その女アレックス
『その女アレックス』ピエール・ルメートル(文春文庫)

おまえが死ぬのを見たい――男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが……しかし、ここまでは序章にすぎない。孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。イギリス推理作家協会賞受賞作。(本書あらすじより)

去年翻訳ミステリ界どころか読書界に嵐を持ち込み、各種ミステリランキングを総嘗めにした、言わずと知れたピエール・ルメートルの日本デビュー作。発表順でいえば今年出た『悲しみのイレーヌ』の方が先になりますし、実際両方読める今となってはちゃんとシリーズ順で読んだ方がいいと思います。
で、これはもう流行ったからひがんでるだけじゃないのかとか言われそうで嫌なんですけど、ほんとねぇ、合わない作家ってたまにいるんですよ。例えばヘレン・マクロイとか、なぜかはまらない。で、どうもこのピエール・ルメートルさんも、まだ2作しか読んでいませんがそうなんじゃないかって気がしてきました。

もうこれだけ有名なのであちこちで感想など見られると思いますから、かなり簡潔に。
序盤はアレックスなる女性が誘拐・監禁され、死にかけ、そのタイムリミットまでにヴェルーヴェン警部は救えるのか、という話になります。中盤以降はどんでん返しというか、話のタイプが変わるので、あらすじで書けるのはここまででしょう。

読み終わってまず感じたのが、この作品の構造的な気持ち悪さです。要するに、第1部(個人的には一番面白かった)が、第2部、さらに第3部と完全に切り離されているのが気になったのです。
しかしよくよく考えると、この本が宣伝文句としていることばが「大逆転」「予想はすべて裏切られる」であることを考えると、この構造、つまり読者の、小説であればこういう展開になるだろう、という予想を裏切っていく話の運び方こそがたぶん『その女アレックス』の魅力なんだろうと思うのです。つまり、何でしょう、一般的に言う「どんでん返し」とはたぶん違うんですよね。だから最初に感じた気持ち悪さについてはまぁいいのかなと思います。

ただ、それでも、このパッチワークのようなミステリを好きになれるのかというと別の話で。
誘拐・監禁パートのタイムリミット的な面白さは当然まずあります。ちょっとグロかったり気持ち悪かったりするシーンがないでもないですが、自分もここ数年この手のをちょっとずつ読むようになってきたので大分慣れました。
ただ、第2部の内容はかなり普通のクライム・サスペンスなのです。ここまで読者をぐいぐい引っ張ってきたのに、突然今まで通りのミステリを読まされてしまう感じ。この落差がやっぱり好きになれません。
第3部は、単純に一番嫌いな小説のパターンだった、とだけ言っておきます。

というわけで、これだけ合わなかったのはかなり残念ですが、それでもフランス・ミステリへの関心がこの1作だけで一気に高まったのも事実ですから、感謝しないといけませんね。
というか思ったんですけど、自分が好きな「フランス」・ミステリってのは、結局おふらんすな小洒落た雰囲気と気取った文体に彩られたものだけで、自分はただのミーハーなのかも……うっつらい。

書 名:その女アレックス(2011)
著 者:ピエール・ルメートル
訳 者:橘明美
出版社:文藝春秋
     文春文庫 ル-6-1
出版年:2014.09.10 1刷
     2015.02.01 11刷

評価★★☆☆☆
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