奮闘
『奮闘』ジョイス・ポーター(ハヤカワ・ミステリ文庫)

ウィブリー家が村に埋蔵されている陶土に目をつけ、寝室用便器の製造・販売に力を注いだおかげで、平凡な村ポットウィンクルは小さな町にまで発展した。だから、湿っぽい初秋のある日、ウィブリー氏の一人娘で21歳の主婦、シンシアが撲殺された事件は、町の警察を一種の恐慌状態に陥れた。こんな厄介な事件はスコットランド・ヤードに任せるにかぎる――かくて不機嫌そうな二人の男ドーヴァーとマグレガーはポットウィンクルの小さな駅に降り立つことになった。”妻殺しの下手人は亭主に決っておる”難事件に迷推理。ドーヴァー警部大活躍!(本書あらすじより)

はい、ドーヴァー警部シリーズ5作目です。もう5作も読んでるんですか自分。こないだ全部そろったのでいつでも全作読める体勢に入っています。
もともとホワイダニットが扱われることが多いシリーズですが、今作は特に動機探しがメインとなります。展開上ややだらけてはいますが、適度のユーモアで読ませてくれるし、最後にはいつもの英国ブラックユーモアらしいオチを見せつけてくれます。やっぱりドーヴァーはいいねぇ。

誰からも恨まれていなかった若い主婦が殺され、捜査を始めたドーヴァーは夫による妻殺しに違いないと最初から決めつけ、速攻で逮捕してしまいます。ところが夫婦はすこぶる仲が良く、妊娠が分かったばかりでした。なぜ彼女は殺されたのでしょうか?(そして一応誰に?)

『ドーヴァー1』は100キロ女性殺しだったし、『ドーヴァー2』は眠れる不美女殺しだったので、ポーター女史は5作目にしてようやく普通に女の人を殺した感があります。どうでもいいです。
速攻で逮捕しちゃうんですよ、初めてのパターン。今回は証拠固めというか動機探しが正面から扱われており、犯人探しは(夫で合っているかはともかく)うっちゃっておかれるので、いつも通りユーモアが冴えているとはいえ全体的に地味。ちなみに今回は大物にこびへつらうドーヴァーが見られるよ! 珍しいよ!(またもどうでもいい)
犯人は夫と決めつけるドーヴァーに対し、マグレガー部長刑事はいくらなんでも捜査が雑すぎると夫を弁護しようとするんですが、なんとここでドーヴァーが明晰な推理でもって一気に夫犯人説の証拠を固め、マグレガーを一刀両断しちゃうシーンがめちゃくちゃ面白かったですね。こ、こいつちゃんと推理とか出来たんだ……(まぁ誰でも気付く証拠だと後で地元警官が言ってますが)。これでマグレガーは有能”そう”でかっこつけてるだけで実は無能なんじゃね説がさらに濃厚になりました。

夫を犯人と指し示す証拠が意外と多く、読者としてもドーヴァーが合っているのか間違っているのかよく分からないまま話が進行します。意外な動機物としては、『ドーヴァー1』や『切断』みたいなキワモノと違い、普通にブラックというか、まぁ後味悪いやつですが、これを最後にドーヴァーさんがぶん投げちゃうところはもうさすがとしか。

安定の面白さではあるんですけど、ドーヴァー初読者には『ドーヴァー2』か『ドーヴァー3(誤算)』の方がおすすめです。強烈なのが読みたいなら普通に『ドーヴァー4/切断』かなと。いやしかし、やっぱりこのシリーズは結構好きかもしれないなぁ。

書 名:奮闘(1968)
著 者:ジョイス・ポーター
訳 者:乾信一郎
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ文庫 32-2
出版年:1977.01.31 1刷

評価★★★★☆
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