2012.02.29 お知らせ
えー、明日から1週間、イタリアに旅行してきます。ローマとフィレンツェ。おぉぉぉ、楽しみいいぃぃぃ!

というわけですので、1週間音信不通になります。おそらくブログは一切更新しません。携帯電話でもなかなか連絡が取れないかと。
ブログやメールは一切チェックできませんので、御用がある方はご了承ください。コメントなどは帰ってきてから返信いたします。

旅行中に、いくつか記事を予約投稿しておきます。まず、明日の夜中にフレッド・ヴァルガス『裏返しの男』の感想文、3日と4日の1時頃に、以前書いて放置していた駄文を、6日にアイザック・アシモフ『黒後家蜘蛛の会1』の感想文、をアップする予定です。お楽しみに。


今日図書館にDVDを返しに寄ったところ、本のリサイクルをやっていました。図書館がいらなくなった本を無料で配布するわけですね。土日にもあったようですが、静岡にいたので参加出来なかったという……うーぐぐぐ。

2年前に来た時は、ポケミスでエド・マクベインを2つ貰って来たんでした。期待しつつ海外小説を探しましたが、今回はいくら探してもポケミスはない……もう誰か持って行っちゃったんでしょうか。ふと横を見ると、おじさんが袋にどんどん本を詰め込んでいます。40冊はあるな……もちっと遠慮してくださいよ。
とりあえず、マイケル・ボンド『パンプルムース氏の秘密任務』を貰って来ました。単行本です。文庫版が図書館にあるので、ダブりをさけるため処分することにしたのかな、たぶん。ちなみにパンプルムース氏シリーズは第1作のみ読んでいます。あれはすごかった、うん。
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愛知・静岡から戻って来ました~。
1日目はともかく、2日目と3日目は天竜川沿いをいろいろまわってきました。佐久間ダムを見たり、堆積した土砂の上に降りたり、漁協さんの話を聞いたり、浜名湖に行ったり、漁港を歩いたり、中田島砂丘を見学したり、とそんな感じです。やっぱりフィールドワーク系授業は面白いですねー。地元の人に会ったり、自分で実地経験してみたりと、多彩で楽しいです。

土砂の問題に関しては超絶詳しくなってきました。にわかですけどね。ダム・川・海岸について10000字は書けそうです。書かないけど。

中田島砂丘は、日本三大砂丘の1つだそうです……ってそもそも中田島砂丘を知らなかったですごめんなさい。砂丘なんて鳥取砂丘しか知らないよ……。ちなみに、残る1つは九十九里浜だそうです。え、砂丘なんてあったの?(なんか今ではほぼなくなってしまったらしいです。漁業のイメージしかない)

……で、帰って来ましたが、あさってからイタリア旅行なんですよね。間隔が……。


浜松解散だったんですが、新幹線が出るまでに、歩いて行ける範囲で古本屋さんをまわってきました。

◇典昭堂 本店
全体的に異常に安いです。文庫なんか、ここ2、3年のもの以外は50円やら80円やら100円程度。うぅむ……定期的に行きたいようなとこです。
ローレンス・ブロック『泥棒はクロゼットのなか』を50円で購入……ま、またバーニイシリーズを買ってしまった。ちなみにハヤカワ・ミステリ文庫版です。こないだはポケミスだったから、不揃いになっちったなぁ。

◇時代舎古書店
地元の古本屋さん、という感じ。海外ミステリ文庫はまぁまぁあって、クロフツやクリスティなど古典が多い&安かったです。『フレンチ警部最大の事件』がフツーに100円であったりとか、そんな感じ。
レックス・スタウト『黄金の蜘蛛』(ポケミス)を300円で購入。3版です。アマゾンでは2000円……やったぜ。

ちなみに、最近ぼんやりと探しているのがジョン・D・マクドナルド。別に軽かろうが何だろうがハードボイルドなんて全く手につけていないのに。なぜ読みたいのかというと、この間読んだ『37の短篇』に収録されている「懐旧病のビュイック」が死ぬほど面白かった……というより、めちゃくちゃ自分の好みだったからです。というか、TY以外に、あの短編集の中であの話をべた褒めしている人っているんだろうかどうなんだろうか。もうユーモアがたまらないんですよ。ドツボにはまったのです。
トラヴィス・マッギーシリーズとか、あと最近出た『黄金の時計』とか、あらすじ読んだ限りでは面白そうです。『黄金の時計』なんか、意味なくストライクそうだけど、こんなんばっかり読んでると思われるのが嫌だとも思ったり(笑)


