紙の動物園
『紙の動物園』ケン・リュウ(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

ぼくの母さんは中国人だった。母さんがクリスマス・ギフトの包装紙をつかって作ってくれる折り紙の虎や水牛は、みな命を吹きこまれて生き生きと動いていた……。ヒューゴー賞/ネビュラ賞/世界幻想文学大賞という史上初の3冠に輝いた表題作ほか、地球へと小惑星が迫り来る日々を宇宙船の日本人乗組員が穏やかに回顧するヒューゴー賞受賞作「もののあはれ」、中国の片隅の村で出会った妖狐の娘と妖怪退治師のぼくとの触れあいを描く「良い狩りを」など、怜悧な知性と優しい眼差しが交差する全15篇を収録した、テッド・チャンに続く現代アメリカSFの新鋭がおくる日本オリジナル短篇集。(本書あらすじより)

収録作
「紙の動物園」(2011)
「もののあはれ」(2012)
「月へ」(2012)
「結縄」(2011)
「太平洋横断海底トンネル小史」(2013)
「潮汐」(2012)
「選抜宇宙種族の本づくり習性」(2012)
「心智五行」(2012)
「どこかまったく別な場所でトナカイの大群が」(2011)
「円弧」(2012)
「波」(2012)
「1ビットのエラー」(2009)
「愛のアルゴリズム」(2004)
「文字占い師」(2010)
「良い狩りを」(2012)

非常に評判がよかったので久々のSFです。海外SFの短編集を読むのって初めてな気がする……いや、それだけ読んでないってことなんですけど。
非常にアベレージが高く、幅広い読み心地を与える良質な短編集です。全体に漂う淡い雰囲気が結構好みで、広くおすすめしたくなる感じ。SF度合いの強さもピンキリなので、個人的にすごくちょうど良いレベルのSFでした。これ!という飛び抜けた作品はなかったんですが、ほぼ全作品必要なだけの満足度を与えてくれるというのは嬉しいですね。

内容は、はっきり言って全部同じテーマなんですよ。要するに古きに帰れ。懐古主義。新しいものより古いもの。科学への不信感。科学より魔術。進歩した欧米より原始的なアジア。みたいな。作者は中国系アメリカ人だそうなので、なるほどこういうテーマが好みかなということでしょう。
で、その同じテーマを、とにかくあれこれ手を替え品を替え見せてくれるのです。テーマこそ同じだけど、話はそれぞれ全然違います。まぁちょっとパターンが似ているので後半ちょっと飽きて来たりもするんですが、それでもやっぱりこの作者は”上手い”です。話は過激なものではなく、むしろ暗いテーマであっても心温まるような文章で読みやすいです。
ベストを選ぶなら、「潮汐」(この短さでまとめたのが素晴らしい)、「心智五行」(古きに帰る、というテーマの中で一番気に入ったかも)、「1ビットのエラー」(ときにはずいぶん、の部分がなぜかすごく好き)。次点が「太平洋横断海底トンネル小史」「どこかまったく別な場所でトナカイの大群が」かな。読んだ人みんなベストが異なるという、大変贅沢な短編集でもあります。

というわけで、おそらく今年のSF1位間違いなしという感じな話題作ですので、手に取ってみるといいですよ。

書 名:紙の動物園(2004~2013)
著 者:ケン・リュウ
訳 者:古沢嘉通
出版社:早川書房
     新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5020
出版年:2015.04.22 1刷

評価★★★★☆
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