三銃士の息子
『三銃士の息子』カミ(ハヤカワ・ミステリ)

人類史上最高のスーパーヒーローをご紹介しよう。かの三銃士を父に持つその名も〈三銃士の息子〉だ。なにしろダルタニャンの機知、アトスの気高さ、ポルトスの精力を一身に受け継いでいるのだから天下無敵も道理(アラミスがいないのは気にしないこと)。そんなヒーローが、美しくも無垢で薄幸のヒロインを救うべく、悪の権化の公爵殿と闘うんだから、コレを見逃す手はない! かのチャップリンも脱帽したとかしないとかいう、ユーモアの神様カミが、脱力ギャグと「あり得ない」展開で世紀の冒険を描き切った大巨篇! 『機械探偵クリク・ロボット』に続く脱力必至の物語をご堪能あれ!(本書あらすじより)

今年の早川書房は、ポケミスからジャック・リッチーの短編集が出るわカミが出るわ、異色作家短篇集の文庫化をするわ文庫復刊投票をするわと、最近では珍しく古めの作品にも目を向けている感があります。というかHM文庫の売れ行きがやばいから方針転換をしたんじゃないかなとか勝手に思ってたんdゲフンゲフン。

さて、『機械探偵クリク・ロボット』のカミがまさかのポケミス再登場です。クリクは勝呂忠表紙時代の最後の最後でしたから、もう数年にはなりますね。で、あちらはヘンテコ探偵物(だけどそれなりな本格ミステリ的ななにか)でしたが、今作はよりカミの本領発揮と言えるような冒険小説風三銃士パロディです。
三銃士の息子である「三銃士の息子」さん(そういう名前)が、愛する乙女のために乙女をつけねらう悪党と戦うドタバタギャグ冒険小説。デュマを読んでなくても問題ありません(自分も『三銃士』の内容はすっかり忘れているし、そもそも児童向けだったので全部は読んでいませんが、全く関係なかったです。話は変わりますが、原作の『三銃士』(『ダルタニャン物語』って本当に長いんですよね……ちゃんと全部読んだ人どれだけいるんでしょう)。本当にしょうもないんですけど、案外ストーリーはしっかりしていて、それにまぁとにかく楽しいんですよね。だから出来をどうこう言うより、これを出してくれた早川書房に感謝です。

中盤くらいまでは、「三銃士の息子」が、いかに乙女を守り、悪党をやっつけるか、というアイデアがバカみたいで面白く(水責めにスポンジで対抗する的なアイデアがいかにもカミっぽい)、ただテイストは古典的な「世界の冒険文学」みたいな感じ、というなんともおかしな読み心地。大真面目に変なことやるので非常に楽しいです。変は変ですが、ホラ話があるくらいで、奇想ってほどでもないかな。
ところが後半から過去の悲劇みたいのが語られ始めるんですが、この辺からがカミの本領発揮で、いやいやどこのファンタジーでもそんなこと起きねぇよ(笑)みたいなアホアイデア炸裂です(大変よろしい)。鉄仮面のアイデアをなんちゅー使い方してるんですか……。最後どう考えてもアホなのになんか感動してしまうし。

というわけで、良かったですよ、色々な意味で。こういうの年に一回は読みたいかな。年に一回以上は……うん……まぁしょうもないから……って感じですけど、立ち並ぶ重々しい新刊軍団の中においてこういうバカっぽいのは大変貴重です。

書 名:三銃士の息子(1929)
著 者:カミ
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ 1882
出版年:2014.04.15 1刷

評価★★★★☆
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