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シャーロット・アームストロング名言2

2019-10

『イヴリン嬢は七回殺される』スチュアート・タートン - 2019.10.26 Sat

タートン,スチュアート
イヴリン嬢は七回殺される
『イヴリン嬢は七回殺される』スチュアート・タートン(文藝春秋)

森の中に建つ屋敷“ブラックヒース館”。そこにはハードカースル家に招かれた多くの客が滞在し、夜に行われる仮面舞踏会まで社交に興じていた。そんな館に、わたしはすべての記憶を失ってたどりついた。自分が誰なのか、なぜここにいるのかもわからなかった。だが、何者かによる脅しにショックを受け、意識を失ったわたしは、めざめると時間が同じ日の朝に巻き戻っており、自分の意識が別の人間に宿っていることに気づいた。とまどうわたしに、禍々しい仮面をかぶった人物がささやく――今夜、令嬢イヴリンが殺される。その謎を解かないかぎり、おまえはこの日を延々とくりかえすことになる。タイムループから逃れるには真犯人を見つけるしかないと……。悪評ふんぷんの銀行家、麻薬密売人、一族と縁の深い医師、卑劣な女たらしとその母親、怪しい動きをするメイド、そして十六年前に起きた殺人事件……不穏な空気の漂う屋敷を泳ぎまわり、客や使用人の人格を転々としながら、わたしは謎を追う。だが、人格転移をくりかえしながら真犯人を追う人物が、わたしのほかにもいるという――英国調の正統派ミステリの舞台に、タイムループと人格転移というSF要素を組み込んで、強烈な謎とサスペンスで読者を離さぬ超絶SFミステリ。イギリスの本読みたちを唸らせて、フィナンシャルタイムズ選ベスト・ミステリ、コスタ賞最優秀新人賞受賞。多数のミステリ賞、文学賞の最終候補となった衝撃のデビュー作!(本書あらすじより)

まず、上記の長いあらすじを読んでもらっても良いですか。読みましたか。すごくないですか。フーダニット&英国館ミステリ&タイムループ&人格転移&SFですよ。しかも2段組み400ページ。強すぎじゃないですか。
事前に読みにくい、分かりにくい、と聞いていたのでやや身構えていましたが、読みにくさ、分かりにくさは特に気にならず(この長さと内容なら許容範囲)。正直長いんですが、それもまぁ設定上仕方ないし、めちゃくちゃややこしい設定の中で有象無象の情報がきちんと組み立てられていく様は見事、ではあると思います。ただ、手放しでは褒められないんだよなぁ。80点ではないけど60点でもないという作品。

偶然や都合のいい要素で色々解決しているとはいえ、主人公が解き明かす屋敷の謎、ハードカースル家にまつわる様々な秘密などの部分は、クラシック田園ミステリとして王道的な真相が用意されていますし、それをタイムループの中で解き明かす、という趣向自体はかなり成功しています。主人公の人格(宿主)が変わるたびに、それまでの主人公視点では説明できなかった様々な出来事が、そして、それはもうあり得ないくらい緻密に組み立てられた一日の全ての流れが、徐々に読者に伝わっていくという快感は、なかなか他の作品で味わえるものではないと思います。
タイムループに閉じ込められた主人公が競争相手と争い真相を探ったり、ゲームマスターがありとあらゆる場所で登場したりと、いわゆるデスゲーム物っぽい雰囲気もあります。この点でも、個人的に結構面白いと思った騙しがひとつありました。そういうところもあったりするので、やっぱり嫌いではないんだよなぁ。

じゃあどこに引っ掛かるのかと言いますと……この舞台そのものを作るSF設定自体の不自然さとかは、割とどうでも良いんです。うーん、ネタバレせずに説明するのがすごく難しいんですが、極論、犯人が誰なのかに興味を持てないことにあるのかなぁ(それはもう色々な意味でですが)。良いとか悪いとかではなく。犯人を突き止めることが主人公の一番の目的であるにもかかわらず、他がゴチャゴチャしているせいで、読者がそこに興味を持てなくなってしまっているんです。もにょる……。

