そして死の鐘が鳴る
『そして死の鐘が鳴る』キャサリン・エアード(ハヤカワ・ミステリ文庫)

記録的な猛暑が英国を襲った日、ロンドン郊外のランダルズ・ブリッジで異常な天候に劣らぬ怪事件が起った。教会の鐘塔で、倒れて砕け散った巨大な石像の下から男の腕が突き出ていたのだ。捜査の結果、被害者は圧死前に殴られて気絶していたことが分かった。像は故意に倒されたのだ! が、人の通れる窓もなく、積もった破片が出口を塞いだ塔内から、犯人はどうやって逃げたのか――ベリバリー警察のスローン警部は巧妙な密室殺人の謎に敢然と挑む! 英ミステリの伝統に現代性を加え、知的ユーモアをちりばめた独自の作風を築く期待の女流本格派初登場。(本書あらすじより)

超久々に、『聖女は死んだ』以来のキャサリン・エアードを読んだわけですが……いやー、これはひどかったな……。
英国本格作家であり、1960年代以降今まで書き継がれているキャサリン・エアードによるスローン警部シリーズ第5作です(邦訳順では最初)。密室バカトリックが一部で有名なんだとか。
教会の塔での密室殺人というシチュエーションこそ燃えますが、あまりに酷い犯人の絞り込み、あまりに酷い二つ目の殺人に加え、シリーズ人物全員いけすかない気取り屋なのがどうにもつらかったです。いちいち会話文の後に地の文がだらだら挟み込まれる叙述スタイルも気に入りませんでした。

先に言っておくと、密室殺人は教会の塔の中で巨大な像に押し殺されて死ぬ、という激アツもの。トリックもがちがちな理系物理で、普通にバカっぽくていいと思います。犯人が現場との間を行ったり来たりしてトリックを成立させるべく細かく調整したりしたんだろうなぁと思うと笑えませんか。
ただ、本格ミステリとしてはそれ以外があまりにお粗末。読者を混乱させるべく手がかりばらまきすぎたあげく回収できませんでした、みたいのばっかりで……せめて登場人物くらい全員一回出して尋問くらいしてほしいです。密室トリックが仇となりあまりにあっさり捕まる犯人もアレですし、何より第二の殺人が酷すぎです。

また、文学的な才能が高く評価されたんだが知りませんが、被害者の娘がショックで悲しみにくれたりするわりにめっちゃ表面的だったりとか、最初から最後まで「使えない」だけがキャラクターとして与えられている部下のクロスビー刑事だったりとか、序盤出まくったくせに後半名前すら出ない家政婦ターベー夫人とか、結局最後まで行方不明だったりして怪しい怪しいと連呼されながら尋問すらされないまま終わってしまった某登場人物(複数)とか、とにかく物語と人間の動かし方が下手。どちらかというと、黄金時代の記号的登場人物に近いのですが、パズル性にも欠けるのでそちらにもなりきれず。こんなんで「クリスティーに匹敵する」とか言われても……。
あと個人的に、気取った会話文自体はまぁ許せるとして、誰かひとりが発言するたびにスローン警部の気持ちやら何やら無意味な地の文がいちいち挿入されるのが本当に気に入りません。文章全体はめっちゃ読みやすいんですが、なんかとにかく気になりました。

というわけで、そもそも『聖女が死んだ』も高校生の時に読んでそこまではまれなかったんですが、今回はさらに微妙でしたね……あと一冊読めば邦訳エアードはコンプリートですが、ううん、いつ読もうかな……積んではいるんですけど。

原 題:His Burial Too(1973)
書 名:そして死の鐘が鳴る
著 者:キャサリン・エアード Catherine Aird
訳 者:高橋豊
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ文庫 84-1
出版年:1982.09.30 1刷

評価★★☆☆☆
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