最後の1分
『最後の1分』エレナー・アップデール(東京創元社)

クリスマスを控えたある日、ヒースウィックの町で連続爆発事件が起きた。主な原因は事故発生から半年を経ても明らかになっていない。クリスマスに娘が会いに来るのを楽しみにしている老人、一世一代の大葬儀を控えた葬儀会社の経営者、次期選挙を控えた不倫中の政治家、就職活動中の冴えない若者、そして……。ひとりひとりの登場人物たちの人生の一コマが、一分というものすごく限られた時間のなかに凝縮し、見事に描かれた野心作。(本書あらすじより)

最初の1章で、大規模な爆破事故が起きたことが語られます。
続いて、爆破の60秒前、59秒前、58秒前……と、1秒ごとのその一帯の様子が全て描かれます。
……という、なかなか珍しい構成の一冊。とある小さな町で起きた爆破事件。その1分前の様子を秒刻みで表した群像劇で、1秒ごとに誰が何をしていたかが語られ、一瞬としてよそ見が出来ません。爆発の原因を探す倒叙の伏線探し的な要素もありますが、どちらかというとノンフィクションの味わいに近いと思います。

冒頭で爆破事故の悲惨さが示されるため、みんな死んでしまうことが薄々読者には分かるんですよね。しかし爆破前の彼らの心境は、何でもないことばかりで単なる日常風景に過ぎません。でも死んじゃうのです。着地点が見えているからこそ、なんてことない町の様子に凄みを感じます。
読者としては集中を切ることが出来ないし、登場人物多すぎるしで、最初は結構しんどかったんですが、上空の飛行機の怪しげな乗客、爆破事故を予期させる不穏な手がかりが徐々に明かされるに従ってやめられなくなりました。最後の方は一気読み。なかなか面白い試みでしょう。

ただこの本のすごいのは、これだけ爆破事故までをひたすら描いているのに、事故原因の説明が不十分なままで終わってしまうということじゃないでしょうか。そのせいで、フィクションなのにノンフィクションのような味わいがあり、報道の途中までで終わってしまったかのような妙な読後感があります。
1分前を遡るやり方やこの閉じ方が、はたして成功しているのかというと、ぶっちゃけ微妙っちゃ微妙な気がしなくもないんですが(フィクションとしては散漫な印象を受けます)、かなり変わったタイプの小説としての面白みはあると思います。いやーしかし作者の中ではこれどういう結末になっているんでしょうね……気になるな。
といわけですので、気になる方はお手に取ってみては。

書 名:最後の1分(2013)
著 者:エレナー・アップデール
訳 者:杉田七重
出版社:東京創元社
出版年:2014.11.14 初版

評価★★★☆☆
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