その罪のゆくえ
『その罪のゆくえ』リサ・バランタイン(ハヤカワ・ミステリ文庫)

公園で発見された幼い少年の遺体。犯人として逮捕されたのは十一歳の少年セバスチャンだった。彼を弁護することになった若き事務弁護士ダニエルは、セバスチャンを救うため奮闘しながら、自身のつらい少年時代と、里親ミニーとの出会い、そして後の断絶を思い返すが……。心にひそむ闇を描きだす傑作サスペンス!(本書あらすじより)

今年の新刊の中でもかなり上位にくる面白さでした。主人公である弁護士ダニエルの過去にせよ、裁判のゆくえにせよ、重厚な物語を紡ぐことで説得力ある描き方をしている点に一番好感が持てます。うまいなー。

物語は、どこか怪しいながらもその無実を信じて弁護士ダニエルが十一歳の少年セバスチャンを弁護する現在パートと、母親から引き離され里子に出された少年時代のダニエルを描く過去パートが交互に綴られていきます。
まずこの過去パートが圧倒的に面白いのです。周りに迷惑ばかりかけるすさんだ少年と、彼を温かく保護しようとする里親ミニーの話が、そりゃもう孤児物語の鉄板でベタ中のベタなのですが、これがとにかく読ませます。過去パートの使い方が上手いせいか、600ページという結構な長さが一気に読めてしまいます。

というか、結局現代パートで裁判にかけられるセバスチャンはダニエルが過去を振り返るきっかけとさせる触媒に過ぎず、主人公はあくまでダニエルだ、ってのが面白いところですよね。ひたすらダニエルに焦点を当てるがために、前半弁護士としての活動が不十分じゃないか?という感じもするし、なんとなく物足りないラストが生じることになってはいます。しかしダニエルの物語として見ればこの上なく完璧なので、これはこれでベストの形なのかなと。
ひとつ言うなら、ダニエルのミニーに対する態度が途中であまりに変わりすぎでは、と思います。現代のダニエルは里親ミニーと大きな確執があり、これについては最初からダニエルの過去に何かがあったことがおぼろげに示されています。しかもこれは明かされるとかなりつらいエピソード。ところが物語後半で、ダニエルはついにミニーを受け入れるんですよね。現代パートでのミニーの死やセバスチャンの弁護を通じて、ダニエルは変わったのかもしれませんが、セバスチャンがそんな簡単に感情移入できないキャラクターなだけにきっかけがよく分からず、やや違和感があります。

現代パートの法廷ミステリ部分は、捜査パートはほぼ皆無ですが、裁判の尋問が驚くほどしっかり作り込んでいて素晴らしかったです。不利な状況が、反対尋問により揺れ動き、判決がどうなるか分からない様をじっくり描きこんでいて迫力十分。やっぱりこの作者、うまいです。

というわけで、総じて隙のない、当たりの新刊、という感じです。読んで損することはない一作かなと思いますので、気になる方はぜひ読んでみては。

書 名:その罪のゆくえ(2012)
著 者:リサ・バランタイン
訳 者:高山真由美
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ文庫 420-1
出版年:2015.07.15 1刷

評価★★★★☆
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