黒のクイーン
『黒のクイーン』アンドレアス・グルーバー(創元推理文庫)

険調査専門探偵ホガートは顧客からある依頼を受けた。プラハの展覧会に貸し出した絵画が焼失、調査に派遣した絵画専門の調査員は行方不明になった。調査員の安否と保険詐欺のことを調べて欲しいというのだ。プラハに飛んだホガートは、そこで猟奇連続殺人事件に巻きこまれる。首と手を切りおとしビロードにくるんだ死体の謎。『夏を殺す少女』で衝撃のデビューを飾った、オーストリア・ミステリの名手が仕掛ける巧妙な罠とは?(本書あらすじより)

去年読んだ『夏を殺す少女』が予想以上に面白かったこともあり、グルーバーさんは今期待の新人なのです、自分的に(新人じゃないけど)。話の展開はベッタベタなんですが、どうもこの人は謎解きのツボというのを分かっているフシがあって、情報の出し方とかが上手いのです。あとベッタベタなだけあってストーリーがまず普通に面白いし。年末ベストなんかでは活躍しそうなタイプですが。

というわけで今年も出てくれましたよグルーバーさん、去年訳者の酒寄さんの紹介を聞いてからずっと楽しみにしていたのです。だってあなた、ちょっとネタバレちっくだけど言っちゃいますけどね、なんとプラハをチェス盤に見立てて犯人は毎月一日に死体を置くわけですよ! なんでだよ! 古典本格でもない現代ミステリだからどうせロジカルなアレとかじゃなくてしょうもない理由しかないくせに! でも熱いよ、熱いよグルーバーさん!
と期待して読んだら、やっぱグルーバーは面白いな、と無事再認識しました。大したことないサスペンスなんですけどね、今回も。でも読者を惹きつける謎の提示から解決まで一気に持っていくエンタメっぷりが見事です。重厚さも綿密さもないけど、こういうストレートな面白さの作品は積極的に評価したいです、わたし。

絵画消失を調査していた女性探偵1の失踪を調べにプラハに来たウィーンの探偵は、プラハを騒がす毎月一日に首を切断して死体を放棄する連続無差別殺人を調査する女性探偵2に出会う。彼を邪魔するプラハを牛耳る暗黒街のボスの登場。突然命を狙われた2人(ウィーンの探偵と女性探偵2)。果たして真相は……とてんこ盛り。350ページしかないのに。いいぞいいぞ。おまけにさっき言った見立てとかなにとかもうとにかく詰め込んでラストは殺人犯と対峙してドンパチやるんですよ(鉄壁死亡フラグ「俺に任せて、お前らは先に行け」まで登場)。うーん、グルーバーさん、なんてベタが好きなんだ。

正直なところ、ベタが好きなだけあって展開は予定調和の域をはみ出るものではないし、色々詰め込んだ割にプロットはとっちらかってます。けど、シンプルなだましを入れて来るあたりはさすがだし、何よりこの立て続けの事件だけで引っ張っていこうという姿勢に好感が持てるじゃないですか。
傑作なんてものじゃないし、年間ベストに載ることも絶対ないし、どこか飛び抜けて優れた部分があるってわけでもないんですが、こういうエンタメが自分にはちょうどいいし、読んでいて楽しいんですよね。グルーバーの翻訳が続くことを期待してここは褒めまくっておきますよ……評価は星4つだけどな!

書 名:黒のクイーン(2007)
著 者:アンドレアス・グルーバー
出版社:東京創元社
     創元推理文庫 Mク-19-2
出版年:2014.01.31 初版

評価★★★★☆
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