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『極大射程』スティーヴン・ハンター(扶桑社ミステリー)

海兵隊退役一等軍曹ボブ・リー・スワガー。ヴェトナム戦争で目覚ましい戦績を遺した名狙撃手はアーカンソー州の片田舎でひっそりとトレーラー暮しをしていた。日々の友はライフルと年老いた犬。その彼を二人の男が訪れ、最新技術で製作された弾丸の試射を持ちかけた。ボブはその申し出を受ける。彼は条件の異なる難射撃を次々にクリアし、1400ヤードの長距離狙撃も成功させ、周囲の人間を驚嘆させた。だが、この試験射撃はボブを巻き込んで展開される巧妙に仕組まれた謀略の始まりだった……。(本書上巻あらすじより)

はい、というわけでスティーヴン・ハンター。現代冒険小説の大物です。10月の現代海外ミステリ読書会をこれでやりまして、ついに読むことになったわけなのですが。
一線を退いた名狙撃手が陰謀に巻き込まれるも無双化してバンバン、みたいな話。陰謀の全貌が明らかになった後は驚くほどストレートな展開で(つまりほぼ窮地に陥ることなくひたすら敵を追い詰めていく)ちょっと驚きましたが、それだけエンタメ力が高いとも言えます。現代の冒険小説として大いに楽しめました。というかこういう話で楽しくないわけがないっていうか。楽しくないわけがないから逆にエンタメ力高いんだもん当然面白いでしょ、ってなりなかなか80点を超えないというか(自分の中で)。

あらすじにある、メインとなるボブが巻き込まれる罠は、冒頭から露骨に怪しい組織がごそごそ動いているもので、どんな罠が待ち受け取るんじゃいと思ったらちょっと捻った展開で面白かったです。おまけにこの捻りが、ボブは犯人ではないという疑いをFBI捜査官ニックに生じさせる引き金にもなっているのもいいですね。で、このことに疑問を持ったニックは、いろいろあってボブと行動を共にするようになり、組織を相手に戦うことにもなるわけです。
で、そこからはボブ・リー・スワガーがひたすら無双化します。プロ対プロだからね、熱いですね。でもボブったら全部敵の裏を読み切ってるから、この後全然窮地に陥りません(ある意味すげぇ)。むしろFBIとしての仕事と、名狙撃手ボブ(公式的には指名手配される)への憧れの間で揺れ動きながら協力するニックのキャラがいいです。プロ対プロに下手に足を引っ張る雑魚を投入していたりとか、相手が人数多いだけでプロじゃないとか、そういう設定の冒険小説、ことごとくダメですが、ニックはやや口は多くてもその点は大丈夫。

そしてバンバンと敵を倒しまくった後、ラスト、ボブはいったいどう自分にかけられた疑いを晴らし名誉を回復するのかと思いきや、ま、まぁ、こんだけ露骨に伏線張ってたしね、驚きゃしないけど(と思ったら気付いていない人が多いみたいでした、読書会では)。でもこのラストがかっこいいから許します。非常にシンプルな作りの冒険小説でした。苦戦しないバトル物って、そんなに嫌いじゃないんですよね。
ちなみにこのシリーズ、ボブのかっこよさに言及する人がすごく多い気がしますが……うーん、そこはそんなにはまりませんでした。銃を愛する孤独な中年男性、ってだけじゃときめけないな。
ハンターのボブ・リー・スワガーシリーズは、頭の3作くらいがめちゃくちゃ評判いいので、いずれ読みますが、まぁ古典的冒険小説の傑作群と比べると、この手の作品を読む優先順位ってやっぱり下がっちゃうんですよねー。

書 名:極大射程(1993)
著 者:スティーヴン・ハンター
出版社:扶桑社
     扶桑社ミステリー ハ-19-24,25
出版年:2013.07.10 1刷

評価★★★★☆
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