アイザック・アシモフ『黒後家蜘蛛の会1』を読了です。まだ『裏返しの男』の感想も書いてないので、うーむ、そうですね、明日中に両方書き上げて、予約投稿にします。
……というわけで、愛知に来てしまいましたー。高速バスで6時間。前回(6月)もそんなもんでした。前回は夜行だったけど。
このゼミというか、フィールドワークの参加者は総勢16人。手頃な人数です。手頃というのがどういう意味かは分かりませんが。そして野郎ばっかり。なぜだ。


せっかく名古屋で降りたわけですから、集合場所の尾張瀬戸駅に行く途中、上前津という駅周辺の古本屋さんを閉店時間前にざざっと見てきました。海星堂書店、三松堂書店、つたや書店です。
いやー、もう、海星堂書店はやばかったです。ミステリは文庫・ポケミス問わずまぁまぁの量、しかも安い!あれも安い!これも安い!うぉぉぉぉぉ、荷物がなければ買いまくるところなのに……。ポケミス『ユダの窓』の初版(1954年)が、何とカバー付き、しかも黄色いのに800円!美品にもほどがあるだろこんにゃろ。
結局抑えて、創元推理文庫『ミニ・ミステリ傑作選』を100円で購入。サークルの企画上探していたものです。うぐぐ、もっと買いたかったよぅ。

三松堂書店もミステリに強いという噂でしたが、まぁポケミスがいくつかあるのみ。つたや書店は通りすがりでちらっと見ただけ。ついでに大曽根のブックオフものぞきましたが、やはり収穫なし。合計1冊でした。よかったよかった、バッグが限界じゃ。
あと、六番町駅に若葉書店とかいうミステリに強い店があるらしいんですが、そんな時間もないので行けませんでした。うーむ、もう来ないって……。


昨日、図書館で借りてきたDVD、ガイ・リッチー監督『シャーロック・ホームズ』を見ました。ロバート・ダウニーJr.のホームズと、ジュードロのワトソンが意外にはまり役です。ってかジュードロかっこいい。全身からかっこいいオーラが出てます、相変わらず。ワトソンの待遇が良いと嬉しい自分。
というか、予想を超える面白さでした。ユーモアとアクションと推理のバランスが絶妙。エンタメとしてはかなり良作かと。次作は映画館で見るかなぁ。


フレッド・ヴァルガス『裏返しの男』読了です。ちょっと急いで読まなきゃいけなかったので。あ、今タイトルの意味に気付いた。ってかタイトルを意識した。
相変わらず面白いですねー。ただ、個人的には『青チョークの男』の方が良かったです。アダムスベルグには都会が似合います。
2012.02.24 お知らせ
明日から月曜日まで、ちょっくら愛知県に行ってきます。観光じゃなくて授業ですけどね。帰りが浜松解散なので、行きの名古屋でういろうを買うと、ただただ荷物が邪魔になると言うジレンマ。
コメント、パソコンメールには返信出来なくなります。ご了承下さい。知り合いで、用がある人は携帯電話までお願いします。


……今日はこれだけ書けば十分なので、後は思いつくままにダラダラと。

昨日の『フォックス家の殺人』の感想でちょっと書きましたが、こう、小説でしか見ない単語、ってあるじゃないですか。まぁ、水差しとかタンブラーはともかく。
そして、海外小説特有の単語ってあるじゃないですか。いや、TYが海外ミステリしか読まないのでそう言ってるだけですが。国内でもガンガン出てるかも。

そのトップ2は、「リノリウム」と「フランス窓」です。たぶん。いや、リノリウムは国内でも見るか。とにかく「フランス窓」、これが分からないと、クラシックは何度か「ん?」ってなること間違いなし。窓なんだかドアなんだか、あちらの人がどう考えてんだかイマイチはっきりせん。まぁ、みんな土足だからね。

後は、「タンブラー」「水差し」以外に、「ペーパーバック」とか。「検死審問」とか。「タイプライター」とか。「判事」とか。「小切手」とか(日本にもあるけど、使用頻度が桁違い)。文化の違い。
ジェローム・K・ジェローム『ボートの三人男』や、コリン・デクスター『オックスフォード運河の殺人』では、「曳舟道(ひきふねみち)」というのがやたらと出て来ました。うん、まぁ、考えれば意味は分かるけど、使いません。今の日本ではあまり用いられない単語なんだとか(byウィキペディア)。まず日本では運河が少ないし。
黄金時代のミステリでは、登場人物がやたらと「叫び」ます。「~と彼は叫んだ」ばっかり。クイーンもヴァンスもとにかく叫ぶ。ポワロも叫ぶ。女の子なんかもう叫んでばっかり。

……なんか話がズレてるかな。ってかネタ切れです。
フォックス家の殺人
『フォックス家の殺人』エラリイ・クイーン(ハヤカワ・ミステリ文庫)

