ビロードの悪魔
『ビロードの悪魔』ジョン・ディクスン・カー(ハヤカワ・ミステリ文庫)

歴史学教授フェントンは昔日のある事件を調べたい一心で悪魔と契約を交し時を遡った。300年前の同姓同名の貴族に乗り移り、その妻リディアが毒殺された事件を自ら解明しようというのだ。きっかけは、当時の事件の顛末を記した執事の手記だった。なぜか事件解明の部分だけが欠落していたのだ。手記の紛失は一体何を意味するのか? そして過去の謎に挑むフェントンは、リディア毒殺を防ぎ歴史を作り変えられるのか? 騎士物語を彷彿させる華麗な恋愛模様と壮絶な剣戟場面を織り込み、中世英国を舞台にものした幻想的な歴史ミステリ巨編!(本書あらすじより)

カーの歴史物にして、最近ではカーの代表作としてカウントされることも多い一作。歴史物読むの初めてかも。
すごく面白いんですよ、トリックもある種カーらしくてすごく良く出来てるし、活劇も楽しいし、歴史ネタも書き込みがほどほどでナイス。分厚さを気にせずがっと読める面白さです。でもなぁ……オチがな……あとこの剣劇シーンはそんなにだろうか……などなど、微妙に不満が残る感じでした。カーの代表作は読んでみるまで自分に合うか分からないので困る……。

話はあらすじの通り。教授の精神のまま、悪魔との契約で過去のニック卿に乗り移るという設定には非常に感心しました。中盤である人物と悪魔の関係が出て来たとこなんかむちゃくちゃ驚きましたし、歴史に刻まれた妻が殺される期日までに犯人を見つけ出すというデッドライン物としての面白さ(これが地味に好き)、設定を上手く用いて仕掛けたトリックの見事さはすごいです。
冒険活劇としてのチャンバラシーンもいいんですけどね、現代の知識を利用し(ずるい)屋敷内の揉め事をばっさばっさと解決しながら執事召使たちとの絆を深めていくあたりは実にアツいですよ。執事のガイルズが薄々察してましたとか言うあたりなんか超アツいじゃないですか。少年漫画みたい。

ただバトル物としては、ラスボスお前かよというがっかりさと、17世紀とは比べて進化したフェンシング技術を手にした主人公は無敵みたいな設定のせいで、いまいち盛り上がらなかった気がします。だって勝つんですよ、これでは普通に(ぶっちゃけこれそんなにチャンバラ物として面白いのかなっていう……こ、これ言ったら怒られそうだ)。あと大学教授のくせに躊躇なく剣を振るいすぎな気も。殺すことにためらいもないのかおい。
イチャミス的には愛人に気を引かれつつも奥さんとイチャイチャし続けるという話だったら良かったんですが、主人公がだらしなかったし、最後のあたりがかなりダメだったのでアウトです(イチャミス的とは……)。あとこの打ち切り漫画みたいなラスト、これは嫌いなパターンなんだよなー。先行き不安でしかないぞ。

総じて大いに楽しめたし、ミステリと歴史小説の融合としては完璧な部類だとは思うけど、カーの面白かったランキングを作るとベスト3には入らないかなぁってくらいです。他の歴史物からも判断したいところ。
カーのよく聞く代表作であと読んでいないのは、『帽子収集狂事件』『囁く影』『緑のカプセルの謎』『白い僧院の殺人』くらいでしょうか。まだまだ終わりが見えないですね……。

書 名:ビロードの悪魔(1951)
著 者:ジョン・ディクスン・カー
訳 者:吉田誠一
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ文庫 5-7
出版年;1981.01.31 1刷
     2003.04.15 4刷

評価★★★★☆
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://yossiworld.blog72.fc2.com/tb.php/1122-b435102d