領主館の花嫁たち
『領主館の花嫁たち』クリスチアナ・ブランド(東京創元社)

当主の妻を若くして失ったその領主館は、悲しみに沈んでいた。そして、愛らしい双子の姉妹の家庭教師として館に訪れたテティもまた、癒しがたい傷を負う身であった。瓜二つの姉妹に慕われ、生きる希望を取り戻していくテティ。だが、館に頻発する怪異が、テティと双子の姉妹の運命を容赦なく翻弄していく……。ブランドが持てる技巧のすべてをつぎ込んで紡ぎあげた、美麗にして凄絶なゴシック小説。巨匠の最後の長編、遂に登場!(本書あらすじより)

1982年にクリスチアナ・ブランドが発表したゴシック小説。ブランドというと新本格というか、ポスト黄金時代英国本格作家の代表格ですが、本書はミステリではありません。というかこの人1988年まで生きてたんですね。ちなみに最近ブランドは『ジェゼベルの死』が復刊されたり何だりで再び話題になっているような。東京創元社から来年『猫とねずみ』の続編が出るらしいですし(『猫とねずみ』読んでも持ってもないけど構わないらしい)。ふーむ、まぁ昔から人気はありますし、リバイバルって感じですね。

一族が不幸になるという領主館に250年続く呪いの顛末を、英国正統派幽霊をひっさげて19世紀を舞台に描かれるゴシック・ロマン。いったん読みだすと王道的ストーリーと濃厚な心理描写にやられ非常に面白いです……なんだけどね。
責任転嫁が得意な自己中女性(複数)と悲劇を背負う女性(痛々しいけどあんまり同情出来ない)という感情移入を拒むかのようなメンツによって物語が展開されるので、物語にはのめり込むのに何となく没入しがたい、という感じがあるのです。でもこれは否定してるんじゃないですよ、人物造形は見事ですから、マジで。
呪いをかける幽霊が、今度は双子に呪いをかけるようになるんですが、この双子の片方がまー酷い性格でしてね。要するに結局どちらが呪いを受けるか、みたいな話になるので、どろっどろですよどろっどろ。この幽霊との対決は変にロジカルなので(特殊設定ミステリ的に)、ある意味本格好きなブランドらしい決着の付け方だとも言えます。

ちなみにこの小説は、冒頭、若い女性とお目付け役のテティなる女性が登場し、若い女性が婚約中の若い男性に、今は無き館と発狂した伯母様の話を語る、という体裁。物語の到達点が示され、そこに向かって話が進む、という構成だと考えられますが、ある意味この若い男女と館の消滅というキーワードのせいで、やや未来に希望が出来ているというか、そこがちょっとそぐわない気もします(何しろこんだけ救いのない悲劇を読まされるわけだし)。ゴリゴリの悲劇はゴリゴリの悲劇で締めりゃいいと思うんだけど、まぁ75歳のブランドおばちゃんは若い人に夢を与えたかったんでしょう、たぶん。ところで相変わらずブランドおばちゃんは家をキャンプファイヤーするのが好きね。

とにかく正統派ゴシック・ロマンですので、なにがしかのミステリ要素を求めて読み始める、というのはよくないかと思います。とはいえゴシック好きの方はそれこそゴシックプロパーの作家を読めばいいんじゃないの、という気もしますが。いずれにせよ、お館と幽霊の物語を心から楽しみましょう。それにしてもえぐい意味でいやらしい話を書かせるとブランドは天下一品ですね……。

書 名:領主館の花嫁たち(1982)
著 者:クリスチアナ・ブランド
出版社:東京創元社
出版年:2014.01.30 初版

評価★★★☆☆
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