デイヴィー・フォックス大尉は華々しい戦果をあげライツヴィルに凱旋したにもかかわらず、神経を冒されていた。ある夜、彼は無意識のうちに妻の首を絞めようとまでした。戦争の異常体験が12年前に起こった忌まわしい事件の記憶を呼び覚ましたのか?思いあまった大尉と妻はエラリイ・クイーンを訪ね、大尉の父が母を毒殺したという過去の事件の再調査を依頼した。今は刑に服している父が無実となれば、大尉の病も癒えるはずだ。エラリイは事件を再現し、大胆きわまる推理を展開していったが……!本格の魅力を堪能させる意欲作。(本書あらすじより)

〈クイーン強化月間〉第3弾。ライツヴィルシリーズ第2弾です。
まず最初に言っておきますが、TYはこの作品、嫌いじゃないです。とっても読んでいて面白かったです。また、シリーズ物としてのツボも押さえているというか。『災厄の町』に登場したライツヴィルの名脇役たちが再登場するとか、もう熱いじゃないですか。デイキン署長とかやっぱいいなぁ。この人ニューヨークのヴェリーさんなんかよか絶対かしこいよね、うん。事件が何となく『災厄の町』の焼き直し感(毒殺、飲み物、夫が疑われる、云々)があるのに最初気になっていたんですが、途中からどうでもよくなりました。ライツヴィルシリーズということで、わざとやったのでしょうか。また、何となく予想できるとはいえ、この前向きなラストには素直に感動できます。

……ですが、作品として評価するとイマイチかなぁと。少なくとも、『災厄の町』『靴に棲む老婆』よりは数段落ちると思います。それはなぜなのか?


1つ目の大きな理由は、「回想の殺人」物として成功していないこと、でしょうか。
「回想の殺人」というのは、要するに、過去の事件の再構築です。証拠もほとんど残っていない中、当事者たちの記憶を主たる証拠としながら、探偵が新たな結論を導き出すのです。この手法の第一人者はおそらくアガサ・クリスティでしょう。彼女は中期以降このテーマを何度も作品で扱っています。傑作『五匹の子豚』が発表されたのが1943年だというのは興味深いですね。『フォックス家』は1945年です。

さて、この点から見て『フォックス家の殺人』は何がまずいのか。まず、この本のテーマが「回想の殺人」だと分かるのが遅すぎるという問題があります。あらすじを読まないで手に取った人は(自分もそうですが)、86ページにデイヴィーのセリフがあるまで、ただただ宙ぶらりんな状況に置かれることになります。これはねぇ……まぁ、ダメとは言いませんが、良くはないです。「回想の殺人」というのはミステリにおいてちょっと変則的かつ扱いにくいテーマですから、出来れば最初から前面に出して欲しいなぁと。
ただ、そんなことより問題なのは、結局のところ、事件を当時の証拠品を元にあっさり解決してしまうところです。つまり、単なる再捜査。捜査不足だったというだけであり、12年前じゃなくて半年前だとしても全然構わないわけじゃないですか。12年という年月にはあまりに意味がありません。個人的な好みを言えば、「回想の殺人」というのは、証言の集積に基づき解決する、いわば究極の安楽椅子探偵ものであって欲しいんです。証拠を吟味して、む、これはまさか!ではダメなんです。ま、あくまで好みではありますが、この点は結構不満です。ちなみにこの証拠がまた最後の方でひょっこり出てきて、一気に解決、というのも気に食わない。さらには殺人の真相として、読者を勘違いさせようとあるポイントだけすっ飛ばしているのに、証言中誰も突っ込まないというのもやっぱり気に食わない。


……と文句を言うと、たぶん、こういう人がいます。「『フォックス家の殺人』は、ミステリとしてはアレだけど、そこを楽しむべきじゃない。人物描写や人間関係の妙こそが肝なのだ」みたいな。それがダメ出しの2つ目の理由です。
『災厄の町』が傑作たるゆえんは、この言葉は安易なので嫌なんですが、要するに「人間が描けているから」です。クイーンはミステリとしての出来栄えを犠牲にしてまで、割合普通の人々の心理描写・人物描写を重視し、結果としてそれが大成功したわけです。確かに『災厄の町』は文句なしの傑作です。
では、『フォックス家の殺人』は果たして「人間が描けて」いないのでしょうか……というと、もちろんそんなことはありません。問題は、その描写とやらを全部最後に詰め込んでしまったことにあります。
『災厄の町』では、クイーンは裁判の進行と共に、人々の心情の変化を無理なく見事に描き切りました。被告人を全力で弁護しようと一致団結する際の複雑な心境とか、やはり秀逸ですよね。つまり、事件の進行と容疑者たちの心情の移り行く様が、ごく自然に、一体となって描かれているんです。

