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『大いなる遺産』チャールズ・ディケン(新潮文庫)

貧しい鍛冶屋のジョーに養われて育った少年ピップは、クリスマス・イヴの晩、寂しい墓地で脱獄囚の男と出会う。脅されて足枷を切るヤスリと食物を家から盗んで与えるピップ。その恐ろしい記憶は彼の脳裏からいつまでも消えなかった。ある日彼は、謎の人物から莫大な遺産を相続することになりロンドンへ赴く。優しかったジョーの記憶も、いつか過去のものとなっていくが……。(本書あらすじより)

今年から、年越しは毎年ディケンズで過ごすと決めたのです。クリスマスが似合うしね、ディケンズは。10年後には全長編を読み終わっているはずです。だからちくま文庫版のディケンズを誰かください。
ちなみに既読は『クリスマス・キャロル』と『荒涼館』のみ。全然代表作とか読んでないじゃないですか。

というわけで、初年は『大いなる遺産』です。後期の代表作ですね。
鍛冶屋で育った貧しい少年ピップは、ある日莫大な遺産を相続しロンドンに行くことになる……というあらすじから大方想像できる通りの展開で、謎の遺産者も想像通りで予定調和なんですが、何でしょうねこの傑作は。素晴らしい。

幼いころは、脱走した囚人に会ったり、偏屈な老婦人の話し相手のバイトをしたり、そこで超絶かわいい孫娘に惚れるもひたすらこの田舎者がと罵られたりと、ド田舎鍛冶屋で育った割に波乱万丈な前半生を送るピップ。ある日匿名の大金持ちから、遺産相続人に指定されたことを知らされます。
なるほど、匿名だけどあの老婦人に違いない、と考えるピップ。あの孫娘との仲が公認になったのかと調子づくピップ(まだ全く仲良くないのに)。 よし、紳士になれるよう頑張って、そんでもって見返してやるぜ!とピップは親切に育ててくれた鍛冶屋のジョーやら地元の女の子をあっさり見捨ててロンドンへ。
そこで知り合った友人と意気投合、金遣いの荒い日々を送り、成人に達するピップ。そんなある日匿名の大金持ちが姿を現すが……ここらへんからは突然サスペンスになるのですよ。地元の友情を見捨てて貧乏人見下してプーな人生を送ってきた罰ですね。はっは。

……という具合に、このピップ、悪い子じゃないんだけどいちいち悪い方のフラグを立てるというか、端的に言って全くカッコイイ主人公キャラではないんですが、そこがよいのです(嫌いだけど)。その他わきを固める全登場人物がみんなアクの強い個性的なキャラ盛りだくさん。

ミステリ的には、まずこの大金持ちの正体に関する(分かるけど)ミスディレクション、ピップのうざい姉が殺されかけるという殺人未遂事件の真相という真っ当な謎(いずれも綺麗に謎解きが!)に加え、登場人物の意外なつながりによるどんでん返し(2回)と十分すぎるほどあります。ディケンズは大量の伏線に基づく多すぎる登場人物の隠された人間関係を書かせると天下一品ですね……並のミステリ作家じゃとうてい勝てねぇな……。

こうした意外性と驚きを散りばめながら孤児出世という王道ストーリーで読者を殴ってくるので、面白くないわけがないのです。やっぱり傑作。うーん、年イチと言わずがんがん読んでいこうかしら。

書 名:大いなる遺産(1860~1861)
著 者:チャールズ・ディケンズ
訳 者:山西英一
出版社:新潮社
     新潮文庫 テ-3-1、テ-3-2
出版年:上巻 1951.10.30 初版
         2013.10.25 82刷改版
     下巻 1951.10.31 初版
         2013.10.25 71刷改版

評価★★★★★
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