どこまで行けばお茶の時間
『どこまで行けばお茶の時間』アントニイ・バージェス(サンリオSF文庫)

エドガーがアングロ・サクソン王朝についての退屈な授業に出ている時だった。この机にコンパスでつついてあけた穴にもぐっていけたら痛快だなと思った、とたん、穴をぬけて船に乗っていた。この『鏡の国のアリス』的な旅立ちによって実際に授業に出てきた王様たちに会うだけではなく、スフィンクスみたいに謎をかけてくるテレビだの顔の二つある悪罵の動物を生んだ母親だの相対性理論を熟知しているアルフレッドという名のネズミだのに出会いながらも、ついにエデンバラという――ガイドブックによれば、檻に入ったエジプトの盗賊、月に住む象、緑服のエルフのいる――奇妙奇天烈な街を通っていくのだが、それにしてもエドガーは紅茶とチェリー・ケーキの出る時間までに教室へ戻れるのだろうか?本書は童話を装ってはいるがアルファベットの系列が筋を作り上げていくという言語ゲームがセンスとノンセンスを交換していく言語百科辞典風ファンタジーの怪作である。(本書あらすじより)

いやもうサンリオSF文庫のあらすじって本当にワケが分かんないので、この間の『枯草熱』の記事では国書刊行版のあらすじを使ったんですが。この長くてダラダラしたあらすじをちゃんと読む人がいるんでしょうか。自分は読みません。っていうかアルフレッドなんて名前のネズミは出てこなかったしあらすじの順番もおかしいし「言語ゲームがセンスとノンセンスを交換していく」ってどういうことなんですか教えてサンリオさん。

さてとにかく、タイトルから分かるようにこれは『不思議の国のアリス』のパロディ物です(主人公は男だけど)。歴史の授業に退屈していたエドガー少年が、開始8行でナンセンス極まりない世界に飛び込み……という感じで、(イギリスの)児童向け的な要素もあります。が、しかし、イギリスの少年少女(あるいは大人)でないと意味が取れないところも多く、原文でないとキツイところも多く、そもそもアリス物というか何なのかよく分かんないしで、えーと何なんですかねこれは。

授業中に異世界に飛ばされたエドガー君は、英国少年なのでひたすら紅茶を飲みたくてたまらないのです。けど行く先々でお茶は出て来ないし何度か食事はするけど飲み物が出て来ないのでどんどんのどがかわいていくのです(なんじゃそら)。だからお茶を早く飲みたいのでさっさとお茶の時間までに現世に帰りたいとずっとぼやいてるのですね(なんじゃそら)。
ナンセンスと意味不明さはアリスどころではなく、正直なところ訳註を読んでも理解出来たとは到底言い難いです。特に意味不明イベントと会話が目白押しの前半はなかなかつらいですね、ぶっちゃけ。アリスのナンセンスは(色々な要素をネタにしているけど)それ単体としておかしなキャラクターと物語であるのに対し、『どこ茶』のナンセンスは教養を求めて来る上にそれをごちゃごちゃに消化吸収して排出しているので特に外国人には楽しみにくいものとなっています(そこにこそ意味があるんだけど)。

ただ前半と違って後半はある程度ストーリーが出て来たので、まぁ読めるかなという感じ。オチも予想通りな感じが楽しいし。また挿絵が多く、この下手うまなとぼけた絵はこれはこれでなかなかおかしくて良いです(たぶん原書の絵と同じです。ちなみに表紙は日本人によるもの)。
というわけで、分からないネタは一切気にせず、訳註もあんまり必死に追わず流しながら読めば、不条理ファンタジーとしてそこそこ楽しめるんじゃないかな……たぶん。エドガーがお茶飲みてぇお茶飲みてぇとひたすら連呼しつつ冒険してるのを眺めてりゃええのです。細かいことに深入りせず、さっさと読みましょう。そこそこ楽しいですよ。

書 名:どこまで行けばお茶の時間(1976)
著 者:アントニイ・バージェス
出版社:サンリオ
     サンリオSF文庫 48-C
出版年:1981.09.15 初版

評価★★★☆☆
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