なんかこう、上手く感想を書けないので、とりあえずここで終わりにしておきます。小説としてのスゴさと、面白さは、別、ってこと……なのかもしれません。

原 題:The Seven Deaths of Evelyn Hardcastle (2018)
書 名:イヴリン嬢は七回殺される
著 者:スチュアート・タートン Stuart Turton
訳 者:三角和代
出版社:文藝春秋
出版年:2019.08.10 1刷

評価★★★☆☆
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『ひとり旅立つ少年よ』ボストン・テラン - 2019.10.23 Wed

テラン,ボストン
ひとり旅立つ少年よ
『ひとり旅立つ少年よ』ボストン・テラン(文春文庫)

父が殺された。父は詐欺師だった。奴隷解放運動の資金の名目で大金を巻き上げ、それを狙う悪党に殺された。12歳の少年チャーリーは金を約束どおり届けようと決意する。時は19世紀。父の贖罪のため、少年は遙か南へと旅立つ。だがそのあとを父を殺した男たちが追う……。『音もなく少女は』『その犬の歩むところ』の名匠の新たなる感動作。(本書あらすじより)

これは大真面目に、真剣に言うんですが、『ひとり旅立つ少年よ』、まーーーーーーじで良かったです。好き。めっちゃ好き。
書く部分と書かない部分のバランス、塩梅が本当に上手いのです。何が起きたかを後で説明したり、しなかったり。登場人物のいわば「良い人」側の人たちは、主人公と関わり大変な目には合う……んですが、そこで現れる気高さ、高潔さに、そして彼らの強さが示される一瞬一瞬に、どうしようもなく心を奪われてしまうのです。

12歳の少年チャーリーは、父親と共に詐欺師としての人生を送っていた。しかし父親が詐欺で巻き上げた大金を狙われ殺されてしまったことをきっかけに、チャーリーは、その大金を善行のために届けることにする。一方、父親を殺した二人組も、金を求めて少年を追いかけていた。19世紀、黒人と白人の対立が深まる中で、チャーリーの孤独な旅が始まる……。

主人公である12歳の少年チャーリーは、特に序盤、出会う人たちから必ず何かしら「物」をもらっていきます。その経験から作られていく「チャーリー」の造形が、もう見事と言う他ないのです。全て無駄にならず、血となり肉となる……それが読者にはっきりと伝わるのは、やっぱりそこまでのエピソードの積み重ねの上手さなんでしょうねぇ。
そして、ロードノベルとしての完成度。白人の世界が主な前半→黒人と白人が混ざりあう病院以降という流れを、19世紀のニューヨーク→ミズーリの移動で表すの、まーじでロードノベルのアイデアとして天才的だと思います。チャーリーにとってもつらい道のりですが、追ってくる殺し屋二人組だって黒人なので、簡単な旅にはならないわけです。それを描けるというこのどんぴしゃな時代と舞台設定。

最初から大人びていて、度胸と勇気と罪悪感と恥じらいと、そして詐欺師の才能を持っているチャーリーは、時として異様なまでに巧みな安定感を見せ、時としてただの「少年」になります。チャーリーは詐欺師としての天才的な頭脳・演技力を持ちつつも、その詐欺師として様々な罪を犯してきた過去に苦しむのです。だって、12歳なんですよ、彼は。どうしたって、小説にいるような、タフで強い大人にはなれないんです。それでも、彼はもがきながら、そして殺し屋二人組から命を狙われながら、贖罪の旅へと出かけていくわけで。
この危なっかしい様子を違和感なく読者が見て取れるというのが良いんです。ファンタジックさとリアルさの絶妙なバランス。
だって、ラストのゴールシーンなんて、もうある種の奇跡じゃないですか。聖書の世界じゃないですか。でも、それがチャーリーという少年の全てだし、彼は出会いによりそうなったし、そして彼は出会った人間たちに影響を与えていったわけですよ。やっばくないですか、ねぇ。

