夜勤刑事
『夜勤刑事』マイクル・Z・リューイン(ハヤカワ・ミステリ文庫)

若い女性が指を潰され、絞殺されるという事件が相次いで起きた。捜査にあたったインディアナポリス市警のパウダー警部補は、ふたつの殺人の関連を追い始める。その矢先、女子学生が謎の失踪を遂げた。錯綜する事件の裏にはいったい何が?都会の夜を守る辣腕刑事パウダー登場。現代ハードボイルドの雄が、私立探偵サムスンを脇役に配し、怒り、迷い、恋に悩む男の姿を描く傑作警察小説。パウダー警部補シリーズ第一弾。(本書あらすじより)

さて、リューインのサムスン物と並ぶ人気シリーズ、パウダー警部補物です。

ざっくりした印象ですが、これは事件がどうこうとかもはやどうでもよくて、「パウダー警部補」という人間の生き様を楽しむための物語なのかな、と。彼のダサかっこよさを堪能出来ればそれで良いのです。そういう意味では、サムスン物と比べてはるかにキャラ萌え小説なのかもしれません。

警察組織を描くモジュラー型のある種の弱点は、その小説の内容はその組織の日常業務の一場面を切り取ったものに過ぎず、なんら特別性がない、ということではないかと思います。どこから読んでもどこで中断しても問題ない。つまり、序盤、読者を引っ張るのがやや難しいのです。
さらに、このパウダー警部補が、最初読者に取っ付きにくいキャラクターなんですね。フロスト警部とモース警部の悪いとこだけ取り出して協調性をゼロにしたみたいな(?)。みんな大好きアルバート・サムスンは、登場するやいなやパウダーにぶちのめされるし。こいつは何なんだ、と強く感じざるを得ません。

というわけで、つかみはちょっと弱い。

ところが、読み進めるに従い、パウダーがただの短気なオッサンではないことが分かってきます。切れ者で周りに合わせられない、根はいい人であるようなないような、短気なオッサンなのです(笑) それにともない、読者はパウダーの一挙一動を興味津々で追うことになるわけですよ。事件とかもうどうでもいい。

……と思えたら、もう文句なしに楽しめるのではないかなぁと。自分はとっても面白く感じました。いやプロットもすごくいいのですよ。二つの事件が結び付く(っぽい)とことか上手いし、案外伏線がキレイに張られているし。
終盤は駆け足で、なんかなあなあで終わった感もあるにはあります。が、そのなあなあさが逆に魅力的に思えてしまうのですね。これはたぶん、あの刑事に出したパウダーの指示が、宙ぶらりんなままだからじゃないでしょうか。結局、なあなあなもんなんですよ、捜査ってもんは(適当にまとめた)。リューインは意図的に、捜査の一部分を抜き出したかのような描き方をしたのではないでしょうか。故に、最後がやや尻切れトンボになるのも当然なのです。

なんかあまりハッキリした感想が書けないのですが、まぁ今のところは、サムスンの方が好きかなぁ。ちょっと癖が強いですね。リューインは作品数が少ないので、今年もちょっとずつ読み進めたいです。とりあえずシリーズ物中心で。


書 名:夜勤刑事(1976)
著 者:マイクル・Z・リューイン
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ミステリ文庫 165-6
出版年:1995.2.15 1刷

評価★★★★☆
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九時から五時までの男
『九時から五時までの男』スタンリイ・エリン(ハヤカワ・ミステリ文庫)

サラリーマン同様にスーツ姿で9時から5時まで勤めるキースラー氏には、妻にも言えない秘密がある。いつものように仕事先に赴いた彼はおもむろに手袋をはめ、用意した包帯をガソリンに浸していった……氏の危険で魅惑的な仕事ぶりを描いた表題作ほか、高齢化社会の恐るべき解決法を提示した「ブレッシントン計画」、死刑執行人が跡継ぎ息子に仕事の心得を伝える「倅の質問」など、奇妙な味の名手が綴る傑作揃いの全10篇。(本書あらすじより)

久々のエリンです。
この間、とある人が、「奇妙な味というのは江戸川乱歩が名付けたわけだけど、あれはつまりブラックユーモアのことであって、単にユーモアセンスのなかった乱歩が全然笑えないけどこれは何だろうと思って新たにジャンルを作っただけじゃないの」と言っていて、なるほどなぁと心底納得しました。奇妙な味=ブラックユーモア、そりゃそうですね。そういや早川書房から「ブラック・ユーモア選集」が出たのって、乱歩の死の5年後、1970年でした。ほんでもって「異色作家短編集」は1960年。意味深ですねぇ。

なんて御託は置いておいて。

やっぱりエリンの短編集の安定感は素晴らしいですね。大傑作が連発されるわけではないですが、どれもきちんと記憶に残るような高水準の作品。2日間、至福の時間を過ごさせてもらいました。全体的にちょっと考えるようなオチが多かったかな。
エリンの短編はいやらしい話を扱っていてもいやらしくないのが特徴かもしれません。うぇっとさせるのではなくニヤッとさせてしまう。淡々とした語り口がそれを可能にしているのでしょうが、このさじ加減はやろうと思って真似できるものではないんですよねぇ。これが例えばパトQだと、たぶんこの上なくいやらしくなるんだろうに(たぶん)。

