激突!
『激突!』リチャード・マシスン(ハヤカワ文庫NV)

”なぜ殺されねばならないのだ?” デヴィッド・マンは心の内で絶叫した。彼の車に巨大なトレイラー・トラックがつきまとい始めたのは、白昼のハイウェイ上でだった。初めは単なる嫌がらせかと思えた。が、やがて明確な殺意が露わになったのだ。他の車には目もくれず、ひたすらマンに襲いかかるトラック。逃げきるすべは皆無に等しかった……。いわれもなく死の縁に追いつめられた男の恐怖を描破した上記「激突!」をはじめ、家具が人間に反抗し始める異常世界を描く「狂った部屋」等、恐怖小説の巨匠の異色五短篇を収録した狂気のフルハウス!(本書あらすじより)

小鷹さん死去を受けて読んだ小鷹訳書2冊目。「激突!」と言えばスピルバーグ監督映画で有名ですが、そちらは観ていません。長編だと思っていたんですけど、この本短編集だったんですね。表題作をのぞけば他4編は1953年の初期短編です。
オチ自体は平凡で予定調和的なものが多いのですが、様々な角度から描かれている人間の「狂気」が印象深いです。やはり「激突!」が圧巻。次点は「蒸発」。というか他はあんまり……。初期作ということもあるのか、出来不出来にややばらつきがあるかもしれません。
でもまぁ、個人的にこういう狂気系の短編はほんとたまにでいいかな……もともとあんまり好きじゃないので。

「激突!」Duel(1971)
原題は!が入っていないことになんか感心しました。
トラック運転手が猛スピードでひたすら追いかけてくるという、理不尽な狂気と純粋な恐怖をひたすら描いた傑作。このシチュエーションで思い付きそうな設定が全て盛り込まれており、意外と車も止まったり寄り道したりします(けど逃げられないっていう)。相手の車高が高いせいで顔が見えない……ままで終わるのかと思いきや、きちんと顔を合わせ、しかもそのイメージがトラックのボディと結びつけられるのが上手いです。
恐怖の果てのラストが、マシスンの描いたテーマを象徴しているようで大変印象的でした。いやーこれは思い付いたもん勝ちだなぁ。

「狂った部屋」Mad House(1953)
偉大な作家を目指すも18年間1作も書けなかった田舎町の大学講師は、異様に怒りっぽく、狂気じみた男になった。
男がキレてる様子ばかり読まされていたら、ラスト予想外の角度でホラーが始まり超びびります。ワナビは死と紙一重。訳者解説が秀逸です。

「スローター・ハウス」Slaughter House(1953)
作家の兄と画家の弟は、幽霊屋敷と噂されるヴィクトリア朝の屋敷を買う。次第に弟の様子がおかしくなってきたことに気付いた兄は……。
正統的ゴースト・ストーリー。予定調和的な上にくどくて長いので、あまり楽しめませんでした。あと前後に挿入される後日談というか第三者視点の説明が余計なのですが、次の「蒸発」を見る限り、マシスンはこのパターンが好きなようです。

「蒸発 」The Disappearing Act(1953)
売れない作家はある日妻がいるのに浮気をしてしまう。後日浮気相手に連絡を取ろうとしたが、電話には誰も出なかった。
短めの話をテンポよく進め、最初に示されたオチに向かってまっすぐ進む話。アイデアが好みですごく良いです。っていうか笑います。解説によればマシスンが好きなテーマらしいですね。

「不吉な結婚式」The Wedding(1953)
木曜日の結婚式は悪魔のせいでダメ、ということから始まり、結婚式前に彼はありとあらゆる謎の行動を取った。
ショートショート風。特にコメントはなし。

書 名:激突!(1953~1971、日本オリジナル短編集)
著 者:リチャード・マシスン Richard Matheson
出版社:早川書房
     ハヤカワ文庫NV マ-6-1
出版年:1973.03.31 1刷
     1999.03.15 8刷

評価★★★☆☆
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