ユー・アー・マイン
『ユー・アー・マイン』サマンサ・ヘイズ(ハヤカワ・ミステリ文庫)

夫、妻、双子の男児、そしてもうすぐ女児が生まれる幸せな家。そこに一人のベビーシッターがやってきた――33歳のゾーイは、巧みに反抗的な双子をてなずけ、夫は彼女を信頼するようになる。が、妊婦のクローディアには何かがひっかかる。ひそかに家の中の何かが微妙に変わっていく。その頃、街では妊婦が残忍な手口で惨殺される事件が起き、さらに同様の事件が……全世界の女性をうならせた、衝撃の結末が待つサスペンス。(本書あらすじより)

今年のハヤカワ・ミステリ文庫は面白いな……良質なサスペンスが多い印象です。ノーマークだった『ユー・アー・マイン』なのですが、いやこれがもうめっぽう面白かったのでした。
あらすじと序盤だけ見るとどろっどろのいや~なミステリっぽいのですが、中身は意外な真相とさりげない伏線芸が秀逸なよく出来た英国サスペンス。話が動き出す中盤までがやや長く感じられますが、散りばめられた不穏さで乗り切っていますし、何より読みやすいです。おすすめです。

クローディアは海軍に所属する夫と結婚したばかり。夫の先妻との間に出来た手のかかる双子は、まだあまりクローディアになついていない。そんな中でクローディアは妊娠するが、夫は長期的な遠征で家をあけていることが多く、ベビーシッターを雇うことにした。その頃近所では連続妊婦殺害事件が起きており……。

応募してきたベビーシッターが、家の中を嗅ぎまわるわ何かをもくろんでいるわで超露骨にうさん臭いのです。おまけに彼女の人間関係が色々と謎で、彼女視点の章がヒント&疑問を読者に次々と投げかけて来るので、先がめちゃくちゃ気になります。誰によって何がなぜ進行しているのか、読者が全く読めないのです。
さらに、近隣で発生する連続妊婦殺害事件の捜査が同時に描かれます。捜査するのは、お互い不仲な刑事夫婦コンビ。彼らもまた子育てに問題を抱えており、事件どころか家庭内がごたついています。基本的にはこの捜査パートとクローディアの一家の話は別々なのですが、次第にゆるーく、そして怪しげなつながりが浮かび上がる様が絶妙。刑事たちの視点がついにベビーシッターと混ざり合い、一気に事件解決に向けて動き出すラストは圧巻です。このへんの叙述がうまいなー。

最後に明かされる真相がかなりのどんでん返しで、うわっまじかっとナチュラルに驚かされるんですが、ここで色々と遡る形で伏線が回収されるのが面白いんですよね(本格ミステリとして評価する向きがあるのも分かります)。個人的に、あの、ぼよーんにすごく感心しました。奇をてらうわけではなく、あれか!と納得できるサスペンスとしての驚きが心地よいのです。

数少ない登場人物の心情をしっかり描き、適度な緊張感とどんでん返しを用意し、さりげなくベタだけど好印象なラスト一行でしっかり締める、という超良作でした。個人的には今年の新刊の中でもかなり上位。ちなみに続編は、バリバリ英国田園警察小説の流れを汲んだサスペンスらしく、この作者は本格ミステリ的な伏線芸が出来る人だと思うので、ぜひぜひ翻訳してくださいお願いします。

書 名:ユー・アー・マイン(2014)
著 者:サマンサ・ヘイズ
訳 者:奥村章子
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ文庫 417-1
出版年:2015.05.25 1刷

評価★★★★★
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