殺人ファンタスティック
『殺人ファンタスティック』パトリシア・モイーズ(ハヤカワ・ミステリ)

メイスンは今や事業を隠退し、”地方名士として敬われる”という夢を実現するべく、片田舎クレグウェルで日々を送っていた。ある日、農園の持ち主マンシプル家を訪れた彼は、その帰途、不慮の死を遂げてしまう。目撃者によれば、故障をした車を降りたメイスンは、喚声とともに宙を泳ぐように倒れ息絶えたという。この奇妙な事件もやがて、凶器と思われる拳銃が発見され、殺人であることが決定的となるが、さっぱり糸口が掴めず、遂にティベット警部の登場を待つこととなった……。モイーズが描く、ファンタスティックな殺人の顛末!(本書文庫版あらすじより)

読んだのはポケミス版なんですが、画像が見当たらなかったのでこの際文庫の画像とあらすじにしちゃいました。まぁいいよね、この表紙好きだし。
久々のクラシックな本格ミステリです。モイーズを読むのは2冊目。『サイモンは誰か?』をべた褒めした記憶がありますが、今回もべた褒めです。超面白かったです。なんなんだモイーズ、この安定っぷりは。

スコットランドヤードのティベット警部が応援を頼まれて赴いた田舎のお屋敷での殺人事件です(よくあるパターン)。登場人物はどいつもこいつもキチガイレベルの変人ばかり。変人過ぎて異世界感すらあります。つまりファンタスティック! 登場人物の個性だけで楽しく読ませ、良質な謎解きできれいに終わる……これぞ古き良き英国本格ミステリってもんですよ。

まず本格面。事件が2つ起こりますが、その扱いがなかなか面白いのです。最初の事件に関しては真相が少しひねってあるため、逆に現代の読者は気付きやすいかもしれませんが、この真相が最後まで引っ張られず、その後の展開のキーとなっているのが良いですね。2つ目の方は堅実で、特に問題なくよく出来ているなぁという感じです。というわけでこちらは何の問題もなし。

さて、一方、登場人物が堅実なんてもんじゃありません、すごいのです。何しろマトモに話が出来ない変人しかいないのです。相手と全く会話が成立しない牧師さんとか、耳が遠いおばあさんとか、突然笑い出すおじさんとか。で、変人大好きなティベット警部は、彼らと楽しく会話しつつ、物語を進めていくのですね。もうこの魅力だけでこの分厚さを乗り切れます。いや実際厚いんですが、すっごく読みやすくて楽しいんです。しかもこの変人っぷりがちゃんと手がかりにもなっていて、いったいモイーズさんの脳内どうなってんでしょう。

最後の方の犯人を追い掛け回すシーンとか、どこの『消えた玩具屋』だよっていうギャグ・ファルスっぷりでしたね。終始ファンタスティックでございましたごちそうさまです。やっぱり英国ミステリはこうでないとねぇ。素晴らしかったです。あ、動機はちょっと時代がかってましたが、まぁ書かれた年代が年代ですから仕方ありません。
というわけでモイーズは今後もがんがん読まないと。幸い積ん読には事欠かないというか……(それはそれで大いに問題がある気もする)。

書 名:殺人ファンタスティック(1967)
著 者:パトリシア・モイーズ
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ 1025
出版年:1968.02.29 1刷

評価★★★★★
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