というわけで、ガチめに傑作でした。新刊ベスト3は確実に入ります。これまで読んだテランの中でも、比べりゃいいってもんじゃないですが、『暴力の教義』『その犬の歩むところ』『神は銃弾』(読んだ順)よりも好き。
暴力描写(1850年代のアメリカの描き方がまた良いんだよ……)がありつつも、グロくないくらいのまた絶妙な描き方なので、とりあえず初テランだろうが何だろうが読んでみてください。超おすすめです。

原 題:A Child Went Forth (2018)
書 名:ひとり旅立つ少年よ
著 者:ボストン・テラン Boston Teran
訳 者:田口俊樹
出版社:文藝春秋
     文春文庫 テ-12-6
出版年:2019.08.10 1刷

評価★★★★★

『「五つの鐘と貝殻骨」亭の奇縁』マーサ・グライムズ - 2019.10.18 Fri

グライムズ,マーサ
「五つの鐘と貝殻骨」亭の奇縁
『「五つの鐘と貝殻骨」亭の奇縁』マーサ・グライムズ(文春文庫)

休暇中に遭遇した奇妙な殺人事件の被害者の妻と、テムズ川で見つかった女性の死体の顔は驚くほど似ていた。ただの偶然とは思えない二人の関係を、ジュリー警視が追う。(本書あらすじより)

9月の月一マーサ・グライムズです。シリーズ第1作『「禍の荷を負う男」亭の殺人』の舞台であり、ダブル主人公の片割れである元貴族メルローズ・プラントが住む村、ロング・ピドルトンが舞台となっています。
好き嫌いが非常に分かれそうな作品。トリック面を評価するか、このエンディングを認めるか、あるいは放置プレイになっている様々な要素を問題視するか。極端な話、これは「名探偵が解決できないミステリ」なのです。

メルローズ・プラントの友人である古道具屋トルーブラッドが仕入れたばかりの家具から死体が発見された。状況から考えて、犯人はこの家具を売り払ったばかりの、死んだ男の妻ではないかと思われるが、ジュリー警視はすんなりその結論に納得できず……。

いわば「綺麗な解決」「ハッピーエンド」を時として好まないのがグライムズという作家なんですが、その特性が過去作にない形で現れたのがこの『「五つの骨と貝殻骨」亭』なんだと思います。それを成立させるためのトリックと、事件が、まさにこれ、という。
明確に「トリック」があるタイプのミステリであり、そんなに上手くいくかなぁと思ってしまうような真相ではあります。が、「上手くいってしまった」ということを全面に押し出すことでそれを解決するという、ある意味ずるい描き方であるため、そこまで違和感はありません。

とはいえ核となる人物の描写が、いつものグライムズだったらもっとみっちりやっているだろうに、意外とさらっとしているせいでやや味気ないのも事実。なぜ書き込みが足りないのかというと、偽の手がかりが多く作りすぎたから、と言う他ないのですが、問題はこの偽の手がかりたちが、読んでいる分にはかなり楽しくても、あれもこれもほったらかしで終わってしまっているところ。下手に容疑者を増やすくらいなら、もっと狭いコミュニティにして、短めの話で仕上げた方が良かったのかも。
そういうわけなので、シリーズ1作目の舞台と同じにしてシリーズキャラクターをぞろぞろ出す必要はなかったんじゃないのかな、とか、まぁ色々考えるわけですよ(作者が書きたかったから、あとはファンサービスが理由かなぁとは思いますが)。割と好きではあるけど、完成度としてはマイナスポイントが目立つ作品だと思います。

これで今年9作再読を終えたわけですが、マーサ・グライムズ、再読した何作品かに関しては、初読時に感じたシリーズとしての楽しさよりも、個々の作品の完成度が気になってしまうので、結果的にやや評価を落としている感が否めません。悲しいなぁ……。

原 題:The Five Bells and Bladebone (1987)
書 名:「五つの鐘と貝殻骨」亭の奇縁
著 者:マーサ・グライムズ Martha Grimes
訳 者:吉野美恵子
出版社:文藝春秋
     文春文庫 ク-1-8
出版年:1991.03.10 1刷