対する『フォックス家』。証言シーンでちょっとした告白はあっても、大した心情の変化はありません。というか、なぁなぁで流れた感すらあります。中盤のアルヴィン・ケインのエピソードは、後で何か意味を成すのかと思いきや、文字通り全く意味のない話です。ぶっちゃけなくてもいいくらい。そして最後突発的にある証拠から事件が一気に解決と相成り、登場人物たちはみなハッピーになる。
……と、それだけなんです。ベイアードに対する感情がもっと激しく描かれるかと思いきや、やはりそうではない。何と言うか、ミステリとしての側面も人物描写としての側面も全部最後に押し込んでしまった、という印象を受けます。もっとじっくり書いていれば話は別なんですけど。ですから、80ページくらいまではある意味非常に良かったんです。若い夫婦の心理関係がそれはそれはねちっこく描写されていて。ところが、さっきも書きましたが、これが「回想の殺人」だった!と分かると同時に、「人間を描く」ことがなくなってしまうんです。


……と、珍しくけちょんけちょんに書いてしまいました。ごめんなさい。つまらなくはないんですけど、いや面白かったんですが、何とも中途半端な完成度。全体的に、プロットが未熟であるという印象があります。結構評判良いみたいなんですけどねぇ、うぅむ、どうしたことか。


あんまり長々とダラダラ書いたので、ちょっとだけ補足。
『災厄の町』を読んだ時も思いましたが、訳された青田勝さん、かなり上手いですね。2012年3月号のミステリ・マガジンは逆転裁判特集でしたが、巧舟(タクシュー)さんがインタビューで「青田勝さんの翻訳に影響を受けた」みたいなことを言っていました。なるほど、よく分かります。
この事件では、タンブラーと水差しとグラスが極めて重要になります……って、これが結局よく分かんなかったのです。いや、何度も読んで最終的には何とか分かりましたが(つまりタンブラー=グラス……なんだよね、たぶん)。海外ミステリを読んでいてやたらと出てくる「水差し」とは何なのか、長年の疑問を解消すべく、ついにgoogle画像検索で調べたら、ふむふむなるほど、要するにピッチャーやね(ってか英語でpitcherだった)。ちなみに「ピッチャー」は、大学に入って飲み会で初めて知りました。親に聞いたら、「水差し」という単語は別に普通に使う……使わなくても意味は分かる単語らしいです。ぐぁっ。不勉強ですみません……。

書 名:フォックス家の殺人(1945)
著 者:エラリイ・クイーン
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ミステリ文庫 2-32
出版年:1981.5.31 1刷
    1999.9.15 11刷

評価★★★☆☆
今日も学校に用事があったので、えっちらおっちら駆け付け、で、帰りに、ここのところ必死で探しているカーター・ディクスン『騎士の盃』を、やはり必死で探しました。
実は、この間の10月、大学の文化祭の古本販売会で、『騎士の盃』が100円で売られていたんですよねー。あの時はスルーして、カー『猫と鼠の殺人』しか買わなかったんですが、えいくそ腹立たしいったらありゃしない。ちなみにあの時は、Amazon価格は500円くらいだったはず。なぜに今1300円なのかコンニャロ。

まずは神保町……ですが、富士鷹屋と古書たなごころにないことは既に電話にて確認ずみ。一応行きましたがやはり見つからず。@ワンダーにすらなない。三省堂古書館にもなし。羊頭書房はお休み。どないなっとんねん。
三省堂古書館に、ジグソーハウスがいくつか本を出していますが、今日見たらポケミス版ヘンリ・セシル『法廷外裁判』が880円で出ていました。おぉ、まぁまぁお得、と思いながらも、財布と「積ん読増やしたくないな」病の攻撃により断念。うーむ、きっと後で(文化祭の件みたいに)後悔するんだろうなぁ。

その後、文庫や新書に強いとウワサの、茅場町にある酒井古書店へ。初めて来ますが、うぅむ、確かに文庫と新書しかない。すごいな。
高円寺にも西荻窪にも神保町にもないんだから、どうせ今回も空振りだろうと思っていたら……ななななななんと、バッチリあるじゃないですかっ!それも2冊もっ!あるとこにはあるんですね、うむむ。TYの苦労はいったい何だったのか。
600円と800円だったので、迷わず600円を購入。初版で美本。おぉラッキー。しかし、初版だろうが2004年の版だろーが、今回に限っては読めりゃええんじゃ読めりゃ。手間かけさせやがって。

ちなみに、今日は古本はそれしか買いませんでした。新刊は、学校の書籍部でウィリアム・H・マクニール『世界史』(上下)を購入。春休み中が目標。


エラリイ・クイーン『フォックス家の殺人』読了です。世評の高い作品ですが……と思っていたら、EQFCランキング18位でしたけど、まぁ、『災厄の町』『靴に棲む老婆』よりは一段落ちるかなぁと。
現在、アイザック・アシモフ『黒後家蜘蛛の会1』です。前書きがあまりに面白いんですが。
笑酔亭梅寿謎解話
『笑酔亭梅寿謎解噺』田中啓文(集英社)

