謎まで三マイル
『謎まで三マイル』コリン・デクスター(ハヤカワ・ミステリ文庫)

河からあがった死体の状態はあまりにひどかった。両手両足ばかりか首まで切断されていたのだ。ポケットにあった行方不明の大学教授のものと考えたモース主任警部は、ただちに捜査を開始した、が、やがて事件は驚くべき展開を見せた。当の教授から、自分は生きていると書かれた手紙が来たのだ。いったい、殺されたのは誰か? モースは懸命に捜査を続けるが……現代本格の旗手が贈る、謎また謎の傑作本格。(本書あらすじより)

コリン・デクスターは高校生の頃にどはまりしていた作家で、今でもたぶんクリスティーの次くらいに好きな作家です。先日ツイッターでこの本をおすすめしたら、実際に読んで感想をあげてくれた方がいたので、よっしゃいっちょ俺も再読してみるか、となった次第。
そして久々に読んだらまーー面白いこと。やはり自分は初期より中期以降のデクスターが好きだな、と再確認しました。死体の身元捜しでほぼ一冊を費やしながら、双子やら行方不明数人やら犯人からの手紙やらをミキサーにかけることで変態的なパズラーとぶっとんだ意外な真相が生まれています。お見事。

事件はあらすじの通り。両手両足首切断の死体が見つかり、これは誰の死体なのか、ということを調べるのが中心です。誰もDNA鑑定とか考えないのがいかにもモース警部らしいですね(血液型鑑定すらしないんだから)。容疑者に双子がいたり、行方不明の人物から手紙が送られてくるなど事件は迷走を極め、モース警部の推理も迷走を極め、終盤では数少ない登場人物がばったばったと死んでいくのでワケが分かりません。
真相は、実のところ説明つけたもんがちというものである程度無理やりですし、そこに至るまでに作られては捨てられていった推理の方が魅力的だったり説得的だったりしないわけでもありません。複雑な真相のための真相というか。本格ミステリ的なところにツッコミを入れるときりがないでしょう。それでも、ラストの死体ラッシュにより読者に一瞬とて落ち着いて考えさせることをさせずに、超意外な死体の正体を明かすこの構成が、自分はすごく好きだということは言っておきます。何度読んでも笑っちゃいます。

ちなみにこの作品は13作あるモース主任警部シリーズ長編の6作目です。この頃はまだ各章の頭に引用を置いていませんが、かわりに古き良きイギリス小説らしく、「この章ではモース主任警部が○○をする」みたいな説明芸をやっています。モース、ルイス、マックス、ディクスンらのキャラも確立しており、とにかく読者を笑わそうというふんだんなくすぐりに加え、読者を惑わしまくるメタ視点もふんだんに挿入されるのです(実はこの時彼らは気付かなかったのだが……とかどんどん書いてしまうのです)。デクスターのユーモアって本当に好き。

というわけで、これをコリン・デクスター一発目に読ませるのはなんか違う気もするのですが、『ウッドストック行最終バス』を読んだっきり手をつけていない、みたいな人にはぜひ読んでもらいたい作品です。デクスターはこういう一発芸じみたトリックだって面白いのよ。


書 名:謎まで三マイル(1983)
著 者:コリン・デクスター
訳 者:大庭忠男
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ文庫 148-6
出版年:1993.09.15 1刷

評価★★★★★
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