評価★★★★☆

『バッドボーイ』ジム・トンプスン - 2019.10.13 Sun

トンプスン,ジム
バッドボーイ
『バッドボーイ』ジム・トンプスン(文遊社)

豪放な“爺”の人生訓(レッスン)、詐欺師の友人、喧噪のベルボーイ生活――ノワールの鬼才が若き日々を綴った、抱腹絶倒の自伝的小説。
従兄弟と仕掛けた壮大ないたずら、ネブラスカの“爺”の型破りな教育、独学で博識の父が辿った転落……ユニークな家族に囲まれて育った幼少期から、新聞社の雑用係、喜劇俳優、ベルボーイ、油井労働者など、職を転々とする青年期までの波乱万丈の日々。 トンプスンの創作の原点であり必読の書。(本書あらすじより)

本作はミステリではありません。トンプスンの自伝的小説なのです……が、あまりにその人生が波乱万丈すぎて、小説より面白いというヤバさ。事実は小説より奇なり、とはよく言ったもんですね。
作家というのは別に経験していないことでも小説に書けるわけですが、経験の幅が広ければそれだけ書けるものは変わるわけで、そしてトンプスンの小説はトンプスンにしか書けないんだと言うことがよく分かりました。小説そのもののようなトンプスンの前半生が題材となっています。

ただの人生のエピソード集なのに、とにかくりありとあらゆるキャラクター(尖った爺から陽気な詐欺師まで)、事件(従兄弟との発明から犯罪まで)、職業(20世紀前半のアメリカ見本市)が描かれるのです。これがたかだか20数年間分の自伝だってのが信じられない……。
比較的純朴だったジェイムズ少年がひねくれていく様を見る、という教養小説として読んでももちろん面白いのですが、アメリカの発展の歴史をたどる風俗小説として読んでも面白いんですよね。ベルボーイ時代のエピソードが異様に楽しいので、はやく『深夜のベルボーイ』を読んでみたいなぁ。

文遊社トンプスンはこれで6冊目なわけですが、これまでの5冊の集大成的なところもある一冊。トンプスン好きならもちろん楽しめるでしょうが、おそらく誰が読んでも楽しめる自伝小説なのではないでしょうか。ぜひ続編の翻訳をお願いしたい……めっちゃ良いところで終わるんですよこの『バッドボーイ』って本は……トンプスンらしいけれどもさぁ。
ちなみに装丁も最高。表紙がいつもの文遊社トンプスンとまたパターンを変えています。カバーを外した写真もよく、個人的には表紙めくったあとの青い紙も好きです。

原 題:Bad Boy (1953)
書 名:バッドボーイ
著 者:ジム・トンプスン Jim Thompson
訳 者:土屋晃
出版社:文遊社
出版年:2019.08.01 初版

評価★★★★☆

『殺人者の放物線』アンドレア・H ・ジャップ - 2019.10.05 Sat

ジャップ,アンドレア・H
殺人者の放物線
『殺人者の放物線』アンドレア・H ・ジャップ(創元推理文庫)

MIT出身の天才女性数学者グロリア・パーカー=シモンズ。彼女はFBIから連続殺人事件の数学的分析を依頼された。女性ばかりを狙うレディ・キラーと呼ばれる猟奇殺人犯の正体は? 極端なまでの秘密主義で、うちとけることのないのグロリア、離婚係争中のFBI捜査官キャグニー。ともに心に傷を負う二人が、謎の殺人者に挑む。毒物学者にして生化学博士、NASA等でキャリアを積んだ合衆国在住の異色のフランス女流作家登場!(本書あらすじより)

この『殺人者の放物線』というフランス・ミステリ、出版されたのが1996年で、翻訳されたのが2006年。正直色々と欠点は目立つし、別におすすめしようとも思わないのですが、タイミングが悪すぎたな、と。ルメートルブームの頃ならもっとどっかに引っかかったんじゃないかなと思うのですが。

