摩天楼の密室
『摩天楼の密室』ジョー・バニスター(扶桑社ミステリー)

ロンドンの街を見下ろす建築中の高層ホテル。その最上階で、ある集団心理カウンセリングが開かれる。参加者はジャーナリスト、テニスコーチ、広告マン、弁護士ら男女7人。しかし、みな必ずしも自発的に参加したわけではない。ではなぜ、彼らはここに集められたのか?カウンセリングの意図に疑いが生じるなか、エレベーターが停止していることが発覚。ペントハウスは完全な密室となった。そして不可解な暴力が参加者を襲う――。(本書あらすじより)

はいはい、新刊ですよ。扶桑社ミステリー……今年はリチャード・ニーリィが出ているのでどう考えてもそちらの方が注目作です。
建設中のビルの最上階でカウンセリングを行うため集められた11人。(当然)エレベーターが動かなくなり、その後事件が続発。というと普通のクローズド物っぽいですが、心理劇として楽しい上に変な要素が混ざっていて、非常に面白い作品でした。これはナイス。

きちんとキャラ立ちした11人は、ある人物と関わった過去を持っており、閉じ込められた彼らは、まぁ暇ですからね、その人物の死の真相を解き明かすべく幾度も話し合いを行います。このパートが挟まっているおかげで、物語に緩急が付き、真相を明らかにする推理シーンが無理なく挿入されているように思えます。ただサスペンスサスペンスしてるだけじゃないんですよ。
でまぁ当然クローズドサークルなわけですから、殴られたり落ちたりするわけですが、これも何かドコドコ死んでくってのとは違くてオフビートな感じが面白いのです。おまけに謎の乱入者(いろいろな意味でオカシイのでぜひ読んで確認しましょう)が出てくるという非常にヘンな要素があって、これがまーはっきり言って、物語的にすげぇいらないんですよえぇまったく。ところがそれを入れちゃうわけです、ジョー・バニスターさんは。大都会のど真ん中で建設中の高層ビルという、夢あふれるクローズドサークルを用意し、しっかりサスペンスをしているのに、どこか変則的で、そこが妙にはまるのです。

11人という登場人物も全く無駄がなく、全員がしっかりと行動し、話を作り上げています。このあたり、本家である『そして誰もいなくなった』をきちんと継承しているのかな。物語が進むとともに、各々に対して最初に抱いた印象とは異なる性格が見えて来る様も、きちんと心理描写が書けていてよいのです(テニス選手とか特に)。集団心理劇&サスペンス&謎解きのバランスがほどほどのよい作品。読んでいて楽しいし、こういうB級作はいいよねぇ。

というわけで、今年の新刊としては、まぁランキングどうこうみたいなパワフルなものではないですが、なかなかいい線いってるんじゃないかなと思う一品でした。本格ミステリ・ベスト10あたりで拾ってくれないかな、こういうの。

書 名:摩天楼の密室(1997)
著 者:ジョー・バニスター
出版社:扶桑社
     扶桑社ミステリー ←通し番号メモし忘れたんですが、どなたか教えてくれませんか
出版年:2014.03.04 1刷

評価★★★★☆
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