上方落語の大看板・笑酔亭梅寿のもとに無理やり弟子入りさせられた、金髪トサカ頭の不良少年・竜二。大酒呑みの師匠にどつかれ、けなされて、逃げ出すことばかりを考えていたが、古典落語の魅力にとりつかれてしまったのが運のツキ。ひたすらガマンの噺家修業の日々に、なぜか続発する怪事件!個性豊かな芸人たちの楽屋裏をまじえて描く笑いと涙の本格落語ミステリ。(本書文庫版あらすじより)

いやー、面白かった!こんなにノリの良い短編集は久しぶりです。

とにかく読んでいて無駄にテンションが上がります。例えば主人公・竜二が弟子入りする梅寿師匠。70歳以上ですが元気はつらつ、というか元気すぎてただの暴力じじい、花瓶をぶん投げるわ殴るわ蹴るわ、酒は飲んでつぶれるわ、とろくなところがありません。そのくせ、落語をやらせりゃ天下一品。聞く人全てを虜にするような噺の出来る大物なのです(うぅむ、何か思い当たる人が……)。

そんな梅寿師匠は、事件が起こると、思いつきのままに口出しして勝手に推理を始めますが……いえねぇ、この人、探偵としての能力はゼロなんです。タイトルからして師匠が探偵役だと思っていたのに何たる変化球。当然ですが周りにいる人はだんだんシラッとしてきてしまう。梅寿ピーンチ!
……と、そこに出てくるのが、主人公の竜二君。彼ははっと真相をひらめくのです。そして、師匠のもとに駆け寄り耳打ち。梅寿「な、なんやと!……ま、そんなことやろうとは思とった。よし、竜二、わしにかわって説明せい」というわけで、師匠の代弁という形で謎解きを始める竜二……って名探偵コナンかよ(笑)

ちょっと目次を見てみましょうか。

「たちきり線香」
「らくだ」
「時うどん」
「平林」
「住吉駕籠」
「子は鎹」
「千両みかん」

見れば分かる通り、落語の演目名となっています。各話で起こる事件は、まさにその落語の内容にどことなく類似したものとなっており、この結びつきが絶妙なバランス。というか、演目から事件を考えているんでしょうね、たぶん。良く出来ています。
そしてだいたいの事件は人情話として締められますが、これもそれぞれがいいエピソードなんですよ。前述の通りむちゃくちゃな梅寿師匠ではありますが、最後、犯人を一喝したり諭したりし、犯人も反省、読んでいる側は思わずほろり。
……と書くと、いかにもベタというか、狙った感があるようですが、特にそういう嫌らしさなく読めます。作者の文章力によるものでしょうか。

もっとも、事件自体にはそこまでページ数が割かれていません。むしろ、主として上方落語界の生き生きとした活気や、その中でだんだんと落語に染まっていく竜二の成長が、流れるような関西弁に乗せて書かれています。実は竜二は、落語家として天才的な才能を持っているのです……なにその設定都合良すぎ。こういうベタさって、読んでてやっぱり嬉しいもんですねぇ。
ちなみに単行本の表紙の竜二は、キテレツというか、とんでもない風貌ですが、文庫版(タイトルは『ハナシがちがう!笑酔亭梅寿謎解噺』)はトサカ頭とはいえイケメンです。イメージとしては単行本の方が近いかな。売れるかはともかく。

なんかまとまりのない文章になってしまいましたが、読んでいてここまで楽しめる本は久々です。いやはや、続きを読むのが楽しみですね、これは。

書 名:笑酔亭梅寿謎解噺(2003~2004)
著 者:田中啓文
出版社:集英社
出版年:2004.12.20 1刷

評価★★★★☆
定期が切れているせいで、往復3千円もかけて東京に行くというのは、大変なんですよ、キミ。

というわけで、木曜日と土曜日についてです。


木曜日は、高校の友達……というより、大体は小学校からの知り合いと吉祥寺で飲み会でした。やー、やっぱこのメンバーは気楽で良いです。「友情ってヤツァ……付き合った時間とは関係ナッスィング!!!」なんて、某マンガで某オカマが言っていましたが、ま、ちょっとは関係あるよね、やっぱり。
吉祥寺と言えば、そう、近くに高円寺と西荻窪がっ!