ベストは……うぅん、難しいけど、こういうのも書くんだ!という驚きもあった「不当な疑惑」で。皆さん知っての通り基本心臓弱いので、自分。次点が「九時から五時までの男」「ブレッシントン計画」「倅の質問」かな。きっと人によってベストが大きく異なるだろうと思います。「ロバート」とか。
あ、あと、この文庫版の表紙、非常に良いですね。白黒絵に茶色の字。ぼやっとした感じがなんかピッタリ。

以下、個別の感想を。

「ブレッシントン計画」(1956)
老齢学協会を名乗るものの訪問を受けたトリードウェル氏のお話。物語自体が突拍子ないながらも妙な説得力があります。それだけでも十分面白いのに、オチが何とも言えず皮肉でニヤニヤが止まりません。必要最小限の語りが見せる短編の魅力。MWA最優秀短編賞を取るだけはあるのです。

「神様の思し召し」(1957)
奇跡を起こす男を無条件に信じる者の話。えぇっ、そこで話を終わらせちゃうの?と感じました。これはひょっとして一種のリドル・ストーリーなのかな?いや、確かに結末は見えているんだけど、ほのめかしに留まっているのがこの短編の上手さだよなぁ、と思います。

「いつまでもねんねえじゃいられない」(1958)
自宅で暴漢に襲われた箱入り娘の話。他と比べて長く50ページほどあり、なおかつ訳のせいで最初が読みにくいように思いました。どんでん返しを狙ったせいか、いろいろなエピソードを入れたりして、結果的に長くなってしまったような印象を受けます。楽しめたけど、やや冗長かな。

「ロバート」(1958)
品行方正な11歳ロバート少年と、58歳のオールドミス教師の話。この短編集の中で一二を争うイヤらしい話で、さっぱり目の残酷さが強烈。無垢っぽい少年が出る短編って苦手なんだよな……。個人的には好きではありませんは、エリン節が遺憾なく発揮された傑作であることは間違いないでしょう。好きな人は多いと思います。

「不当な疑惑」(1958)
電車の中で耳にした、隣席の弁護士が語る奇妙な物語。これはもう爆笑物。エリンってこんなのも書けるのかー、すごい。こんなオチで許されるのかという気もしますが、まぁやったもん勝ちですしね。毒味がなく読みやすい作品。皮肉さが抑え目で捻りが楽しめるとことか、リッチーの短編っぽいかもしれません。

「運命の日」(1959)
少年二人が体験した、幼き日の思い出とは。オチよりも、登場人物の心情で読ませる話。捻りこそないものの、ある種淡白な残酷さがちらちらと現れており、何とも言えないやり切れなさが残ります。それなのにどことなく叙情性が感じられるとはエリンさん天才ですか。そんなに好きではないんですけどね。

「蚤をたずねて」
蚤のサーカスをしていた男が語る物語。冒頭で「私」が騙されやすいと言っていて、それでこのラストのセリフでしょ。いやぁ上手いよなぁ。これぞ短編の「オチ」って感じです。他愛ないといえばそれまでですが、それをキッチリ仕上げてくるのがプロのお仕事。エリンの短編は本当に多彩です。

「七つの大徳」(1960)
ある会社が成功した理由は、その会社独特のモットーにあるらしい、それは一体……。途中までは文句なしの面白さなんですが……えぇと、このオチどういうことなんでしょう。分かる方、誰でもいいので教えてくれませんか……。必要最小限の語り口のせいで今度は自分の頭がついていけない……。
……と言っていたら、メルアドをnine to fiveにしてしまうほどエリンが好きなワセミスのある人から解釈を教えてもらいました。おぉ、なるほど。ネタバレなので、追記に記します。

「九時から五時までの男」(1961)
一見何の妙なところのないサラリーマンの日常。冒頭が、エリンかよっってくらい普通の小説っぽいのです。ところが男の仕事はどうも普通じゃない。で、ラストまた日常に戻るのですが。
これは、この語り口だからこそ傑作なんですよ。一切無駄なく、男の一日を全て描けてしまうところがすごいのです。特に、倉庫での行動が淡々と語られる様。ありゃあもはや芸術ですね。柔らかくはないけど尖ってもいない筆致が十二分に生かされた傑作。オチが、些細ながらもまたねぇ、やっぱりニヤッとしてしまうんだなぁ。

「伜の質問」(1962)
電気椅子係を副業にする男とその息子の話。これもまたオチが素晴らしいですね。それまでの語りの印象がくるっと一転してしまう、そのやり方が実に説明不足で、かっこいいんだなぁ。読者とエリンの対話が、ブラックユーモアでもって行われます。お見事。

書 名:九時から五時までの男(1964)
著 者:スタンリイ・エリン
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ミステリ文庫 36-5
出版年:2003.12.31 1刷

