金曜日ラビは寝坊した
『金曜日ラビは寝坊した』ハリイ・ケメルマン(ハヤカワ・ミステリ文庫)

新任の若いラビ、デイヴィッド・スモールの評判はかんばしくなかった。無頓着な服装と理屈っぽい説教に、教会の古い信者たちは眉をひそめていた。 そんな時、教会の庭に置いてあったラビの車のそばで女の絞殺死体が発見された。手がかりはラビの車に残された女のバッグだけ。苦境に立ったラビは、驚くべき論理性に貫かれた推理を駆使して反撃を開始した。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞に輝くラビ・シリーズ第一弾。(本書あらすじより)

「ラビが主人公で宗教臭くて読みにくそう」「と思いきや全くそんなことはない」という前評判を聞いて臨んだら、ミステリとユダヤ教社会の合わせバランスが実に適度な読みやすく良質な本格ミステリでした。ちゃんと長編書けるんじゃないですかケメルマンさん。このシリーズが絶版なのはもったいないですよ。

まず宗教面ですが、ユダヤ教における司祭的ポジションであるラビとはなんぞやということは作品中でおいおい語られ、ユダヤ教の理念や社会を特に押し付けがましくなく読ませていくのはさすがです。この作品に関してはラビが中心というだけで、ユダヤ教自体はあんまり事件とは関係ないんですけどね(被害者ユダヤ人じゃないし)。ところどころで語られる宗教説明も楽しく読めます。ユダヤ教のよい入門書かもしれません(というかケメルマンは『ラビとの対話』なんていうこのシリーズのキャラクターによるユダヤ教解説書なんてものも書いてます)。

さて事件です。教会前で死体が見つかり、ラビが容疑者として浮上……という導入から濡れ衣晴らし奔走系かと思いきや、深刻に疑われるのは序盤だけです。良かった良かった。とはいえラビが捜査に乗り出す動機付けをかなりしっかりと描いている部分には感心。学者肌の新任ラビとかいらねぇよとなるラビ解雇問題と事件の絡み方も安易ではなく上手いです。
本格ミステリとしては地方都市(?)住人まぐわい系で英国物っぽさを感じます。犯人は意外でも何でもないですけどね。ただ、そんな無理に証拠作らなくてもいいだろってとこまで伏線張ってくるあたりに『九マイル』根性が垣間見えます。古き良き本格としては良作でしょう。

というわけで、かなり楽しめました。このシリーズは二作目の『土曜日』が本格としてよく出来てるとか、『火曜日』『水曜日』が面白いとか色々聞くので、順番に読んでいきたいところです。というかまず『日曜日』と『月曜日』の文庫が欲しいです。だれか買ってください。

書 名:金曜日ラビは寝坊した(1964)
著 者:ハリイ・ケメルマン
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ文庫 19-1
出版年:1976.04.30 初版

評価★★★★☆
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