アメリカが舞台、FBI捜査官が天才数学者と共に連続殺人鬼"レディ・キラー"を追う、という超王道っぽいシリアルキラーもの。ところが、読めばすぐに分かりますが、全くアメリカナイズされていないのです。めちゃくちゃとっちらかった、フランス・ミステリらしいフランス・ミステリなのであります。
FBI捜査官キャグニーは、犯人を追いつつも離婚の原因となった女性アンの幻影を追い求め(別に離婚自体に悩むとかそういうことはない)、部下の捜査官モリスは突如としてわき起こるストーカー行為を抑えられません。2人とも捜査官としてはまぁまぁ有能であり、捜査に身を入れているにもかかわらず、明らかに何か変なのです。みんな自由すぎる……。

更にヤバいのが主人公グロリア・パーカー=シモンズ。独自の計算式を用いてあらゆる問題を解決する天才数学者である彼女は、パソコンを駆使し、FBIにも見いだせなかった被害者の関係や手がかりを次々に見つけていくのです。ちなみになぜ見つけられるのかと言うと、余計な感情に身を任せずとにかくデータを見るから!です。データ大事。
いやいやどういう計算式だよ、とかそんな疑問を持ったあなた、よろしいですか、グロリアさんのヤバさはそれどころではないのです。彼女はついでに、計算とか関係なく単純に推理・推測も得意で、普通に他人の感情を見て取り行動も先読みし、時には相手の行動すら操り、おまけに天才ハッカーなのでFBIのデータにも侵入できるのです。なんでもありじゃねぇか。お前がシリアルキラーだよ。
これでも足りないとばかりに乗っかってくるのが、グロリアの姪である、知的障害を抱えるクレアにまつわる過去の秘密。どうやら何かあるっぽい……ということが、物語の当初からほのめかされてはいますが、ラスト数ページ、グロリアの真のヤバさが明かされてビビりました。こんなのがシリーズで6冊も出てるってすげぇ……現代ミステリだぁ……。

遅々として進まない捜査をよそに登場人物たちは各々の悩みに振り回されているわけですが、肝心の連続殺人鬼の捜査は意外とよく出来ています。めちゃくちゃ登場人物が多くなっていく中で、どうにか繋がりが見え、犯人に至る手がかりが予想外なところからぽんぽん飛び出していきます。
ぶっちゃけ色々雑なので、偶然にもほどがあるだろ!とか、あの手がかりの回収適当だな!とか、捜査の段取り悪いな!とか、やっぱ偶然にもほどがあるだろ!とか、まぁ思うところはあるのですが、犯人の正体とかには何だかんだ納得している自分がいます。というか、納得させられました。こんなん、フランス・ミステリだから許されるんだぜ。

というわけで、やっぱりおすすめするほどではないのですが、なんかこう言うのが読みたかった気がしないこともない……と最後の最後に思わされてしまったので、自分の完敗です。まぁ翻訳はこの1作品で止まってしまったんですけどね。別に意外でもないのですが、この後どう続いたのか若干気になるところではあります。

原 題:La Parabole du tueur (1996)
書 名:殺人者の放物線
著 者:アンドレア・H・ジャップ Andrea H. Japp
訳 者:藤田真利子
出版社:東京創元社
     創元推理文庫 Mシ-10-1
出版年:2006.08.31 初版

評価★★★☆☆

『休日はコーヒーショップで謎解きを』ロバート・ロプレスティ - 2019.10.03 Thu

ロプレスティ,ロバート
休日はコーヒーショップで謎解きを
『休日はコーヒーショップで謎解きを』ロバート・ロプレスティ(創元推理文庫)

拳銃を持って押し入ってきた男は、なぜ人質に“憎みあう三人の男”の物語を聞かせるのか? 意外な真相が光る「二人の男、一挺の銃」、殺人事件が起きたコーヒーハウスで、ツケをチャラにするため犯人探しを引き受けた詩人が、探偵として謎解きを繰り広げる黒い蘭中編賞受賞作「赤い封筒」。正統派推理短編や私立探偵小説等、短編の名手によるバラエティ豊かな9編をお贈りします。(本書あらすじより)