評価★★★★☆



[追記あり]
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八百万の死にざま
『八百万の死にざま』ローレンス・ブロック(ポケミス)

アームストロングの店に彼女が入ってきた。キムというコールガールで、足を洗いたいので、代わりにヒモと話をつけてくれないかというのだった。わたしが会ってみると、その男は意外にも優雅な物腰の教養もある黒人で、あっさりとキムの願いを受け入れてくれた。だが、その直後、キムがめった切りにされて殺されているのが見つかった。容疑のかかるヒモの男から、わたしは真犯人探しを依頼されるが……。マンハッタンのアル中探偵マット・スカダー登場。大都会の感傷と虚無を鮮やかな筆致で浮かび上がらせ、私立探偵小説大賞を受賞した話題の大作。(本書文庫版あらすじより)

ポケミス版の画像が見つからなかったので、やむなく文庫版の画像です。ぐむむ。
さて、ブロックは過去に泥棒バーニーと短編集1つを読んでいるのですが、マット・スカダーものは初。まぁねぇ、自分、ハードボイルドは全く読まずに来ましたからねぇ。ちなみにこれもハードボイルド読書会の課題本です。

うん、なるほど、やはり名作と言われるだけはあります。面白いですね。どことなく詩的な印象を受ける文章に引き込まれるのです。というか、事件の真相やスカダーのアル中がどうとかより、ただただ文章を楽しみました。でも、こういっちゃなんですが、やっぱり自分は、ハードボイルドを、面白いとは思えても、好んで読みたくなるほど好きではないのかなぁとつくづく思わせられた本でもありました。

スカダーが捜査を続けるのが、いろいろ感情があるとはいえ、第一に依頼を受けているから、というのはなかなか興味深いように思います。というのも、今まで読んだハードボイルドが、依頼人関係なく探偵が突っ走るとか、依頼人があっても最終的に突っ走る、とかが多かったように思うのです。マットと依頼人とのつかず離れずの関係がとっても良いんです。最終的には、依頼人チャンスがケチつけられないほど完璧な人格であるようにすら思えます(あれ、そういや何でキムは彼を怖がったんだっけ)。
このスカダーの心情は、どの程度描かれているんでしょうかねぇ。意外とぼんやりしているように思うのですが。ひょっとして、サムスン>マーロウ>スカダー>スペード>アーチャー……?いや適当言ってるだけなので突っ込まないで。

あと、かなり分量的には多めで、単調という意見も頷けなくもないですが、それでも展開的には意外と無駄がないのは良いですね。いや無駄な会話とかはいっぱいあるんですが、これは雰囲気作りとしては必須かな、と。一週間くらいかけてじっくり読みたい作品、という印象を受けました。だから急いで読んだのはちょっともったいなかったかな。

ラストの有名なセリフ、というか翻訳、確かにこれは名訳。何でか分からないけど泣けます。必要最小限の語数で、ラストを締めくくった、という印象がありますね。お見事でした。
……という、当たり障りのない感想です。つまらなくはないけど、他の作品まで読む気にはならなかった、というのが正直な感想。ハードボイルドって、いくら布教したい人がいても、それこそ本格ミステリとかと同じで、好みなんだよなぁ。って当たり前か。

書 名:八百万の死にざま(1982)
著 者:ローレンス・ブロック
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1431
出版年:1984.4.30 1刷
    1984.12.31 2版

評価★★★★☆
スチームオペラ
『スチームオペラ 蒸気都市探偵譚』芦辺拓(東京創元社)

毎朝配達される幻灯新聞が食卓に話題を提供し、港にはエーテル推進機を備えた空中船が着水・停泊。歯車仕掛けの蒸気辻馬車が街路を疾駆する――ここは蒸気を動力源とした偉大なる科学都市。進路に頭を悩ませる女学生エマ・ハートリーは、長旅から帰還した父を迎えに港への道を急いでいた。父が船長をつとめる空中船“極光号”の船内で不思議な少年・ユージンに遭遇したエマは、ひょんなことから彼と共に名探偵ムーリエに弟子入りし、都市で起きる奇妙な事件の調査に携わることになる。蒸気機関都市を舞台に贈る、少年少女の空想科学探偵譚。(本書あらすじより)

初・芦辺拓。なにこれめっちゃおもしれぇ!!
うちのサークルは、この本を『このミス』『本ミス』投票で1位に推したんですが、まぁ他にはそんな人はどこにもいなく、んじゃあ自分もいっちょ読んでみようかと手に取ってみたわけですよ。
蒸気だらけのドリームワールド、続発する不可能犯罪、ホームズもどきの名探偵、ガールミーツボーイ、徐々にあらわになっていく陰謀、アッと驚く意外な真相、SF設定ながらの本格ミステリ……などなど。そりゃもう面白いに決まってるじゃないですかー。とにっかく楽しいのです。ワクワクが止まりません。終盤の好き嫌いはともかく、読んでいて退屈しない世界を作り上げることに成功した佳作だと思います。これはいいねぇ。

