白の迷路
『白の迷路』ジェイムズ・トンプソン(集英社文庫)

フィンランド国家捜査局で特殊部隊を指揮するカリ・ヴァーラ警部は、術後の後遺症にもめげず超法規的に麻薬を取締まる日々を送っていた。ある日、移民擁護派の政治家が殺害され、頭部が移民組織に届く事件が起こる。それを契機に報復殺人が続発。不穏な空気が急速にフィンランドを襲う。そんな中、謎の男がカリの前に現れた。果たして彼は敵か、それとも……? 北欧社会の闇を描く、極寒ミステリ第3弾!(本書あらすじより)

うっひゃあ、2作目からこんなにも変わってしまうとは。すごいすごい。完全にノワールじゃないですか。
作者急逝により4作で終わってしまったカリ・ヴァーラ警部シリーズの第3作です。作者はフィンランドに移り住んだアメリカ人で、主人公のヴァーラ警部はフィンランド人、奥さんがアメリカ人、という設定です。

前作はちょっとノワールでハードボイルドなところもある警察小説、ってな感じでした(傑作)。ところが前作のラスト、ヴァーラ警部はとある非合法の警察部隊の指揮を取ることを求められて終わっていたのです。ということで、今作はがっつり非合法に麻薬を取り締まるため、強盗殺人すらいとわない警官に。おいおいどうなってしまったのさ。
もちろん心優しきヴァーラ警部が突然変貌してしまったのにはワケがあるのです。彼は脳腫瘍が見つかったのですが、その術後、感情がほとんど湧かないという後遺症にかかってしまったのです。だーから悪を取り締まるために手段を選ばなくても心が痛まなくなっちゃったのですね。すげぇ、なんて都合のいい設定なんだ。しかしこんな設定をぶっこむからこそ、同じシリーズなのにまったく主人公が変わってしまうという荒業が実現したわけです。トンプソンさんすげぇ、あなたも手段選ばないじゃないですか。

ですからもうヴァーラ警部真っ黒ですよ。殺してしまったマフィアを酸で溶かすよう命じるヴァーラ警部。押収したお金で高級品を買うヴァーラ警部。いえ、ヴァーラ警部自体はある一線は越えていないという感じはあるんです。あくまで悪を取り締まることが目的であり、自分が楽しもうとするわけではないので。ただ、部下の2人(前作から引き続き登場)が、ヴァーラ警部にこの上なく心酔しているのがまたコワイ。もうこの3人の非合法部隊が危うくってしょうがないのです。こわいです。
そんな彼らが今回扱うのは、フィンランド内に流通する麻薬、および大富豪の娘・息子の誘拐殺人事件の捜査です。もう分かると思うんですけど捜査はかなり強引。そしてラストも非常に強引かつ悲惨。ヴァーラ警部の運命やいかに。感情ゼロ状態になったせいで前作までイチャラブだった奥さんケイトに愛情を感じなくなり、ついにケイトが事件に巻き込まれてしまったヴァーラ夫妻の運命やいかに。

……という感じで。作品としてのまとまり、完成度の高さで言えば前作の方がいいし、おすすめしやすいのですが、それでも『白の迷路』の持つ熱量には何かすごいものがありました。いやー、このあとどうなるんでしょうね。12月に刊行される(らしい)4作目が非常に待ち遠しいです。
ちなみにこのシリーズ、前作のネタバレをがんがんやっていくので、順番に読んだ方がよいです……ってまだ自分も1作目『極夜 カーモス』を読んでいないんですけどね、はっはっは(ダメじゃん)。『凍氷』からいきなり読む分には、まぁネタバレ食らいましたけど大丈夫ではありました。いきなり『白の迷路』はやめた方がいいでしょうねー。

書 名:白の迷路(2012)
著 者:ジェイムズ・トンプソン
訳 者:高里ひろ
出版社:集英社
     集英社文庫 ト-10-3
出版年:2014.12.25 1刷

評価★★★★☆
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