死んだ人形たちの季節
『死んだ人形たちの季節』トニ・ヒル(集英社文庫)

取調べ中、呪術医オマルに暴力を振るい、休暇を取らされていたカタルーニャ州警察のエクトル・サルガド。復帰後、実業家の息子の転落死の調査を命じられ、バルセロナの街を奔走する。一方、オマルがおぞましい痕跡を残して失踪。呪術医の魔の手はどこに向かうのか? セックス、金、ドラッグ、いじめ、人権問題……さまざまなバルセロナの姿が複雑に絡み合っては浮かび上がる、スペインの大ヒット警察小説の登場!(本書あらすじより)

スペインミステリがお得意の集英社文庫から、また新たなるシリーズが登場しました。トニ・ヒルという名前からそこはかとなく漂うトニイ・ヒラーマン臭。関係ないけど。
スペイン発警察小説です。そしてこれが滅法面白いんですよ。内容は堅実な聞き込みだけしてりゃ解けるみたいな普通の警察小説で、背景となる過去の事件や、ドラッグとか何だのみたいな社会背景などなど、よくある感じなのは確かですが、なんかこう、いいのです(ボキャ貧)。やっぱり英米系とは少しタイプが違いますよね。衝撃的な結末のせいで次作も非常に楽しみになりました。

おとなしいことで知られていた主人公のサルガド警部は、児童買春容疑の呪術医(非科学的に危ない)を暴行したことで謹慎処分を受け、少年が窓から落下した”事故死”の非公式な調査をしぶしぶ引き受けます。新任の優秀な女性刑事とともに事件を調べていく中で、なんと呪術医が殺される事が発生。サルガド警部は少年の事故死を調べながら、一方で呪術医殺人事件にも関わっていくことになりますが……。

富豪の息子の事故死、という事件からは、麻薬とかそういう現代の若者を取り巻く闇みたいなありきたりの話が出て来るし、死んだ少年の過去を追っていくことで昔プールで死んだ女の子とその周りの”闇”みたいなやっぱり現代ミステリらしい要素が出て来るしで、ぱっと見ありきたりなのです。
ただ、この捜査が読んでいて十分に面白いのが好ポイント。相棒の若い女性刑事が妊娠しちゃったけど男にどう切り出そうか迷っている、のようなサイドストーリーと並行して進めたり、事故死した少年の友人のひねくれた目線を描いたりと、通り一辺倒にならないよう大いに頑張っています。おまけにトニ・ヒルさん、読みやすくて読ませる文章を書くの上手いです。こいつぁそうとうエンタメの書き方を研究している方だと見ましたよ。

加えて呪術医オマルが殺されるという事件を、サルガド警部の旧知の友人である女性警部が捜査していきます(こうやって複数の刑事が登場するあたり、警察小説らしいですね)。暴行を受けたせいでサルガド警部を恨んでいたオマルの色々うさんくさいところを追っていくうちに、サルガド警部に容疑がかかっていくという、これまたよくある展開に。ところがその殺された人物が呪術医という、超非科学的なオカルト職業なので、ある種異様な感じがあり、これが読みごたえにつながっています。何しろ現場に動物の頭とか送られてきますからね、何でもアリです。

この2つの事件を絡めてほどほどの分量に詰め込み、さらにラストには驚愕というか衝撃の結末を追加し(今年一番びっくりしたと言っていい)、3部作へと進んでいくのですから、本当にサービス精神満載。絶対2作目読まないといけないじゃないですか、なんて卑怯な。読みやすさとそこそこの読み応えがおすすめ。というわけで2作目楽しみなので、集英社さん期待していますー。

書 名:死んだ人形たちの季節(2011)
著 者:トニ・ヒル
出版社:集英社
     集英社文庫 集英社文庫 ヒ-7-1
出版年:2014.10.25 1刷

評価★★★★☆
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