先程「終盤の好き嫌いはともかく」と書きましたが、これはもう好みとしか言い様がないでしょうね。ネタバレになるので言いにくいのですが、ある種物語の楽しさを減じてしまいかねない真相ではあります。個人的には、割合早めに明かしていたことでもあるし、これはこれで良いんじゃないかな、と。
あと、ラストの某ネタについては蛇足という意見が多いようですが、確かにあれはなくても問題ないですねぇ。ぶっちゃけいらないでしょう(ちなみに初芦辺拓なのでアレはググらないと分からなかったです笑)。あの部分を何とかして、ほんでもって英訳してイギリスに紹介してみたらどうなるのかなぁというのが目下気になっていることです。結構反応良いんじゃないんでしょうか。

いくつか気になった点を。まず雑誌連載という形態上仕方のないことではあるのですが、やはり単行本にする際に、前章のあらすじを無くすとか、そのへんはスッキリさせて欲しかったです。これをちゃんとやっている作品とやっていない作品では、かなり読み心地が違うもんですよ(ちなみに雑誌連載のままポーンと単行本にまとめてしまったもうダメダメなパターンとして、なんだかやたらと世評の高い歴史小説、童門冬二『上杉鷹山』をあげたいです、個人的に)。
それと、もう少し日本語能力を磨いて欲しいなぁと。ほんとに。修飾語のかけ方がワケわからないとか、一文が長すぎて頭に意味が入って来ないとか(決して長いのが問題なのではなく、長い文章での主語の使い方とかがあんまり上手くないのです)、出来れば直して欲しいです。……と言ったら、そんなこと言ってると最近の国内ミステリ読めないぞ、と言われました。そ、そうですか。

まぁ、とにかく、とっても楽しめたので、総合的には非常に良かったですね。これを機に、スチームパンク小説を、いやこの作品ははっきり言ってそうじゃないのですが、読んでみたいですね。最近のハヤカワSFシリーズから出ているやつとか。

書 名:スチームオペラ 蒸気都市探偵譚(2010~2012)
著 者:芦辺拓
出版社:東京創元社
出版年:2012.9.25 初版

評価★★★★☆
学園島の殺人
『学園島の殺人』山口芳宏(講談社NOVELS)

島の秘密を探ろうとする者は、黒いサンタクロースに殺される――全寮制の学園の島を襲ったのは、生首の入った袋を背負って夜な夜な徘徊する謎の男だった!島に伝わる『再生の書』、来日する王女が持つ『浄化の鍵』、魔界から来たという謎の無人列車、陰謀渦巻く廃墟地帯、そして次々と起きる首切り殺人――学園を救うため、学生探偵・真野原が島の謎に挑む。(本書あらすじより)

えー、なぜいきなりこんなものを読み始めたのかというと、再びゲスい理由であれですが、まぁ表紙を見て決めたと言えなくもないです(笑)。ま、息抜きです。

さて、『学園島の殺人』、何でもこの作者の作品、作品の繋がりが結構あるようで、ここから読み出したのは正直どうかなという気もするのですが、まぁ別に問題なかったので、構わないでしょう。

感想ですが……んーーーー、なんでしょうね、この絶妙に微妙な感じ。エンタメとして面白い要素をこれでもかと詰め込んでいるのに、それらを生かしきれていないのが実にもったいないです。詰め込みまくった結果ちゃんと長さが600ページもあるくせに、何でこんなに中途半端感漂うのでしょうか。うむむ。

同じサークルの人が書いた感想をちょっと引用しますと、


学園を基盤とした孤島とか瞬間移動する生首とか萌え萌えする要素とか冷凍庫に女の子と閉じ込められたり水没する部屋から脱出したり島にまつわる因習だったりあとお風呂場のぞいたりまぁなんか全体的に萌え萌えなんだけどなんだかこう全然ぼやーっとしててなにがなんやら分らない感 アイデアの詰め込み方とかそれはねーよwwwwww的な物理トリックとかすごい北山を感じるけど北山と一緒で見せ場の作り方に難がある感じ 好き勝手やってるのに破天荒な感じがしないのはもったいない



……うん、これに付け加えることは特にないですねー。特に「見せ場の作り方に難がある感じ 好き勝手やってるのに破天荒な感じがしないのはもったいない」というところ。
この作者のスピード感というのがどうにも謎で、事件が起こるまでをやったら細かく描くくせに、事件発生後はとんでもなくあっさり目にしてしまうんですよね。病院に潜入して証言を頼んだ人のその後とか、地の文2、3行で終わらせちゃうとかどーなんですか。
あと終盤でラスボスというか、探偵役の因縁の敵役みたいのが登場するんですけど、たぶんこの作品から入った人はポカーンとなりますよね(お祖父さんとかそんな設定いきなり出てきても他の作品知らないからびっくりでした)。最後に急に畳み掛けてくるもんだから。ここも、いくらこれから読んだ自分が悪いとは言え、やはり唐突すぎやしないかと。

