ワシントン・スクエアの謎
『ワシントン・スクエアの謎』ハリー・スティーヴン・キーラー(論創海外ミステリ)

1921年発行の五セント白銅貨を集める男の目的とは? シカゴへ来た青年が巻き込まれる奇妙な犯罪+作者からの「公明正大なる」挑戦状。(本書あらすじより)

ついに、ついにあのハリー・スティーヴン・キーラーの翻訳が出てしまったのです。
ご存じない方のために説明しますと、キーラーは「史上最低のミステリ作家」とも言われる人物で、作風がはっきり言って意味不明・理解不能なことで知られています。詳しくは、日本で唯一キーラーを研究している柳下毅一郎さんの Harry Stephen Keeler Tribute というサイトをご覧になればよいと思います。やばいです。っていうか柳下さんが解説書けばよかったのに。

というわけで一部界隈で熱望されていたキーラーの作品がついに翻訳されたわけですが……こういうゲテモノは嫌いじゃないのですが(むしろ好きです)、結局ヘタなミステリ以上のものでもないんですね……。そもそも他の作品の紹介を見る限りでは、『ワシントン・スクエアの謎』はかなりマトモな方ですし、なぜこれから訳したんだろう?と思わなくもないです。後書きに紹介されているもっと根本的に頭おかしい話の方が読みたいので、もう少し紹介が続いて欲しいですね。

あらすじはもう説明しきれないのでカットで。要するに巻き込まれサスペンス&フーダニットです。
登場人物が惜しげもなくリサイクルされ、使いまわされるという、たぶん何にも考えていなそうなご都合主義的偶然多様プロットが妙にハマります。『赤い右手』をもっとバカっぽくした感じ。通りすがりの人が数十ページ後に実は○○だった、みたいなことが毎章のように判明するわけです。
ドタバタ喜劇っぽい巻き込まれサスペンスなストーリー展開、のくせに妙にごちゃごちゃした複雑な事件の背景を経て明かされる爆笑オチの真相には、いやもー笑わざるを得ません。その前に読者への挑戦を挟み込むのがずるすぎるというか(フェアさの欠片もない急転直下の真相)。この読者への挑戦は別に探偵小説へのアンチテーゼとかパロディとかそういうんじゃないですね、うん。作者が何にも考えていないだけだな。なんとなく、ドーヴァー警部シリーズのオチに近いかも。

というわけで、雑でヘタなミステリなのですが、嫌いになれないんだなー。おすすめもしませんが。次回はぜひ、もっと現実味のないありえない謎とか、人間っぽさのない怪物みたいな登場人物が出てくる話が読みたいです。お願いします。

書 名:ワシントン・スクエアの謎(1933)
著 者:ハリー・スティーヴン・キーラー
訳 者:井伊順彦
出版社:論創社
     論創海外ミステリ 148
出版年:2015.05.30 初版

評価★★★☆☆
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