます。なんてことない名前だけの端役までが後々重要になりうるので油断がなりません。緻密な伏線というより突然のひっくり返しに近いけど、やっぱりこういう急展開は上手いと思います。
またストーリー上で上手いのが、マネット医師の役割。この幽閉パートが微妙に浮いていて、フランスの酒場のドファルジュ夫妻絡みだけかと思いきや、終盤になって(すごい無理やりだけど)本筋である三角関係?に結び付けられます。行き会ったりばったりっぽいこういう強引さが魅力的。

全体的には三角関係というより実質ルーシーとチャールズの恋物語が基本で、これを核に進んでいくのですが、最後を除けばやや物語力不足な印象を受けました。二つの都市を舞台にするからにはもっと登場人物を増やしてもよかったのかも。ディケンズはもっとやれる子です、俺は知っているのです(長編3冊しか読んでいないけど)。初ディケンズ長編には『大いなる遺産』の方が向いているのではないかな、と思います。

原 題:A Tale of Two Cities(1859)
書 名:二都物語
著 者:チャールズ・ディケンズ Charles Dickens
訳 者:中野好夫
出版社:新潮社
     新潮文庫 テ-3-3、4
出版年:上巻 1967.01.30 初版
         2012.08.30 66刷改版
     下巻 1967.01.30 初版
         2012.08.30 62刷改版

評価★★★★☆
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