ピカデリーの殺人
『ピカデリーの殺人』アントニイ・バークリー(創元推理文庫)

伯母と犯罪学と切手蒐集から成る人生に安住していたチタウィック氏が、たまさか訪れた午後のホテルで毒殺の現場に遭遇する。なんとも伯母さんというほかない被害者、そして、同じ卓を囲み怪しい振舞を見せた、その甥っ子。皮肉な成行きに嘆息しながらも氏は訴追側の証人として渦中の人となる。考え抜かれた話術が生きる手練の謎解き編!(本書あらすじより)

バークリー5冊目です。ちなみにこの書影は再版された後のものですね。最初のはカップに毒を入れる絵で、そっちで読みました。
非常にオーソドックスな英国風本格ミステリ。『試行錯誤』好きの自分としてはダメおじさんチタウィック氏の語りがもうかわいくてかわいくてかわいくて、ぶっちゃけそれを読めるというだけでこの作品の存在価値はありますよ(たぶん)。面白かったですねー。

チタウィック氏は殺人者がコーヒーに毒を入れるシーンをたまたま目撃したことで素人探偵として事件にかかわるのですが、もうこの全く自信がないけどおだてられれば喜んじゃってちょっとでも探偵らしい活動(聞き込みとか)が出来ただけで舞い上がっちゃうんですよチタウィックさんかわいすぎですよいやほんと。バークリーこういう冴えない中年のおじさんを描くの大好きですよね。
まぁチタウィックかわいいばっかり連呼していても仕方ないので、謎解きを見ると、中盤では、なかなかロジカルな推理が披露され、素直に感心しました。これは自分で気付きたかったくらいです。さらに結構複雑な真相は、予想できるようなありがちネタを組み合わせ、かつ複数の思惑が混ざったもので、こちらも秀逸です。犯人造形もベタながら印象的で、この人を冴えないチタウィック氏が追い詰めるというのが素晴らしいです。

いや、実際、ケチのつけようがないくらい個人的にはめちゃくちゃ面白かったんですよ。チタウィック氏のおばさんをはじめとする、英国的に個性的な登場人物によって、中盤もダレずに楽しく読ませます。英国黄金期娯楽本格推理小説として実に良作だと思うので、個人的には地味とか言わずにもっと評価されて欲しい作品です。というか復刊してください。

これでチタウィック氏が登場する3長編すべて読み終わりましたが、しかし3作しかないというのが残念ですね……バークリーの本領発揮はやはりシェリンガム氏なんでしょうが。チタウィック氏物の『試行錯誤』は、個人的に今のところバークリーの中で一番の傑作です。

書 名:ピカデリーの殺人(1930)
著 者:アントニイ・バークリー
出版社:東京創元社
     創元推理文庫 123-3
出版年:1984.06.08 初版

評価★★★★☆
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://yossiworld.blog72.fc2.com/tb.php/1034-a4acf46e