……というわけで、やって来ましたよ、高円寺&西荻窪古本屋ツアー。暇人か。

[高円寺]
都丸書店支店:収穫なし
大石書店:収穫なし
西村屋書店:収穫なし
勝文堂書店:閉店?
アニマル洋子:開店時間は過ぎてるのに、まだ開店準備中
越後屋書店:収穫なし
古楽房:ローレンス・ブロック『泥棒は抽象画を描く』
古書 十五時の犬:休み(なんで毎回行く度に休みなんだっ)
アニマル洋子:ガストン・ルルー『黒衣婦人の香り』、ミッシェル・ルブラン『未亡人』(状態悪し)

[西荻窪]
古書 花鳥風月:定休日
古書 音羽館:収穫なし
紙モノ 古本 なずな屋:収穫なし
比良木屋:収穫なし
にわとり文庫:収穫なし
ねこの手書店:収穫なし
信愛書房:収穫なし
盛林堂書房:収穫なし

……何なんだおい。
いやまぁ、正直財布の中身を気にしすぎて極力買わないようにしてしまったんですが、まぁ予想以上に買いませんでしたね。十五時の犬は前に行った時は改装中で入れず、今回はお休み。不定期だという休みに当たるとは……。
盛林堂書房は、品揃えは確かに良かったんですが、良いものにはやっぱりキチンとした値段を付けてましたね、やっぱり。それに、思ったほどピン!と来るものがなかった、というのもあります。残念。
アニマル洋子は均一棚がかなり充実していて、ミステリも結構揃っていました。『ジェゼベルの死』やら『死の扉』を生で見たのは初めて。

高円寺では落語をあっちゃこっちゃでやってたらしいんですよねー。時間的に見られなくて残念です。

実はですね、カーター・ディクスン『騎士の盃』を現在懸命に探しているんですよ。一回も見かけませんでしたが。富士鷹屋さんと古書たなごころさんにも電話してみましたが、やっぱり在庫はないとか。うぅむ、どうしよう。


今日は、サークルの追い出しコンパで再びトーキョーへ。未成年もいるからとお酒は一切なし。良いことです。前から思っているんですが、うちのサークルはお酒が嫌いなんじゃないのか……。


さて、読書感想文は『37の短篇』をアップしました。むやみやたらと長いですが、まぁ感想文はあくまで自分のための忘備録のつもりなので、ご了承下さい。
昨日読み終わった田中啓文『笑酔亭梅寿謎解噺』、むっちゃ面白かったです。こちらの感想も近日中に。
現在、エラリイ・クイーン『フォックス家の殺人』。ま、日常の謎も疲れたので、箸休めということで。

4月の東京創元社の近刊案内、なかなか面白そうなのが多いです。ってちょっと新刊読むのがしんどいので勘弁して下さい。
ボアロー&ナルスジャックはともかく、注目はパトQのパズルシリーズ第1作、『迷走のパズル』……って、ちょっと待ってちょっと待って、何そのタイトル。
原題はA Puzzle for Foolsでしたよね。過去の訳では、別冊宝石だか何かで『癲狂院殺人事件』という、それこそ素っ頓狂なタイトルがついていますが、まぁこれじゃパズルシリーズっぽくないからダメだとしても、よく使われる『愚者パズル』でいいじゃないですか。というか、『迷走のパズル』じゃあ「の」が収まり悪いです。『俳優パズル』『悪女パズル』と来て、『迷走のパズル』……うぅん。
37の短篇
『37の短篇』石川喬司編(世界ミステリ全集)

というわけで、ついに読み終えたぞ『37の短篇』。2か月もかかっちゃったよゼイゼイ。何という達成感。褒めて褒めて。そしてこのブログ記事は過去最大だよ。

『37の短篇』は、1972~1973年にかけて早川書房が出した叢書〈世界ミステリ全集〉の最終巻、第18巻なのです。旧来叢書で扱われていた黄金時代の作品ではなく、主として戦後のミステリを中心に集めたという、極めてぶっとんだ全集だったわけですね。1965年に江戸川乱歩が亡くなっていた、というのがやはり大きなきっかけではないかと思います。たぶんね。
ところでこれ、TYにとって初・ミステリアンソロジーじゃないかと思うんですが。あ、いや、日本人作家のアンソロジーなら1つ読んだ記憶がありますが、海外はたぶん初めてです。アンソロジーってあんまり好きじゃないんだよね……主として、作家が多すぎてまとめきれなくなるからなんですが。

いや、しかし、この『37の短篇』、評判通りの素晴らしいアンソロジーです。よくもここまで多岐にわたるジャンルから傑作を集めたものだと。戦後のミステリの多様化を示したかったらしいですが、その試みは見事に成功していると言って良いと思います。大体において発表年代順に並んでいますが、これもまた案外効果的。ちなみに既読は7つでした。ということは、30の傑作を新しく読めるということです。わお。

