ルーフォック・オルメスの冒険
『ルーフォック・オルメスの冒険』カミ(出帆社)

ナンセンス文学の極北!! 登場しますは、プシット、プシュットなるおとぼけコンビ、名探偵ルーフォック(ちょっとキ印の意)・オルメス、怪盗スペクトラetc。奇想天外、機智縦横、モダンで奇抜でナンセンス、とてつもなく愉快でだんぜん風変わりな、奇才溢るる「大笑い」の作家カミの傑作コント31篇。ユーモア文学傑作シリーズ第二弾!!(本書あらすじより)

なんだってこんな忙しいんでしょうかね(と言えば更新が一週間ぶりであることの言い訳が立つと思っている浅はかな中の人ですこんばんは)。
さて、なんと新刊としてカミのポケミスが4月に出ちゃいましたので、それに向けて積ん読からこいつを引っ張り出してきました。タイトルのルーフォック・オルメスはその名の通りホームズパロディ物ですが、収録作はそれだけではありません。とりあえず目次をご覧ください。

【プシット、プシュットの人生サーカス】(1932)
1、新案薩摩守
2、安い昼食
3、珍奇な馬車
4、恐慌時代
5、のんきな兎
6、爆弾チーズ
7、成層圏探検
【ルーフォック・オルメスの冒険】(1926)
8、奇妙な自殺
9、十一番列車の怪盗
10、調律師殺人事件
11、骸骨の失踪
12、鮮血トランク事件
13、ヴェニスの潜水夫
14、仇討二重奏
【怪盗と名探偵】(1926)
15、大西洋の盗賊
16、赤ん坊は渇く!
17、細菌の正体
18、カタコンプの怪
19、インクは昇る!
【モダン錬金術】
20、蹴球珍試合
21、優しき殺人犯
22、復活祭は楽し
23、最後の審判
24、ディオゲネスの娘
25、モダン錬金術
【不景気解消!】(1934)
26、最後のフランス人
27、ビング・ゴング
28、マラソン
29、不景気解消!
30、リキキ一家の日曜日
【衣裳箪笥の秘密】(1924)
31、盗まれた処女性
32、パリの恐怖

コントですから、ほとんどが10ページ前後くらいのものです。全部で31篇じゃなかったのかと思うかもしれませんが、えぇまぁつまり目次の書き方が悪くて、つまりこの最後の「衣裳箪笥の秘密」だけ、短編というか中編くらいの分量なんですね。31、32、じゃなくてつまり31「衣裳箪笥の秘密」ってことです。ちなみに発表年などはあっちゃこっちゃのサイトにあるのを持ってきましたがかなり怪しいと思って下さい。
まぁとにかくアホっぽいコントが大量。全体的に普通というか微妙というか、あんまりパッとしないなぁと思って読みすすめていたのですが……最後の「衣裳箪笥の秘密」が超絶スプラッタおバカ傑作だったので褒めざるを得ません。うわぁこれはすごいぞ。

あらすじ順に見ていくと、弥次喜多風おバカ二人組を描く【プシット、プシュットの人生サーカス】(7編)、名探偵オルメスの活躍を描いた【ルーフォック・オルメスの冒険】(7編)、オルメスと怪盗スペクトラの対決を描く【怪盗対名探偵】(5編)、ナンセンスなユーモア譚など様々な【モダン錬金術】(6編)と【不景気解消!】(5編)、そしてオルメスがパリを恐怖のどん底に陥れた殺人事件に取り組む中編「衣裳箪笥の秘密」の、6部構成、全31編からなっています。「衣裳箪笥の秘密」以外は台本風のコント文体で、「衣裳箪笥の秘密」のみ散文体です。

で、オルメス以外のユーモア譚については、おおむねしょうもないというか、特にコメントがないですね……。普通のギャグだったり、例えば食肉人種をネタにしたナンセンスだったりと色々。コント集って色々なものがありますが、自分は正直台本風の文体があんまり好きじゃないというのもあるかもしれません。

さて、メインのオルメス物です。オルメスは、以前アンソロで読んだ「トンガリ山の穴奇譚」がバカエロ奇想!って感じだったので期待していたのですが、意外と事件は変だけどそんな超常的だったりせず、オルメスがズバズバと解決していくマトモなものが多かったので少しがっかりしたというのは確かです。
自分の骸骨を盗まれた男が依頼してくる「骸骨の失踪」(もうこの時点で意味わかんない)、あの手この手を使って怪人二十面相並のアイデアでパリを混乱に陥れ金儲けを企む怪盗スペクトラとの対決最終譚である、作家にむりやり小説を書かせる拷問の発想が天才的な「インクは昇る!」あたりが良かったでしょうか。いずれも小品感はぬぐえませんが。

そして「衣裳箪笥の秘密」ですよ。こんな話。天才博士は娘アンジェールの処女性を持った器官を非処女のそれに置き換え、娘に自由奔放な(性)生活をさせ、いずれ将来を共にする相手が決まったら器官を戻し、処女として初夜を迎えられるようにしていました(初っ端からすごい設定)。
さてアンジェールはしつこい男マカルイユ(解剖学の大家)をはねつけ、クロチルドといい感じの仲になります。ところがその矢先、博士の助手が殺され、アンジェールの処女器官がマカルイユに盗まれてしまうのです。さらにマカルイユは解剖学の大家なだけに若い男の脚を捜査課長の鼻に移植し(は?)、あげくのはてにオルメスを拉致。果たして名探偵の運命は? そしてマカルイユの生み出した化物により、パリは血の海と化す……。
……まぁそういう感じで最終的に殺人箪笥が人を殺しまくる話になるわけです。意味が分かりません。カミ天才じゃないですか。というわけで奇想が炸裂しまくるこの中編だけは傑作と断言できます。入手が難しい『ルーフォック・オルメスの冒険』でしか読めないのが悩ましいところですね……他の作品がどうでもいいので……。

総じてたいしたことはないので、無理して手に入れる必要はないですが、カミファンならやはり必読でしょうね。変な作品集でした。やっぱカミはバカだなぁ。

書 名:ルーフォック・オルメスの冒険(1936年に日本で最初に独自に編纂される)
著 者:カミ
出版社:出帆社
出版年:1976.09.10 初版

評価★★★★☆
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