死体をどうぞ
『死体をどうぞ』シャルル・エクスブライヤ(ハヤカワ・ミステリ文庫)

イタリアの寒村ストラモレットでは、村がファシスト派と反ファシスト派に分かれ、ことあるごとにいがみあっていた。1943年も末、この山奥にも砲声が轟くようになると、村人たちはお互いに勝利を信じ、ますます対立する一方だった……そんな折も折、ファシスト派の金貸しルチアーノの惨殺体が路上で発見された。ファシスト派民軍のブタフォキ警部は、ここが腕の見せ所と馳せ参じたが、意外や、死体は跡形もなく消えていた! この消えた死体をめぐり、村は上を下への大騒動。軽妙なタッチで描く、フランス・ユーモア・ミステリの傑作!(本書あらすじより)

引き続きフランスミステリ固め読み。『死体はどうぞ』は『死体はどうぞ』でも、セイヤーズではありません(あっちも未読)。
これはもうあれです、傑作です。ブラックなドタバタコメディ風のようで、第二次世界大戦中というシリアスな舞台がそれを適度に引き締め、かつ感動ヒューマンドラマとちょっとだけ泣けるどんでん返しが色を添えているのです。何もかもが魅力的。素晴らしい、言うことがありません。大好き。

第二次世界大戦中、イタリアの片田舎がファシスト派と反ファシスト派でもめる中、ファシスト派のうざ男が死体となって発見されてしまいます。もろもろあってファシストの警察が村にやって来たため、村人たちは必死になって事件と死体を隠そうとするのですが……という話で、謎解きに奔走するというよりは村人悲喜こもごもって感じですね。村人総協力で死体をあっちに隠しこっちに隠し、と警察を翻弄する様はまさしくユーモア・ミステリ、というかスラップスティック。
でも、ここが大事なのですが、コメディっぽくはないのです。戦争という極限状態のさなかの人間の性格のおかしさ、優柔不断っぷり、争い保身に走るところ、そして愛を大切にするところ、そういったところを上手く取り上げてユーモアにしている作品なんですよ、これは。反ファシスト派はファシストの警察に突然媚を売ったりするし、村人同士が互いに告発したりもするし、そして戦争中だろうが警察が来ていようが恋もするのです。変に意地悪でも皮肉でもなく、むしろ清々しいというか。暗いのに爽やかというか。

そういった風なので、登場人物の描き方も、いかにも小説らしいキャラクターでありながら、妙にリアリティがあります。中央から事件の捜査に来る、ファシスト政権下につきながらどこか懐かしい田舎の雰囲気に感化されていく何だかんだ人情味のある警部、いまだにイタリア統一戦争の時代に生きる老人、過去の残酷な出来事から何に対しても無関心で中立的な立場を崩さない村の若い警官、と登場人物も個性的でついつい感情移入。うまいよねぇ。

意外性があるというよりはちょっと物悲しい結末により、何ともいえない温かさを感じさせながら物語は幕を下ろします。泣きそうです。こういうミステリを、殺伐とした21世紀でもっと評価していこうじゃありませんか、いや本当に。
というわけですから、マジ傑作なので見つけたら買いましょう。エクスブライヤ、今後もがんがん読んでいく所存です。他のはまた作風が違うようなので、期待しておきましょう。

書 名:死体をどうぞ(1961)
著 者:シャルル・エクスブライヤ
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ文庫 44-1
出版年:1977.03.15 1刷

評価★★★★★
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