これだけバラエティにあふれる短編集ですから、ベストを選ばせると人によって好みが違うんでしょうね。巻末に収録されている座談会(石川喬司、稲葉明雄、小鷹信光)では各自の好き嫌いがはっきり示されていてなかなか面白いです。というか、この座談会は戦後のミステリの紹介を考える上で非常に貴重な資料だと思います。これだけでも一読の価値アリ、かな。

この『37の短篇』ですが、2012年2月現在、ポケミスから2度にわたって部分復刊が行われています。『天外消失』(ポケミス1819)と『51番目の密室』(ポケミス1835)からそれぞれ14、12ずつ、合計26復刊されています。残りは容易に読めるということでしょうね。個人的好みからいえば、『天外消失』の方が収録作のレベルが更に高いです。


以下、個別に感想を。
この短編集の魅力は、バラエティ豊かな傑作短編を次々に読めること、だと思うんですよ。というわけで、あらすじを付けるのはやめました(断じてサボったわけではなく)。次はどんな話だろう、とワクワクしながら読んで欲しいですから。
なお、そのあらすじ代わりというか、各短編に付けられているテーマを、本書の通り< >で書いておきます。このテーマ、ポケミス版にはないようですが、なぜなんでしょうねぇ。面白い趣向だと思いますけど。
また、調べられた範囲で、タイトルに別バージョンがある場合はそちらも書いておきました。「北イタリア物語」とかね。発表年代は間違っている可能性大です。

マイベストは……なかなか決めるのが難しいですね。既読作品が既読じゃなかったらまた変わると思うんですが、ここではそれらを除いて、座談会に習って順不同で5つあげるなら、ブレット・ハリディ「死刑前夜」、ジョン・D・マクドナルド「懐旧病のビュイック」、クレイトン・ロースン「天外消失」、ジャック・フィニイ「死者のポケットの中には」、クリスチアナ・ブランド「ジェニミイ・クリケット事件」かな。ちなみに既読作品では、ハリイ・ケメルマン「九マイルは遠すぎる」、カーター・ディクスン「魔の森の家」、ロイ・ヴィカーズ「百万に一つの偶然」、ロアルド・ダール「おとなしい兇器」がスーパー傑作です。

〈追跡〉
「ジャングル探偵ターザン」エドガー・ライス・バロウズ
初っ端から、ワケの分からない作品です(笑)なんでいきなりターザンなんだよ!
正直、なぜこの中に入っているのかよく分かりません……。

〈人情〉
「死刑前夜」ブレット・ハリディ(1938)
傑作。ただただ傑作。
あぁもう、こういう人情物には弱いんだな、自分。読み終わって沸き上がる静かな意外性と感動が実に素晴らしいです。

〈ファンタジー〉
「虹をつかむ男 ――ウォルター・ミティの秘密の生活――」ジェイムズ・サーバー(1939)
【別題「ある秘密の生活」「ウォルター・ミティの秘められた生活」】
ジャック・フィニイの短編で似たような雰囲気のを読んだことがあったような。ファンタジーですね、うん(特にコメントがない)。

〈陥弄〉
「うぶな心が張り裂ける」クレイグ・ライス(1943)
【別題「胸が張り裂ける」】
マローン物の、割合真っ当な本格ミステリ。良く出来ていますが、変なのばかりなこの短編集ではちょっと地味かも。ラストのハッピー感は、ダメ男なマローンならでは、といった感じでしょうか。

〈張込み〉
「殺し屋」ジョルジュ・シムノン
【別題「殺し屋スタン」】
真相がそこまで意外だというわけではありませんが、やはり一捻りきいたオチが良く出来ていると思います。ラストもなかなか楽しいですし。メグレ警視がなんかやさぐれてる(笑)

〈ベッド・ディティクティヴ〉
「エメラルド色の空」エリック・アンブラー(1945)
決め手は……うぅん、ちょっとイマイチだったのではないでしょうか。あまりに専門的知識を要求しているように思います。素人嫌いな警察官の元に、その上司から推薦された素人探偵がやって来て御高説を垂れる、という展開は好みですが。

〈歴史〉
「燕京綺譚」ヘレン・マクロイ(1946)
【別題「東洋趣味〈シノワズリ〉」「北京綺譚」 】
今にもディー判事が出そうなほどリアルな中国の事件ですが、時代はおそらく19世紀後半でしょう。かなり裏を読んだプロットで、舞台こそ変わっていますが、やはりマクロイらしい作品かな、と。
日本人が出て来て、キャラとしてはかなりリアルだと思うんですが、名前が「キアダ」ってのはいかがなものか(笑)何だって海外の小説の日本人は変な名前なんでしょう。チャーリー・チャンに出て来る「カシマ」は、まだ漢字変換出来るだけマシです。タンタンの「ミツヒラト」なんかどこで切るんだか。
訳者の田中西二郎による付記の方が興味深いです。マクロイやるなぁ。

