消されかけた男
『消されかけた男』ブライアン・フリーマントル(新潮文庫)

どこから見ても風采の上らない英国情報部のチャーリー・マフィンは、KGBヨーロッパ・スパイ網の責任者ベレンコフを逮捕したこともある腕ききだが、部長が交替してからは冴えない立場に追いやられている。折しも、ベレンコフの親友カレーニン将軍が西側に亡命を望んでいるとの情報が入った。チャーリーはどこか臭いところがあると警告したのだが……。ニュータイプのエスピオナージュ。(本書あらすじより)

新潮文庫ミステリチャレンジ第三弾。初フリーマントルです。ひょっとして、ここんとこ読んだ冒険・スパイ小説の中では一番面白かったかもしれませんね。くたびれて、皮肉で、ユーモラスな雰囲気がたまらなく好き。キャラクターはいずれも魅力的で、どんでん返しも小ぶりながら実に綺麗。何よりこの短さがナイス。いやはや文句なしの傑作でしょう。

まず主人公、英国情報部内でいまや疎んじられているけど能力は最高の叩き上げの哀愁漂うくたびれたおっさんスパイ、チャーリー・マフィンという設定がやばいです(なんてずるいんだ)。しかも序盤で示される通り、またこれはシリーズですから、主人公補正のかかっている彼は無敵です。こんなん応援したくなるに決まってるじゃないですか。

さて、ソ連の大物将軍が亡命するらしい、それを援助せよ、という指令を無能な上司が出します。チャーリーを足の臭いおっさんと馬鹿にし、いきがる若造スパイは、序盤でさっそく使えないっぷりを示し気持ちよく殺されてしまいます(ざまぁみろ)。この作者は嬉しいことにベタな展開が好きなんでしょうねぇ。チャーリーとその他エリート出身の対比が強調されているあたりが、ザ・身分社会なイギリス、って印象を強く与えているような(それを皮肉った感じがヒーロー物っぽくてかっこいいんですけど)。
この件は結局チャーリーが担当させられることになるのですが、彼はこのヤマは臭いっすよ、と警告し続けます。果たして――?という感じで、作者がひたすら、さーてどんな企みがあるでしょう?と読者を煽りに煽りまくる、このワクワク感がたまりません。ゆるゆるとした皮肉な雰囲気と適度の緊張感を持って話は進んでいきます。で、まぁ、案の定なんかあるわけですが、かなり面白い伏線なんかもあって非常にかっこよく決まっています。

書き方が全体的にガツガツしていなくて、どことなく洒落た感じがチャーリー・マフィンにピッタリで、読みやすく、楽しい読み物感満載で満足。次作もぜひ読みたいと思わせる軽快な作品でした。スパイ小説初心者(自分みたいな)にもオススメしやすい一品。
次作『再び消されかけた男』はこれ以上の傑作だとの評判ですので、楽しみにしたいところ。なお、『再び消されかけた男』のあらすじは、一作目未読の人は読んじゃダメですよ、本作のネタバレを含んでいます。

書 名:消されかけた男(1977)
著 者:ブライアン・フリーマントル
出版社:新潮社
    新潮文庫 フ-13-1
出版年:1979.04.26 1刷
    1989.03.15 23刷

評価★★★★★
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://yossiworld.blog72.fc2.com/tb.php/1005-6d2cbb1c