トマト・ゲーム
『トマト・ゲーム』皆川博子(ハヤカワ文庫JA)

壁に向かってオートバイで全力疾走する度胸試しのレース、トマト・ゲーム。22年ぶりに再会した男女は若者を唆してゲームに駆り立て、残酷な賭けを始める。背後には封印された過去の悲劇が……第70回直木賞候補作の表題作をはじめ、少年院帰りの弟の部屋を盗聴したことが姉を驚愕の犯罪に巻き込む「獣舎のスキャット」等、ヒリヒリするような青春の愛と狂気が交錯する全8篇収録。恐怖と奇想に彩られた犯罪小説短篇集。(本書あらすじより)

久々の月イチ国内ミステリ。初皆川博子です。もうとにかくうまい作家さんで、おまけにまだまだバリバリ執筆を続けているというのがすごいですよね……。この間新宿紀伊国屋でやっていた皆川博子フェアも見て来ましたが、皆川博子おすすめの本コーナーが面白かったです。
さて、『トマト・ゲーム』、著者の初期短編集です。もともと単行本として出版されたのですが、文庫化する際に過激すぎるとのことで「獣舎のスキャット」「蜜の犬」が削られ(この2作は『悦楽園』でも読めます)、「遠い炎」「花冠と氷の剣」が追加されました。かなり入手困難な一冊となっていたのですが(再版もされてるのにね)、このたび全作品収録で、いわば完全版として復刊したわけです。

「トマト・ゲーム」(1973)
「アルカディアの夏」(1973)
「獣舎のスキャット」(1973)
「蜜の犬」(1974)
「アイデースの館」(1976)
「遠い炎」(1975)
「花冠と氷の剣」(1976)
「漕げよマイケル」(1974)

もうね、本当にうまいんですよ。直木賞選考委員の源氏鶏太(61)が候補作の「トマト・ゲーム」を読んで皆川博子(44)を「実に達者である。今からこんなに達者過ぎてどうであろうかと思わせられた。」と述べたらしいのですが、それも納得。感情が、熱情が、悲愴が、繊細な文体からほとばしるのです。
おまけに内容が尖りまくっていて痛烈。とにかくつらい。感情移入できるとかできないとかそういう次元じゃなくて。精神を病んだ登場人物が破滅に向かって疾走するのです。ひとつとして気持ちよく読了できるものがないんですが、それでも読者を惹きつけてやまない魅力があります。
でもよかったのは、1973年ごろの、特に尖ってるころの作品だったかなー。複数のパパを持ちコノハズクを飼う少女の危うさを描いた「アルカディアの夏」がベスト。こういう短編集を中高生の頃なんかに読んでたらそれこそ大きく自分の性格に影響があったでしょうね……。

というわけで、なかなか強烈な短編集ですので、好みに合うかどうかは分かりませんが(自分は強いて言えば苦手な部類)、ハイクオリティっぷりは保証できます。ぜひ一度おためしあれ。

書 名:トマト・ゲーム(1973~1976)
著 者:皆川博子
出版社:早川書房
     ハヤカワ文庫JA 1197
出版年:2015.06.15 1刷

評価★★★★☆
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