ちなみに、ユーモアに関しては悪くはなかったです。たまに出てくる「集英社ネタで大丈夫か?」みたいなメタっぽいのとか超好きです。しょうもないギャグで一回クスクス笑いを抑えきれなくなった気がするけど何だったかはもう忘れました。
ただし、死ぬほどくだらないギャグを言った時に、登場人物に「くだらない……」と言わせて予防線を張るのはやっぱりずるいですよー。作者がそのギャグを気に入っているっぽいだけになおさら。もっと自信を持ってください(実際8割くらいのギャグは全然笑えなかったけどまぁそれはそれで)。

あと、この本を読む動機となった表紙ですが(笑)。女の子は確かに可愛かったんですが、表紙の場面はぶっちゃけあっさり気味で、それよかその後の冷蔵室に閉じ込められるシーンの方がはるかに面白かったです。二人の関係をこれだけ思わせぶりに書いといてほったらかしとはいかがなものかと!読者に対して不親切ではなかろーかと!(混乱)


えー(ゴホン)、ま、とにかく、もうちょっと完成度を高めて欲しいかなぁというところです。楽しめましたが、強いておすすめしたい作品ではないかな。

書 名:学園島の殺人(2010)
著 者:山口芳宏
出版社:講談社
    講談社NOVELS
出版年:2010.2.4 1刷

評価★★★☆☆
ハニー誘拐事件を追う
『ハニー誘拐事件を追う』G・G・フィックリング(ポケミス)

全男性の夢の恋人――女性には羨望のまなざしを浴びる美貌の私立探偵ハニー・ウェスト!巨大な乳房とヒップをなびかせ、いったんことあれば、ジュードーの極意で相手をなぎ倒し、マイク・ハマーのような拳銃さばきをみせるハニー再び登場!誘拐事件を追って暗黒街に挑戦する女探偵ハニー・ウェスト・シリーズ第3弾。(本書あらすじより)

いきなりゲスいミステリです(笑)
女探偵ハニー・ウェストシリーズで有名なフィックリングは、夫婦の共作ペンネームなんですよね。こういうお色気物を夫婦で、つまり女性が書いている、というのはちょっと珍しいというか、面白いなぁと思います。ハニー・ウェストがかなりしっかりした女探偵であるのは、やはりその影響なのでしょうか。
さて、この読んであらすじの如しお色気ハードボイルドシリーズ、初めて読んでみましたが、ただの色物ではありませんでした。ミステリ的意外性と、お色気アクション冒険が合わさった、非常に楽しいエンタメミステリ。こりゃ面白いです。

深夜、事務所にいたハニーは、突然ピストルを突き付けられ、海兵隊員の服を着せられる。おまけにつれていかれた先では銃撃戦に巻き込まれてしまう。命からがら逃れたハニーは、自分とそっくりの容姿の女性がいることを知る。ハニーがショットガンから逃げ回っていたのと同時刻、はるか遠くの病院で、そっくりさんは生まれたばかりの大富豪の赤ちゃんを誘拐していた。しかもその病院では同じ頃、(全く関係ない)赤ちゃんを生んだばかりの母親が殺害されていたのだ。ハニーは赤ちゃんを取り戻すべく南へ向かうが……。

と、この意味不明のへったくそなあらすじから分かる通り、事件が非常に込み入っています。さらにはそのそっくりさんを殺そうとする謎の集団やら、妻を殺された旦那やら、大富豪に恨みを持つカジノのオーナー(だっけ?)やらが入り乱れ、ぐっちゃぐちゃ。
話は基本的に、ハニーと妻を殺された旦那の二人による誘拐犯人追跡がメインとなっています。追っかけながら、この込み入った事件の手がかりがだんだんと集まって来るのですね。事件の中心はどうもそっくりさんにあるようなのですが……。ドタバタ追跡劇ながら、案外情報の出し方が上手く、ハードボイルドながらきっちり謎解きをしている感じです。
この誘拐事件の謎を解いたハニーは、探偵らしく、徐々に事件の全貌を説明していくのです。これがまたゆっくりなんですが、そうでもしないと読者の理解が追いつかないくらい込み入っているんですよ。伏線的にはともかく、かなり意外な真相が最後に示されます。そっくりさんや二人の赤ちゃんが結構綺麗に使われ、まぁそりゃ期待値が低かったからというのもありますが、感心してしまいました。

もちろん、お色気を忘れてはいけません(笑)。ハニーは冒頭で脱がされ、シャワーを浴びて石鹸まみれのとこを襲われ、小屋の中で男に押し倒され、裸と変わらないようなローカットドレスを着てあげくプールに落ちたりしながら、ドンパチやります。これでもか、と言わんばかりのサービスシーンですが、さすがに1950年代モラルというか、あっさり目っちゃあっさり目で、エロいというよりは、単なるドタバタかな。バトルシーンは案外多かったように思います。

