ゴースト・ヒーロー
『ゴースト・ヒーロー』S・J・ローザン(創元推理文庫)

天安門事件の最中に死んだ中国人画家の“新作”がある、という噂の真偽を確かめてほしい──私立探偵リディアは畑違いの依頼に疑問を抱き、相棒ビルと、ビルの知人で美術品専門の探偵ジャックに会うが、彼もまた別の人物から同様の依頼を受けていた! 現代アート業界が秘めた謎と陰謀に、名コンビは成り行きからトリオを組んで挑む。傑作私立探偵小説シリーズ、ディリス賞受賞作。(本書あらすじより)

何作かだけ読んでるローザンのリディア&ビルシリーズですが、個人的には結構好きです。評価が高いのも納得。どれも一定のクオリティで読ませる良ハードボイルドシリーズだと思います。
で、なんと今作はまさかのコン・ゲーム物。マンネリ化を防ぐべくいろいろやろうという努力が涙ぐましいのですが、実はローザンさんは以前「ペテン師ディランシー」というやはりコン・ゲーム物の短編でMWAの短編賞を取っているんですよね。というわけでちゃんと力を見せたことのある方向性でもあるのです。
伝説の中国人画家の未発表作品をめぐって探偵と探偵と美術品ディーラーが火花を散らし合います。さらにはリディアとビルの間にイケメン中国人探偵ジャックが入ることで、二人の関係性にもごにょごにょあったりなかったり。相変わらずの面白さですが、期待の範囲内の面白さ、でもあるのかな。

今回は死者なし。天安門事件で死んだ画家の”新作”の噂といううさん臭い話を発端に、あらゆる立場の人々が自分の利益のために動く、というのがポイント。天安門事件という大ネタを絡めながら、事態を解決しようと奔走するリディアがよく描けているし、そこそこ勢いを維持して読ませる作品に仕上がっています。
終盤に入り全ての事態を把握したリディアとビルと美術探偵ジャックは、とある作戦を決行することになります。ここがコン・ゲーム的。この騙し自体はお手本みたいに収まりが良くて、ほんと何の感想も出ないくらいそこそこの出来だと思ったけど、全体的には読んでいてとっても楽しかったので、いいんじゃないでしょうか。今作は終始軽快で、重苦しい感じにならないように書かれていますが、これも話の内容的にぴったりでした。

……という具合の感想でなんか終わっちゃうんですけどいいかな。おさまりよすぎて何にも言うことないです。初めてローザンを読む人はここからじゃない方がいいですね、もちろん(『どこよりも冷たいところ』からがいいらしいですよ、読んでないけど)。あくまで試みの一つということで。
ちなみにこれはディリス賞受賞作(初めて聞いた)。これでこのシリーズはエドガー賞とシェイマス賞とアンソニー賞とネロ・ウルフ賞とマカヴィティ賞とファルコン賞とディリス賞を獲ったことになるらしいですね。すごい。賞のデパートだ。

書 名:ゴースト・ヒーロー(2011)
著 者:S・J・ローザン
出版社:東京創元社
     創元推理文庫 Mロ-3-13
出版年:2014.07.25 初版

評価★★★★☆
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