ネロ・ウルフの事件簿 黒い蘭
『ネロ・ウルフの事件簿 黒い蘭』レックス・スタウト(論創海外ミステリ)

フラワーショーでの殺人事件を解決し、珍種の蘭を手に入れろ! 蘭を愛する美食家の名探偵ネロ・ウルフがもつれた謎を解き明かす。蘭、美食、美女にまつわる3つの難事件を収録した中編集。(本書あらすじより)

アメリカではトップ・クラスの人気を誇るも、日本ではいまひとつ、とよく言われる、レックス・スタウトの生み出した巨漢美食探偵ネロ・ウルフ。そのネロ・ウルフ物の中編集という、なんとも素敵なものが出たのですよ。論創やるな。いいぞいいぞ。
ネロ・ウルフとアーチー・グッドウィンという探偵の魅力と醍醐味が見事に詰まった中編集。これは企画の大勝利。ホームズ的な謎解きやアーチ―のひたすら楽しく笑える語り口などを、間延びせず中編という程よい分量で読ませてくれます。
3作品、どれも趣向が異なっていて面白いけど、ベストは「献花無用」かな。いやほんと、ネロ・ウルフってこんなに面白かったんだ、ということを再認識させてくれたというだけでこの本には大感謝したいところです。レックス・スタウトはやはり偉大なアメリカ人ミステリ作家なんですねぇ。

Black Orchids「黒い蘭」(1942)
フラワーショーに出品された超貴重な黒い蘭をウルフが手に入れた経緯とは。
ネロ・ウルフ物の面白さが見事に詰まった好編。アーチーのユーモアに満ち満ちた語り口に乗せて、トリックを用いた殺人事件(トリッキーではない)が本格風に解かれます(本格ではない)。
アーチーが女の子に惚れる→殺人事件が起きる→関係者がぞろぞろ集まる→ウルフが自宅で尋問する→ウルフが自宅で関係者を集めて謎解きをする、というラインがもう完璧。自分たちの利害を優先してアーチ―が駆け引きをし、雇い主であるウルフのために行動し、情報を集め、ウルフが解決、というのもいつも通り。中編という分量のせいで間延びすることなくこれが語られていきます。ちなみにウルフは今回フラワーショーのために家を出ます、珍しいです。
肝心の謎解きは相変わらず後出しというか、出たな調査員が調べて来た事実とやらで解決って感じですが、なぜかウルフの謎解きって雰囲気は本格っぽく感じられます。それよりラストが、この語り口のくせになかなかパンチが効いていますよね。やはりネロ・ウルフはハードボイルドでもあるんだなぁと思った次第。

Omit Flowers「献花無用」(1948)
友人のシェフの依頼で、ウルフはレストランチェーン女社長の夫を殺害した疑いで逮捕された元シェフを救おうとします。被害者家族は一同疑わしい状況で事件現場にいたことは分かっていますが、一致団結して口をつぐんでいる、という状況の中ウルフは謎を解くことに。
うぅむ、これは非常に面白いぞ。容疑者がほとんど証言をせず、証拠らしい証拠もほとんどない中で、ウルフは容疑者の態度や様子、心理状態のみで全てを推理するのですが、これは何ともネロ・ウルフらしい謎解きです。アーチーの機転も今回はきれっきれで、2人の共同捜査っぷりがよく伝わってきます。いい中編。
やっぱネロ・ウルフって、コンゲーム的というか、駆け引きを楽しむみたいなところは大きいですね。

Countefeit for Murder「ニセモノは殺人のはじまり」(1961)
ウルフの元に元美人だという貧乏くさい家主が現れ、家の中で見つけた大金を渡します。さらに、その家主の家に住んでいるという美人女優(見習い)やら、シークレットサービスやらが次々とウルフの家に現れます。
どちらかというとスラップスティックな味わいが楽しい作品。探偵の家に依頼人がやってきて怪しげな話を伝える、という導入は、まさにホームズっぽいところ(ネロ・ウルフはホームズの息子、なんて話があるんですよね)。このクセとアクの強い依頼人ハッティーがまぁアーチーやウルフや警部やその他大勢を振り回すこと振り回すこと。なにこのおばちゃん。でもこのラスト含めてハッティーかっけえのです。
謎解きは3編の中では一番ひねりがないというかストレートで、その分ハッティーを中心としたキャラクター劇で見せているなという感じ。このおばちゃんの引き出しの多さには恐れ入るね……。

書 名:ネロ・ウルフの事件簿 黒い蘭(1942,1948,1961)
著 者:レックス・スタウト
出版社:論創社
     論創海外ミステリ 130
出版年:2014.09.25 初版

評価★★★★☆
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