犬はまだ吠えている
『犬はまだ吠えている』パトリック・クェンティン(ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)

その日のキツネ狩りの「獲物」は頭部のない若い女の死体だった。悲劇は連鎖する。狩猟用の愛馬が殺され、「何か」を知ってしまったらしい女性も命を奪われてしまう。陰惨な事件の解決のために乗りだしたドクター・ウェストレイク。小さな町の複雑な男女関係と資産問題が真相を遠ざけてしまうのだが……。ドクター・ウェストレイク・シリーズ第1作!(本書あらすじより)

復活した原書房のヴィンテージ・ミステリ・シリーズより、ピーター・ダルース物ではない、新たなパトQのシリーズが登場です。このウェストレイク医師シリーズについては解説がめちゃくちゃ詳しいのでそちらを読んでいただきたいのですが、サスペンス性と謎解きが合わさったシリーズと言えるようです。
で、やっぱりクェンティンは読んでいて安定して面白いです。全体的に暗めなトーンが特徴。小刻みに事件を起こしサスペンスを盛り上げようとしており、尋問シーンの処理も上手いですね。ただし、メイントリックが弱く、真相がやや分かりやすいのが惜しいので、今年訳されたもうひとつのパトQ作品『死への疾走』に軍配をあげたいところ。

田舎の医師ウェストレイクがその日参加したキツネ狩りは最初からおかしかった。前日は猟犬が吠えまくり、馬が暴走する。そして狩猟嫌いの男の地所から見つかったのは、頭と腕のない死体だった。友人コブ警視から保安官代理に任命された医師は捜査を行うが……。

登場人物が言っていたように、とにかく事件が連発します。殺人が続き、盗難が続き、失踪が続く、というように常に何かが起きています。その合間を縫って尋問も行われるのですが、あんまり尋問に割ける時間がないため、同じ人物に何度も戻ることがなく、常に新情報が提供されているという感じで大変読み進めやすかったです。最終的に全員がしっかり怪しくなるのも定番の良さ。
メイントリックは今となっては意外性に乏しいものですが、その後犯人まで当てられるかというとかなり難しいので、フーダニット面できちんと驚きがあります。特に馬殺しの理由が面白いですね。ただこの犯人当てをすると、メイントリックを成立させるのがかなり危うくなるのではないかなぁと。やや無理があるかもしれません。

それでも誰が犯人でもおかしくないような状況を作り出し、うまいこと犯人探しの面白さと重苦しい雰囲気を融合させるクェンティンの手腕はやっぱりすごいのです。ひところは『俳優パズル』が幻の名作、というだけの紹介でしたし、毎年のように出ているのでそろそろネタが尽きるかと思っていたのに、この人未訳にいっくらでも面白い作品がありますよね。クラシック・ミステリ作家の中では断トツで読みやすくよく出来た本格ミステリを書ける人なので、パトQは比較的初心者にもおすすめしやすいのかなぁ、とあんまり海外古典を読まない友人が読んでいる様子を見ていて思いました。

書 名:犬はまだ吠えている(1936)
著 者:パトリック・クェンティン
訳 者:白須清美
出版社:原書房
     ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ
出版年:2015.04.30 1刷

評価★★★★☆
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