喪服のランデヴー
『喪服のランデヴー』コーネル・ウールリッチ(ハヤカワ・ミステリ文庫)

旅客機の乗客が心なく落とした壜がすべての不幸を巻きおこした。壜はジョニーの愛する娘の生命を一瞬のうちに奪いさってしまったのだ。永遠にいやされぬ悲しみを心に秘めて、ジョニーは復讐の鬼となった。その日その機に乗り合わせた男たちの妻や恋人を、ひとりずつ誘惑し、残らず殺そうと計画したのだ! 一方、狂った殺人鬼を捕えようと警察は報われぬ努力を続けていた。比類なきサスペンスと、独特な抒情にみちた傑作。(本書あらすじより)

『葉桜の季節に君を想うということ』で読書スピリットをずたずたにされたワタクシは、ストーリーの面白さに浸りたくなり、ウールリッチに救いを求めました。
なんて安定のウールリッチなんだ……面白いよウールリッチ……ウールリッチ面白いよ……読書が楽しくて仕方がないよ……ありがとうウールリッチ……。

『幻の女』とか『黒衣の花嫁』は、結末にひねりがある一方で、そこが微妙な上に説明がだらけるせいで前半9割が面白いって感じでしたが(どっちも大好きですけどね)、『喪服のランデヴー』は結構ストレートで、その分ウールリッチ節を堪能出来て、つまり傑作でしたねまたしても。相変わらずの読みやすく哀愁漂う叙情性豊かな文体と、メリハリの効いた良サスペンス。まさに隙なしというお仕事ぶりでした。

飛行機の窓から放り投げられた壜に当たって、ジョニーの恋人は死んでしまいます(ギャグではない)。復讐の鬼と化したジョニーは乗客全員を不幸のずんどこに落とすべく計画を練り始める……というのがもう設定の勝利。飛行機の窓は開かないとかそういう無粋なツッコミはなしよ!
読者はもちろんジョニーを応援したいんですが、彼のやり方があまりに悲劇的で見ていてつらくなってきます。そうして引き起こされる一連の事件を追い、殺人を未然に防ごうとするカメロン刑事、この人がまーかっこいいんです。使えない上司を持つせいで大変なカメロン刑事ですが、それでも頑張って犯人を探します。次第に明らかになっていくジョニーの存在! 追うものと追われるもの! とこの辺は王道中の王道。
ジョニーは乗客を次々と殺していきますが、彼らの関係性があまりに希薄なため、警察はこれが連続殺人だとすら気付けません。カメロン刑事はいかにして真相に気付き犯人を追い詰めるのか?という倒叙っぽい要素、探偵vs犯人という(どちらにも肩入れしたくなるような)対決と、ミステリっぽさでも良く出来ています。

というあらすじで分かると思いますが、『黒衣の花嫁』の裏バージョンといった趣なんですよね。主人公が男か女かという違い。ただ、最初にも言いましたが、『幻の女』『黒衣の花嫁』のような捻りがない分、こちらの方がストレートに楽しみやすいかもしれません。
まぁそのせいで普通に終わったなーって気もしますが、いまラストを読み返したらなんか感動して泣けてきちゃったので、やっぱり感情移入しまくってたんですね。各話の充実した恋愛エピソードと、ジョニーの壮大な物語。ウールリッチの描く究極の愛の物語をご賞味下さい。傑作です。
ウールリッチはこれで4冊読みましたが、『幻の女』も『黒衣の花嫁』も『喪服のランデヴー』も『聖アンセルム923号室』も全部傑作だし、いやほんとすごい作家さんです。

ちなみに佐野洋さんが作品内のとある矛盾を指摘して、こんな欠点のある作品が書店に並ぶのはけしからん、絶版にしろ、と言ったそうで、てっきり飛行機の窓は開かないとかそういうことかと思ったら、自転のことだったんですね。うーん確かにこれはとんでもない間違いですが……まぁ面白いからいいじゃないですか、ね。

書 名:喪服のランデヴー(1948)
著 者:コーネル・ウールリッチ
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ文庫 10-1
出版年:1976.04.30 1刷
     2002.02.28 8刷

評価★★★★★
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