殺意の迷宮
『殺意の迷宮』パトリシア・ハイスミス(創元推理文庫)

美しい妻をともない、警察の追求を逃れてアメリカから冬のギリシアにやってきた詐欺師チェスターと、暗い影を背負った青年ライダル。彼らがアテネの街角で出会ったところから、悲劇の幕は切って落とされた。尋問に訪れた地元の刑事を殺し、クレタ島に脱出した三人を待ち受けていたのは? 一九六四年度英国推理作家協会賞受賞の傑作。(本書あらすじより)

初ハイスミス。ずっと積んでたんですけど、この度この作品が『ギリシャに消えた嘘』(ホセイン・アミニ監督)というタイトルで映画化されたとかで、この機会に読んじまおうと思ったわけです。
ハイスミスはめちゃくちゃえぐい話で知られるお方ですので、おそらく『殺意の迷宮』はハイスミスの中でも超絶大人しい方かと思います。前半は三角関係、後半は2人の男が相手を陥れようと火花を散らすうちに終わっちゃいました。結構無難に安定して話が進み、おまけに妙にきれいな終わり方をします。まぁ、良サスペンスだなぁってくらいですね、感想としては。

40くらいの詐欺師チェスターは、若く美しい妻と共にギリシアにやってきました。アメリカで警察に追われていたのです。一方イケメン青年ライダルは、チェスターがギリシアの警察官をホテルで殺してしまったところにたまたま居合わせてしまいます。三人はクレタ島への逃避行を始めるのですが……。

チェスターは普段はどうどうとした紳士でプロ詐欺師だけど、いざ窮地に追い込まれるとマジで使えないヘボ。このヘボっぷりがだんだんとあらわになっていき(何しろギリシア語を話せないから強気にも出られない)、ライダルとの関係もぎくしゃくしたものになっていきます。
一方ライダルは有閑青年で、ギリシア語ぺらっぺら。外見も中身もイケメンです。特に強制されたわけでもないのに、彼はいろいろあってチェスターの逃亡を自主的に手伝うようになります。チェスターの内面とライダルの内面が交互に描かれるのですが、チェスターと比べりゃライダルは圧倒的に好青年ですよね、賢いし。チェスターは、こいつ何で手伝うんだ、まさかゆするつもりでは……とめっちゃ疑ってくるんですが。
ここに絡むのがチェスターの妻コレット。こいつがもう悪女ですよ悪女。チェスターに尽くしつつ愛想を尽かしながらライダルを積極的に誘惑して色々と三角関係をこじらせようとするのです。そんでまぁ、なんやかんやあって、大変なことになるわけですね、主にコレットのせいで。

さて後半から、チェスターとライダルの真っ向勝負が始まります。ネタバレになるので言えませんが、ハイスミスが描きたいのはこの2人のこれとは言えない複雑な感情なのだと思います。なぜライダルが殺人者に協力したのかは、ぶっちゃけ本人もよく分かっていません。チェスターも、ライダルに対して異様な執着を見せ始めます。見ようによっては完全にBLです。ハイスミス自身もレズビアンだったらしいし。
そうしてチェスターとライダルの関係は、お互いにけん制し合いながらつかず離れずの形容しがたいものになっていきます。そして……ななな、何だこの妙に清々しい結末は。いやほんと、なんでこんな終わり方にしたのって気もしますが、結局この書き切れない感じがこの作品の個性になっているんでしょうね。

ま、とりあえずハイスミスがらみならまず映画の『太陽がいっぱい』を見ないと……。

書 名:殺意の迷宮(1964)
著 者:パトリシア・ハイスミス
訳 者:榊優子
出版社:東京創元社
     創元推理文庫 Mハ-7-3
出版年:1988.07.22 初版
     2000.09.01 5版

評価★★★☆☆
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