「ローズヴィルのピザショップ」The Roseville Way (2014)
「残酷」Brutal (2012)
「列車の通り道」Train Tracks (2018)
「共犯」The Accessory (2014)
「クロウの教訓」Crow's Lesson (2013)
「消防士を撃つ」Shooting at Firemen (2015)
「二人の男、一挺の銃」Two Men, One Gun (2013)
「宇宙の中心(センター・オブ・ザ・ユニバース) ——ワシントン州シアトル、フリーモント地区にて」The Center of the Universe (2009)
「赤い封筒」The Red Envelope (2013)

まさかの一日で読み切ってしまいました。面白かったぁ。
昨年、ミステリ作家シャンクスを主人公とした短編集『日曜の午後はミステリ作家とお茶を』で話題となった、ロバート・ロプレスティの第二短編集(日本オリジナル)。基本的にシャンクスシリーズと同様の軽妙さ、良い意味での軽さを持ったノンシリーズ短編集です(一部シリーズ物もあり)。
ツイストもりもり、みたいな作風ではありませんが、この気軽さはジャック・リッチーを思い出します……と思ったのですが、よくよく考えたらそこまで似てないんですよね。現代ではちょっと珍しいとすら言える、気持ちの良い作品集ではないでしょうか。軽さと暗さを両立させた作品を読めるのが良いんだよなぁ。

変則マフィアもの&田舎住民一致団結が楽しい「ローズヴィルのピザショップ」、シリアスな復讐譚からの着地点が見事な「列車の通り道」、読みにくさが一種の魅力であり急展開でも読ませる「宇宙の中心」、ばりばりネロ・ウルフ中編インスパイアの「赤い封筒」あたりが好き。中編「赤い封筒」は、うわっ100ページもある上に登場人物ごちゃごちゃしてて読みづらい、と思って読み始めたら、正統派謎解きもので、しかも結構読みやすかったので、この作者の長編も面白そうだなと感じました。

というわけで、これは本当におすすめ。シャンクスシリーズも良かったけど、こっちの短編集の方が好きだなぁ。継続して作品が紹介されることを期待します。

原 題:The Red Envelope and Other Stories (2012~2018)
書 名:休日はコーヒーショップで謎解きを
著 者:ロバート・ロプレスティ Robert Lopresti
訳 者:高山真由美
出版社:東京創元社
     創元推理文庫 Mロ-10-2
出版年:2019.08.09 初版

評価★★★★☆

『水底の骨』アーロン・エルキンズ - 2019.10.02 Wed

エルキンズ,アーロン
水底の骨
『水底の骨』アーロン・エルキンズ(ハヤカワ・ミステリ文庫)

十年前、ハワイで大牧場を経営するマグナスが失踪を遂げた。その遺骨が海の中から発見され、遺族の証言では当時のマグナスは殺し屋に命を狙われていたという。彼は逃亡の末にかわりはてた姿になったのか? 現地を訪れていた人類学教授ギデオンは調査を開始。当初、それはごく普通の骨に思えた。だが、やがてその骨の異常さが明らかになり、遺族の隠されていた秘密が露わに……スケルトン探偵をも惑わせる遺骨の正体は。(本書あらすじより)

いつものスケルトン探偵シリーズとは異なり、過去の事件のみを対象に、ひたすら推論を積み重ね、家族たちの嘘を暴く、というなかなか地味な作品。殺人が起きるのも、言っていいと思いますが、残り50ページくらいのところとかなり終盤。そのせいでむしろ黄金時代の本格味が増していて、シリーズ中でも比較的出来が良い方なのではないでしょうか。

シリーズキャラクーであるFBI捜査官ジョン・ロウの友人一家トーケルソン家に誘われ、ハワイにやってきた人類学教授ギデオン・オリヴァー。十年前に失踪した一家の主の骨が、海底に沈んだ飛行機から発見されたため、ギデオンがその骨を鑑定することに。しかしこの失踪事件に関して、トーケルソン一家全員が明らかに隠し事をしているようなのだが……。

