そして医師も死す
『そして医師も死す』D・M・ディヴァイン(創元推理文庫)

診療所の共同経営者を襲った不慮の死は、じつは計画殺人ではないか──市長ハケットからそう言われた医師ターナーは、二ヵ月前に起きた事故の状況を回想する。その夜、故人の妻エリザベスから、何者かに命を狙われていると打ち明けられたこともあり、ターナーは個人的に事件を洗い直そうと試みるが……。英国本格黄金期の妙味を現代に甦らせた技巧派、ディヴァイン初期の意欲作。(本書あらすじより)

いえーいディヴァインの新作だー。
2作目、ということですので、『兄の殺人者』と『ロイストン事件』の中間ということになります。まだ型が出来る前の作品、とも言えるんですよね。ということで、ディヴァイン初心者にはあんまりおすすめしません。むしろ他にいくつか読んでいる人の方が別の驚きがあるかも。
事故とみなされた過去の事件を殺人と疑った主人公の医師があちこちに話を聞いて回る、という話しで、動きにはかなり欠けますが、そのかわり登場人物の関係やウザさで読ませています。ネタ自体はありふれてるけど堅実。ただディヴァインファンとしては少々物足りないかもしれません。

主人公のアランは亡くなった共同経営者であるハクストン医師の妻、エリザベスから様々な打ち明け話を聞くことで事件に巻き込まれることになります。エリザベスの話が真実かというところが肝になっていくのですが、このエリザベスがまー自己中で強迫観念でもあるのか、信用しづらいし感情移入しにくいキャラクター。
また一人称の主人公アランも、後先考えずしゃべっちゃうわイライラするわ婚約者と喧嘩するわと、どんどん孤立していくのですが、こいつもどうも気に入りません。どんどんこじれていく人間関係が推進力となって250ページくらいまで物語は進行します。うーんなんて不穏なんだ。このへんでぐいぐい読ませるあたり、やっぱりディヴァインは上手いです。

そして明かされる真相はベーシックなネタではあるけど、いつも通りよく出来てはいますし、一定の満足感は与えてくれます。ただ、本格ミステリとしては、これ、という決め手や気付きに欠けるかな。面白かったけど、カタルシスが足りないかもしれません。良くも悪くも地味すぎるような。

というわけで、まぁ中くらいの出来栄えですかねー。ほどほどに面白かったです。現時点でのディヴァインランキングを作るなら、

『悪魔はすぐそこに』>『五番目のコード』>『ロイストン事件』>『災厄の紳士』>『跡形なく沈む』>『そして医師も死す』>>『兄の殺人者』>『ウォリス家の殺人』>>『三本の緑の小壜』

ってな感じです。『兄の殺人者』は個人差が大きいですね。『五番目』は今読んだらもちょっと落とすかも。

書 名:そして医師も死す(1962)
著 者:D・M・ディヴァイン
訳 者:山田蘭
出版社:東京創元社
     創元推理文庫 Mテ-7-8
出版年:2015.01.23 初版

評価★★★★☆
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