やや中盤の追跡劇がだれますが、基本的にアクションとユーモアで読者を引っ張っていくので十分読める作品です。娯楽小説に求める要素がテンコ盛り。こりゃあ当時(1958年)売れまくるわけですねぇ。今読むとやや古臭いし、男性優位な社会観が出てしまってはいますが、ちゃんと面白いですよ。
ちなみにハニー・ウェストはカーター・ブラウンのメイヴィス・セドリッツと並んで語られることが多いみたいですが、頭が空っぽでお色気しか武器に出来ないセドリッツと比べ、ハニーはちゃんとした優秀な探偵です。まぁフェミニストから見ればどっちも全否定なんだろうなぁ。

書 名:ハニー誘拐事件を追う(1958)
著 者:G・G・フィックリング
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ポケット・ミステリ 930
出版年:1966.3.31 1刷

評価★★★★☆
世界探偵小説全集11 E・D・ビガーズ篇
『別册宝石 第8巻2号 通巻45号 世界探偵小説全集11/E・D・ビガーズ篇』E・D・ビガーズ(別册宝石)

「あと5年は積みかねない読まなそうな積ん読崩し5人斬り」第五弾、おぉ、とうとうラストですよ。この本はね、とんでもなくボロいんですよ。というわけで、全く手に取りそうになかったので、選んだ次第です。

アメリカの黄金時代を代表する作家、E・D・ビガーズの長編が、なんと恐ろしいことに3つ入っています。3つですよ、3つ。どれだけ抄訳なのかと。
ざっくり感想を言うと、チャーリー・チャン警部物の『鍵のない家』は傑作、同じくチャン物『黒い駱駝』も良作です。この2作は完訳でぜひ読みたいですね。逆に、ノンシリーズ『五十本の蝋燭』は読む必要は一切なし、といったところでしょうか。

いやぁ、しかし、ビガーズはいいですね。チャーリー・チャン警部物、今のところハズレ無しなので、ぜひぜひ全部読みたいところ。とりあえず『チャーリー・チャン最後の事件』を読んで、そんでもって『シナの鸚鵡』を……手に入れるところから……(絶望的)

以下、個別の感想です。

「鍵のない家」(1925)
ジョン・クインシイ・ウィンタスリツプは、伯母を連れ戻しにはるばるボストンからハワイへ渡った。だが上陸直前、島では彼の親戚の資産家が殺されていたのだ。容疑者として拘留された男の娘(かわいい)のために、ジョンは地元の警部チャーリー張と共に事件解決のため奔走する。

チャーリー・チャンのデビュー長編です。
なんじゃこら、面白過ぎるでしょう。傑作と言っちゃって良いのでは。少なくとも今でも十分読めるレベルの作品なのは間違いないです……だからどこか完訳版を出して下さい頼んます頼んます。

フーダニット的な面白さはもちろんですが、それ以前にハワイのまったりとした雰囲気や、あらゆる人種が入り乱れた世界、それを背景とする事件に引き込まれます。三股をかける主人公、男まさりの伯母さん、魅力的な女の子、そして何よりチャーリー張警部。いっやぁ楽しいですね。
程よくユーモアを交えながら生き生きとハワイを描いていくビガーズは本当に上手いです。ラストとか超かっこいいですよ。これだけしっかりとした、なおかつ楽しいミステリが1925年のアメリカで書かれたというのは、よく考えたらすごいことじゃないでしょうか。

ちなみにミステリ的側面ですが、ハウダニットっぽい点での意外性はそれほどでもないんです。が、あまり明示されてはいませんが、手掛かりはちゃあんと出ているんですよ。しかもこれがトリックと犯人特定の伏線として綺麗に生きて来るのです。まぁ本格とかどうでもいいですけどね!ホノルルを楽しめれば十分ではないかと!


「五十本の蝋燭」(1926)
ある屋敷の旦那様が殺される。誕生日パーティーの前だったためケーキがあったが、その場には蝋燭が50本。しかし旦那様は50歳ではなかった。果たしてこれはいったい誰を祝うためのものだったのか?……みたいな話でした、たしか。

あまりに極端な抄訳らしいので、一概に判断を下すことは出来ませんが、まぁしかしこれは読まなくてもいいんじゃないでしょうか。わりかしお粗末な一品。変にトリックとか入れなくてよかったのに。あと恋愛パートもちょっと雑かな。全体として魅力を感じられませんでした。


「黒い駱駝」(1929)
ハリウッドで活躍する女優シーラ・フェーンが、撮影のためハワイに来た。船上で大富豪に結婚を申し込まれた彼女は、ある過去のせいでそれを素直に受け入れられず、相談するため占い師をアメリカから呼び寄せる。さらに監督や俳優が続々と集結。ついにシーラ主催のパーティで事件が……。

