土曜日ラビは空腹だった
『土曜日ラビは空腹だった』ハリイ・ケメルマン(ハヤカワ・ミステリ文庫)

ユダヤ人にとって最も神聖な贖罪日の前夜、車の中で発見された死体は、礼拝に行かなかった科学者アイザック・ハーシュのものだった。警察は泥酔のうえの一酸化炭素中毒と判断。ラビはハーシュの妻から教会墓地への埋葬を頼まれた。が、非教会員の埋葬を許可したラビに教会幹部の非難が集中し、自殺者の埋葬は墓地を汚すとしてラビ失墜が謀られた。かくて、自らの立場を守るため、ラビはハーシュの死の解明に乗り出してゆく! 《素晴しい、正確な意味での謎解きミステリ》と絶賛された、純度高い推理と深い人間味を湛えるケメルマンの世界。(本書あらすじより)

『九マイルは遠すぎる』で有名なケメルマンの、ユダヤ教のラビ・デイヴィッド・スモールを主人公にしたシリーズの2作目。
『金曜日ラビは寝坊した』も真っ当な本格ミステリとして面白い作品でしたが、今作もケメルマンの論理はキレッキレです。さらにユダヤ人社会とラビの関係もしっかり盛り込み、若きラビの成長譚としても楽しめるのです。読んでて純粋に楽しくていいですね、このシリーズは。今作もおすすめ。

死んだユダヤ人が自殺だったかどうかをめぐりラビの辞職も絡むレベルで大問題が発生。譲らぬラビと譲ってほしいラビの妻(出産日間近)。何だかんだありラビも捜査に乗り出し、お得意の論理を振りかざし事件を解決に導き、ついでに共同体に起きた問題もばっさり解決。というお話となっております。

事故死or自殺とみなされていた事件が殺人事件だったことを導く論理にまずはしびれますよね。これぞ『九マイル』の作者。また犯人当てよりも、その動機をなかなか論理的に導き出せているのが非常に良いです。読者が気付きそうなところをうまい具合に拾っていくこの感じ。ガチガチ論理ではないけど、別に頭使うミステリが好きなわけではない自分にはこれくらいがちょうど良いのかも。
それ以上に感心したのが、事件をユダヤ人社会と結び付けて、ちょっとしたごたごたや人間関係と絡めながら最後に上手く解決に持っていくプロットの練り込み具合です。さらっとやっているようで、最後のオチに至るまでの流れが本当にきれいだと思います。ケメルマンさん、長編作るのめちゃくちゃ得意じゃないですか。

というわけで、『九マイルは遠すぎる』が面白かった人は、『金曜日』もいいけど『土曜日』もぜひ読んでみましょう。ラビシリーズ、あと水曜日と木曜日を探しているんですけど、なかなか見ないんですよね、これが。困っちゃうな。

書 名:土曜日ラビは空腹だった(1966)
著 者:ハリイ・ケメルマン
訳 者:青木久恵
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ文庫 19-3
出版年:1976.10.31 1刷

評価★★★★☆
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