針の誘い
『針の誘い』土屋隆夫(角川文庫)

「いない……ミチルちゃんがいないんです」路地から飛び出してきた女はそう言った。誘拐した犯人は身代金を要求。しかし、指定の場所で殺人事件が起きてしまう。目撃者までいるというのに、犯人像が浮かび上がってこない――! トリック、意外性、論理性、独創性、そして文学性に溢れた傑作本格推理小説。(本書あらすじ改変)

誰が殺されるのか、は別にネタバレってほどでもないと思うんですが、一応あらすじをいじって分からないようにしておきました。あと表紙は自分が読んだ角川文庫版はもっと古いやつなんですけど、ネットで見つからなかったのでこれにしてあります。
恒例の月イチ国内ミステリです。今回は土屋隆夫の、千草検事シリーズ第1作。もはや全然新本格読まなくなっちゃってますね。もちろん初読作家です。
誘拐事件自体は派手なのに、全体としては超堅実な捜査&アリバイ崩しであるところが面白かったです。犯人の意外性はかなり捨てられている分、そこに至るまでの推理のスクラップアンドビルドが魅力的。それにしても国内ミステリは誘拐ものが得意ですねー。海外よりも圧倒的に多い気がします。

たまたま誘拐事件勃発現場に居合わせた千草検事。製菓会社社長の娘を誘拐した犯人は、母親を身代金取引に来させるよう指示する。千草検事らの努力もむなしく、ついに殺人事件へと発展してしまう。

誘拐事件からの不可能状況殺人事件という豪華な展開。事件現場周辺に胡散臭い人物がめっちゃうろちょろしており、ダミー推理が連発されます。最終的に出た真相がそこまでの推理に勝てないのはまぁご愛嬌というか、推理のスクラップアンドビルド型が往々にして抱えている欠点なので仕方ないのですが、既存のトリックをアリバイ崩しや誘拐事件に絡めたところが上手いと思います。
あと、特筆すべきは動機でしょう。既視感はありますが、もしかしてすごい斬新だったのでは? 斬新ですが、これを成り立たせるために犯人が大変ヒドい人物になってしまい、そこでこのヒドさを和らげるために色々追加したんじゃないかな、と予想します。
それと、これは個人的な好みですが、1970年発表というだけあって雅樹ちゃん誘拐殺人事件やら大学占拠やら作品発表時の(というよりそれよりちょっと前の)出来事がぽんぽん出て来るの、実に昭和ミステリって感じでいいですね。普段あまり読まないので新鮮です。

というわけで、手堅くまとまった一冊でした。もしかしてクロフツっぽいのかなぁ。

書 名:針の誘い(1970)
著 者:土屋隆夫
出版社:角川書店
     角川文庫 緑406-9
出版年:1977.05.20 初版
     1979.06.30 4版

評価★★★★☆
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