チャーリー・チャン物の第4長編ですが、抄訳なので100ページほど。これまた非常に面白かったので、『鍵のない家』ともどもぜひ復刊していただきたいですね。いやホントお願いします。お願いです。どうかどうか。きっとその年の本ミス10位には入ります。
この事件、手がかりの数が異様に多いんですよ。壊れた腕時計やら消えた宝石やら各人のアリバイやら切り抜かれた新聞紙やら手紙やら各種目撃証言やらがやったら出てくるのです。前半はそれらがポイポイ出てくるばかりでやや退屈ですが、後半それらが一つ一つ解かれていく様が抜群に上手く、面白いですね。
抄訳であるため何とも言えませんが、やはり犯人特定の証拠はいささか物足りないように感じられます。しかし、終盤の二転三転する展開にかなり驚けるので、まぁいっか、と許せてしまうのですね。チャンが犯人をあぶり出すためある罠をしかけるシーンとか、じらし具合が絶妙でむちゃくちゃ面白いじゃありませんか。やっぱりビガーズは読者を分かってますねぇ。

ハワイが舞台であることの何がいいって、アメリカからの観光客の素性がはっきりしないことでしょうね。いわゆるアイデンティティ偽装が非常に効果的に働くのです。犯人が、自分の正体を隠そうと細工をしようと思えばいくらでも出来てしまうわけですよ。
もちろん限界はあるのですが、ビガーズはちゃんとその限界をわきまえているので、登場人物の行動に「なにやってんだ……」的不自然さは生じません。実に合理的なのです。結果、限られた容疑者の中で、怪しさをバランスよく振り分けることができてしまうというわけ。いやぁ面白かったです。

ちなみにチャン警部は名探偵です。大抵の読者より先を推理しているので、読者の先読み推理は基本的に負けます。たまにクラシックミステリで「いや、それはこうでしょ気付けよアホか、くそっ探偵がドヤ顔で推理し始めたもう分かってんだようざっ」となることがありますが、ビガーズはそういうことはほとんどないですね。


書 名:別册宝石 第8巻2号 通巻45号 世界探偵小説全集11/E・D・ビガーズ篇
著 者:E・D・ビガーズ
出版社:岩谷書店
    別册宝石 45号
出版年:1955.2.10 1刷

評価★★★★☆
悲しみにさよなら
『悲しみにさよなら』ナンシー・ピカード(ハヤカワ・ミステリ文庫)

いまさら何をしても母は帰ってこない。精神を病んで入院していた母は、ついに回復することなく亡くなった。それにしても何が病気の引金になったのだろう?わたしは長年心にわだかまっていた疑問を探り始めるが、誰も当時の事情を話してはくれない。そんな折り、わたしのもとに脅迫めいた手紙が届き、何者かに命を狙われることに……アガサ賞、マカヴィティ賞の最優秀長編賞を受賞したジェニー・ケイン・シリーズ代表作。(本書あらすじより)

えぇー、新年早々、ブログほったらかしにしていてすみませんでした。更新再開します。
さて、「あと5年は積みかねない読まなそうな積ん読崩し5人斬り」第四弾、ナンシー・ピカード『悲しみにさよなら』です。初ピカード。まぁ、有名な作家ですよね。一昔前に出た奴がブックオフにずらっと。女性向けという印象が強いですが。
数々の賞を受賞しているわけですからね、この作品は。期待して読んだわけですよ。はい。読んだんですよ、期待して。

……うげぇ、もう全然合わない……。賞取りまくっていて5刷だからさぞかし人気なはずなのにこりゃダメです。買ったのではなく貰い物だったのが救いというか……。

以下、かなり愚痴るので、先に誤っておきます。ごめんなさい。

あんまり詳しくないのでよく知らないのですが、これがいわゆる昔のコージーであるにせよ3Fミステリ(私立探偵じゃなきゃダメなんだっけ)であるにせよ、うぅん、ちょっとこれは苦手と言わざるを得ないです。日米の女性はこの主人公に共感出来たんだろうか……分からん……。

主人公である私、ジェニーの母親が、精神病を長く患ったあげく亡くなった。葬式にあらわれた不審な人物。母親はなぜ精神病となったのだろうか?調べていくにつれ、彼女の家族の隠された秘密が徐々に明らかに……。
ちなみにこれはシリーズ物で、ジェニーは毎作どんどん年をとっているようです(今作では34歳だっけ)。あいにく初ピカードなもので、これまでの彼女の活躍やら何やらは知らないのですが、登場人物の中にはいくつか作品をまたいで出てくる人もいるみたいですね。とはいえ、ここから読んで(あくまで内容的には)問題ありません。

あらすじから大体想像つくように、ジェニーが調べれば調べるほど、知りたくもない家族の真実・彼女と親しくしていた人々の隠していた秘密が明らかになっていく、という展開です。それでも彼女は猛々しく立ち向かい、母親のことを知ろうとするのですよ。割となりふり構わず。ここまでグイグイ行くのは確かにかっこいいです。
じゃ、何が気に入らなかったのかというと……いやもう、正直ね、自分はジェニーが最初から最後まで気に食わなかったのです。何でこの人、こんなにヒステリックで自分勝手で向こう見ずで皮肉屋で悪口ばかりで相手の言葉を素直に受け取れずイライラカリカリし続けてるの。読んでて疲れちゃうし、共感出来なかったんですけど……。
作中でジェニーが「皮肉は苦痛にたいする最大の防御だった」と言っていますが、まさにそれがジェニーを表しています(いささか言い訳っぽい気もするけど)。とにっかく皮肉。親切にしてくれる人に対してすら嫌味を言うのです。皮肉ってか、なんかずっとキレっぱなし。ちょおっとついていけなかったなぁ。