いつもなら、骨が見つかり実は殺人でしたさて犯人は?という展開ですが、今回は十年前に一家の叔父が相次いで死んだ状況を読み解く、犯人探しというよりはホワットダニットが中心になっています。トーケルソン一家が隠し事をしていることが、最初から読者には明示されているのがポイント。家族の秘密を暴きつつ、徐々に事件の矛盾を見つけ出していく、というストーリーはなかなか楽しめます。
結局手がかりが後出しにも程があるので謎解きミステリとしてはかなり弱いのですが、400ページ安定して読めるんですよね。最後のおまけどんでん返しで、骨の鑑定をするギデオン・オリヴァーに対するあてつけのような真相が急に出てくるというのも逆に面白いです。

シリーズにもっと良い作品はありますが、比較的最近の作品の中では当たりなのではないでしょうか。たまにはスケルトン探偵が頭を殴られない or ピンチにならない話を読みたいと思っていたら(だってほぼ毎回だし……)、今回はそんなサスペンスすらなかったのが逆に好ましく感じられました。
ところでこのシリーズ、気付けば『暗い森』『断崖の骨』『古い骨』『呪い!』『洞窟の骨』『水底の骨』『葡萄園の骨』と7作も読んでいたんですね……。『氷の眠り』〜『楽園の骨』の1990年代の作品を全く読んでいないので、今後、また気が向いたら読んでみようかなぁ。

原 題:Where There's a Will (2005)
書 名:水底の骨
著 者:アーロン・エルキンズ Aaron Elkins
訳 者:嵯峨静江
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ文庫 299-7
出版年:2007.04.25 1刷

評価★★★★☆

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プロフィール

ヨッシー

Author:ヨッシー
クリスティ、デクスター、グライムズ、ディヴァインが好きな、ヨッシーことTYこと吉井富房を名乗る遅読の社会人3年目が、日々読み散らかした海外ミステリ(古典と現代が半々くらい)を紹介する趣味のブログです。ブログ開始から9年になりました。ちなみにブログ名は、某テンドーのカラフル怪獣とは全く関係ありません。
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水天一色 (1)
スカーレット,ロジャー (1)
スコット,ジャック・S (1)
スコット,J・M (1)
スタウト,レックス (6)
スタージョン,シオドア (1)
スチュアート,メアリー (2)
スティーヴンス,ロビン (1)
ステーマン,S=A (3)
スパーク,ミュリエル (1)
スペンサー,ロス・H (3)
スミス,シェイマス (1)
スミス,チャールズ・メリル (1)
スラデック,ジョン (1)
スルペツキ,シュテファン (1)
スレッサー,ヘンリイ (1)
スローン,ロビン (1)
スワンソン,ピーター (2)
セイヤーズ,ドロシー・L (8)
セシル,ヘンリイ (2)
セミョーノフ,ユリアン (1)
ソアレス,J (1)
ソウヤー,ロバート・J (1)
タ行 (97)
タイボ二世,パコ・イグナシオ (1)
ダグラス,キャロル・ネルソン (1)
タシュラー,ユーディト・W (1)
タートン,スチュアート (1)
ダニング,ジョン (1)
ダール,フレデリック (1)
チェスタトン,G・K (1)
チャータリス,レスリイ (1)
チャンドラー,レイモンド (1)
陳浩基 (3)
デ・サンティス,パブロ (1)
デ・ハートック,ヤン (1)
デ・ミュリエル,オスカル (1)
デアンドリア,ウィリアム・L (1)
テイ,ジョセフィン (3)
ディーヴァー,ジェフリー (2)
ディヴァイン,D・M (10)
デイヴィス,L・P (1)
ディキンスン,ピーター (2)
ディケール,ジョエル (1)
ディケンズ,チャールズ (11)
ディックス,マシュー (2)
ディッシュ,トーマス・M (1)
ディドロ,フランシス (1)
デイリー,エリザベス (1)
テオリン,ヨハン (3)
デクスター,コリン (12)
デュレンマット,フリードリヒ (1)
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トゥロー,スコット (2)
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トレヴェニアン (4)
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ナ行 (13)
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パーカー,ロバート・B (1)
ハーカウェイ,ニック (1)
バークリー,アントニイ(アイルズ,フランシス) (6)
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