五枚目のエース
『五枚目のエース』スチュアート・パーマー(ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)

エラリー・クイーンのライヴァルが贈るデッドライン&スラップスティックの傑作登場! あと九日間で死刑となる男は冤罪かもしれない――。ミス・ウィザーズは真犯人を捜すもののカードも出尽くしてしまう。それがどんでん返しの舞台になった。(本書あらすじより)

先日読んだスチュアート・パーマーとクレイグ・ライスのコラボ『被告人、ウィザーズ&マローン』がかなり面白かったので、今年出たパーマーを読んでみました。今までパーマーの長編作品は1999年に新樹社から出た『ペンギンは知っていた』以外邦訳はなかったのですが、むむむ、今年はいきなりどうしたんでしょうね。なお、版元は、今年復活した原書房のヴィンテージ・ミステリ・シリーズです。これもいきなりどうした。

正義を重んじるミス・ウィザーズが、死刑執行を控えた男の無罪を証明するべく奔走するデッドライン物。ユーモアをほどほどに抑えながらひたすら聞き込み。よくあるパターンですし、面白いけど普通かなと思いきや……ううん、この真相はすごいです。トリッキーさを評価したい一品です。

そもそもミス・ウィザーズ物はスラップスティックなユーモアが特徴で、今作も素人探偵が捜査するという点で、身分を隠して刑務所に侵入しようとしたり容疑者の前に姿を現したりとギャグっぽいシーンもあるにはあります。が、どうも『五枚目のエース』はややイレギュラーらしく、全体としてギャグ感はそこまで強くありません(先日読んだ『被告人、ウィザーズ&マローン』の方が圧倒的にスラップスティック)。
というのも死刑執行が迫っているからそんな余裕はないんです。当たり前です。ミス・ウィザーズは終始せっぱつまりながら捜査を続けていきますが、決め手となる手がかりがほぼ皆無ということもあり、なかなかデッドラインが厳しいのです。ある意味結構ストイックなストーリーともいえますね。それだけに、正義の追及者としてのミス・ウィザーズの姿が印象的でもあるんですが。

読んでいる印象としては、話を進める主軸は、かたくなに真相を追及するウィザーズと、疑いを抱きつつもそれに反論する旧友パイパー警部の掛け合いかな、という感じでした。ウィザーズが余計に引っ掻き回したせいで新たに殺人が起こるのですが、これだって関係があるとは言い切れないと警部は反論します。ただ、このパイパー警部は決して石頭の警部というわけではなく、ミス・ウィザーズとは長年の付き合いですので(そもそも恋仲になったこともあるらしい)、あくまで「そんな証拠じゃ説得力はないよ」とミス・ウィザーズに冷静に指摘するポジションなのです。うーん、仲良いなこの人たち。
で、少ない容疑者と少ない手がかりの中をウィザーズは駆け回り、ついに真相をものにするのですが……おお、このストーリーでこれを持ってくるパーマーはすごいです。犯人の行動について色々疑問は生じるものの、このトリッキーさはぜひ評価してあげたいところ。もう少しうまく出来ていれば傑作だったかな、という感じですが、悪くはありません。っていうかいいですよ。

というわけで、クラシック本格ミステリとしては良作。こうなると『ペンギンは知っていた』も気になります。翻訳が続くことを期待したいですね。

書 名:五枚目のエース(1950)
著 者:スチュアート・パーマー
出版社:原書房
     ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ 20
出版年:2014.07.18 1刷

評価★★★★☆
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