まぁね、所詮自分は男なので、ジェニーに共感出来なかったのかもしれません。少なくとも女性読者であればだいぶ感じ方は違うんだろうなぁと思います。ラストのジェニーの独り言は、それこそ全女性を代表して言っているような節はあるし(とこうやって男だの女だのいうのはあんまり良くないんですけど)。

主人公以外の点については、まぁこんなものかな、というところ。中盤がややだれて、終盤はかなりぐしゃっとまとめた感はなきにしもあらずですが、そこまで悪いとは思いません。ただし、いわゆる「真犯人」を期待してミステリ的面白さを主眼に読めるものではないですよ、もちろん。どちらかといえばハードボイルドですし。

ということで、これといって気に入った要素が全然ないのでした。ピカードファンの皆様、ごめんなさい。
ちなみに、このシリーズ、おそらく相当なイチャミスだと思われます。この作品ではジェニーは夫とイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャしているし、シリーズを遡って結婚前の作品であればなおさらそうなのでは。なお、旦那はいかにも女性作家の好きそうな理想の男性タイプです(皮肉じゃないよ)。

うん、この積ん読崩し、だんだん辛くなってきましたね……あと1冊です。

書 名:悲しみにさよなら(1991)
著 者:ナンシー・ピカード
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ミステリ文庫 164-6
出版年:1994.10.31 1刷
    1998.2.15 5刷

評価★★☆☆☆
ランドルフ師と罪の報酬
『ランドルフ師と罪の報酬』チャールズ・メリル・スミス(角川文庫)

女の死体は聖歌練習室で発見された。全裸で、セックスの直後に殺されていた。ここはシカゴのグッド・シェパード教会。市のど真ん中に建つ高層ビルが、ほかならぬこの教会なのだ。被害者はメアリアン・リードマン。聖歌隊の一員であり、夫は教会の理事という、敬虔で裕福な女性である。まず考えられるのは行きずりの強姦殺人の線。だがなぜ、メアリアンは一人で練習室にいたのか?さらには、急に失踪した彼女の夫との関係は?着任早々この事件に出くわし、探偵役を演じることになったのが、元フットボール選手というタフガイ、ランドルフ牧師。果たしてそのお手並みは?ブラウン神父を継ぐ個性的な僧服探偵を創造した、好評シリーズ第1作。(本書あらすじより)

先日公開した2012年ベスト10、各作品にリンク先をはっつけました。やれやれ。
さて、「あと5年は積みかねない読まなそうな積ん読崩し5人斬り」第三弾、チャールズ・メリル・スミス『ランドルフ師と罪の報酬』です。
……めっちゃつまんなかったです!シリーズ3冊も訳されたのが驚きです!俺これ買うのに315円も出したのかよもったいなっ!(ボロクソ)

大学で神学の講義をしているランドルフは、友人の監督(ビショップとルビがあるので、牧師の上司の司教のことかな)に頼まれ、ある大都会の真ん中にある教会の臨時牧師を引き受ける。どうも教会運営資金をちょろまかしている奴がいるらしい。調査開始直後、殺人が……。

ユーモアをふんだんに交えながら話が進み、まぁ楽しいっちゃ楽しいのですが、もはやそれだけ。プロットは雑、本格物としては微妙、真相は「あ、はい」という感じです。露骨にキャラ勝負を作者が仕掛けてきますが、イケメン主人公と美女が絡んでりゃ良いよね、なんて考えは甘いと思います(ボロクソ)。
話がぐちゃぐちゃとまとまりなくダラダラ進み、必要な証拠を最後の方でどちゃっと提示し、まぁそれまではキャラとユーモアで読ませりゃいいっしょ!というノリなんですよ(言い過ぎ)。はっきり言って退屈。二、三作目はもうちょい面白いのかもしれませんが、頑張って読むほどの気力はありません。さらばチャールズ・メリル・スミスさん、もうたぶん会うことはないぜ。

ちなみに、訳者後書きに、僧服探偵であるブラウン神父、ラビ・スモールに次ぐ、ついに登場したプロテスタント探偵!全米がラビ・スモール以来のエレガントなミステリ登場だと沸いてるぜ!なんて書いてありますけど、絶対言い過ぎでは(ラビ読んでないけど……)。あと、角川文庫はほとんど読まないのでよく知らないのですが、これだけ登場人物がいて一覧表ないとかイジメに近いと思うよ。以上。

書 名:ランドルフ師と罪の報酬(1974)
著 者:チャールズ・メリル・スミス
出版社:角川書店
    角川文庫 赤539-1
出版年:1980.2.25 初版

評価★★☆☆☆