衣裳戸棚の女
『衣裳戸棚の女』ピーター・アントニイ(創元推理文庫)

ドアも窓も鍵のおりた一室で射殺体が発見された。そんなの不可能? でも室内の衣裳戸には犯人かもしれない女が閉じこめられていたんだ。町を揺るがす怪事件に挑むは長身豚躯の名探偵ヴェリティ! 英国劇壇の雄シェーファー兄弟が弱冠二十五歳で物した密室とユーモアの奇想天外なカクテル。戦後最高の密室ミステリと激賞される名編。(本書あらすじより)

作者シェーファー兄弟は、片方が『アマデウス』の、片方が『スルース』の脚本を書くなどの活躍をした人たちですが、彼らの合作名がピーター・アントニイなのです。数年前に翻訳された『ペヴァリー・クラブ』は本格ミステリ・ベスト10で話題になりましたね。読んでませんが。かなりひねくれたミステリを書くコンビのようです。アントニイ・バークリー寄りなのかな、名前もアントニイだし。
というわけで読んでみたのですが……う、うーん、なんでしょうこの何とも言えない微妙な感じは。すっごく講談社ノベルス感があるというか、新本格ミステリの一発ネタみたいというかで、やってることはかなり技巧的にすごいんですが、文章も内容もどこかあとひとつという。こういうの好きな人はすごく好きだと思うんですが、自分にはあんまり合わなかったかなぁ。

名探偵ヴェリティが捜査に乗り出したのは密室での射殺事件。面白いことにその部屋にはドアからやら窓からやら頻繁に出入りがあり、さらに密室内の衣裳戸棚の中には女が閉じ込められていました。このややこしい部屋の出入り状況にいかにして筋道をつけ、犯人を明らかにするかが肝となります。
登場人物の挿絵があるなど、全体的に気軽でユーモラスな作品です。文字数も少ないしかなり短め。というわけでさくっと読めちゃう頭の体操パズルみたいな謎解きなのかな、と思わせるのですが……ななな、なんてひねくれた真相なんでしょう(しかしすごく見覚えがあるぞ、思い出せないけど)。しかしこの真相を組み立てるために相当プロットが練られているのは確かです。登場人物の出入りの問題と重ね合わせた点については素直に感心します。
新本格を思わせる強烈なオチと、ひたすらユーモラスに徹した文体で、おそらく好みは分かれるでしょう。ツイッターでも、すごく好きな人と、いまいち、という人に綺麗に分かれていました。良くも悪くも登場人物の描き込みがほとんどない、まるで舞台劇のように登場人物が出たり引っ込んだりし、を繰り広げるだけのミステリです。こればっかりは読んでみないと何とも言えないかな……。まぁ気軽に読んでみて確かめてみてください。アントニイ・バークリー好きなんかにいいかもしれません。

というわけで、うーん、とりあえず『ペヴァリー・クラブ』を読むまではピーター・アントニイに関する評価は保留ということで。どうもこの手のミステリは好きじゃないのです、自分。

書 名:衣裳戸棚の女(1951)
著 者:ピーター・アントニイ
訳 者:永井淳
出版社:東京創元社
     創元推理文庫 Mア-9-1
出版年:1996.12.27 初版

評価★★★☆☆
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