〈狂気〉
「後ろを見るな」フレドリック・ブラウン(1947)
こわっ!
結局、読み終わって後ろを見てしまいました。読んでいる読者の、いやいや、所詮小説っしょ、と思っている余裕を片っ端から叩き潰していく最後の畳み掛けがとんでもないです。ま、我々は日本人なので、さすがにそこまで危険性を感じるわけではないでしょうが、当時雑誌でこれを読んだ人はかなり恐怖したのでは。

〈トリック〉
「天外消失」クレイトン・ロースン(1949)
傑作。これぞ本格ミステリです。
トリックの完成度がハンパないです。しかもトリックは表裏合わせて2本立て。豪華ですねぇ。遊びもきいていて大変良いです。

〈論理〉
「九マイルは遠すぎる」ハリイ・ケメルマン(1947)
【別題「九マイルの歩行」】
再読。やはり何度読んでもいいものです。

〈密室A〉
「魔の森の家」カーター・ディクスン(1947)
【別題「妖魔の森の家」】
再読。世界中の本格短編の中でも1、2を争う出来でしょう。
ただ、創元の訳の方がだいぶ良いように思います。こちらは江戸川乱歩訳で、解説によると、下訳が100%あったはずだとか、かなりうさん臭いようです(笑)

〈完全犯罪〉
「この手で人を殺してから」 アーサー・ウイリアムズ(1948)
【別題「完全犯罪」】
南米からEQに送られて来た短編だ……というのが何とも意味深ですね。
これ、解説ではかなり高く評価されていますが、この短編集には似た感じのもっと有名な作品が入っているわけで、そちらを読んだことのある身としては、それほどインパクトはないように思います。

〈陰謀〉
「北イタリア物語」トマス・フラナガン(1949)
【別題「玉を懐いて罪あり」】
再読。訳注の位置が『アデスタに吹く冷たい風』に収録されているものとちょっと違いますが、どう考えてもこちらの方が良いと思います。というのも、訳注がちょっとネタバレ気味ですので。
しかし、やっぱり日本人にはちょっと向いていない驚きのラストですね。

〈不在証明〉
「百万に一つの偶然」ロイ・ヴィカーズ(1949)
再読。かなり面白い傑作です。
迷宮課の短編集は2つ読んだことがありますが、その中で「百万~」は断トツの出来ではないかと常々思っています。初読時のラストの驚き(な、ナルホドー!)が忘れられません。

〈アンファン・テリブル〉
「少年の意志」Q・パトリック(1950)
うわぁ、こういうの苦手だ……。
パトQの作品は初めて読んだわけですが、やはり嫌らしい人間を書くのにめちゃくちゃ長けているようです。ラストのあの不快な感じが……。

〈捜査〉
「懐郷病のビュイック」ジョン・D・マクドナルド(1950)
傑作。やー、もう大好き。
決め手が素晴らしいというのもありますが、つまるところ、町でアホだと思われていた少年のIQが実はめっちゃ高くて、みたいなストーリーがもうなんか無条件に好き。仰々しく語られるユーモラスな文章も最高です。例えば、

「……(犯人を追いかけようと)十九歳になる双児のスタイン兄弟が、オンボロ部品を集めて作ったポンコツ自動車で器用にそれを除けて時速八十マイルまで出して走ったが、とうとうそいつにひっかかって、車は十回ばかりも転回し、二人は即死してしまった。(中略)いずれは刑務所行きの町の屑といわれていた双児のスタイン兄弟も、一躍生粋のテキサスっ子だったということになってしまった。」
登場したばかりの二人を躊躇なく退場させてしまう作者(笑)

「全部座席のマットの上に、ひからびた全麦パンの大きなパンのかけらが見つかった。さすがのスターンワイスターも、これにはあまり期待しなかったが、とにかく鑑識はそれから、このパンがレバー・ペイストをつけて食べたものだと報告してきた。」
いやもうキリがないからやめますが。

〈密室B〉
「五十一番目の密室」 ロバート・アーサー(1951)
密室トリックも面白いですが、それよりはこのメタ的な雰囲気を楽しむべき作品でしょうか。解説の方々はこれが大好きらしいです。ふーん。

〈ブラック・ユーモア〉
「ラヴデイ氏の短い休暇」イーヴリン・ウォー(1951)
【別題「ラヴディ氏のささやかな外出」「ラヴデイ氏の短い外出」】
まさにブラックユーモア。読んでいて、薄々結末が見えるのが何とも皮肉です。どうせ何事もなかったかのように通常の生活に戻ってしまうんでしょうねぇ。

〈幽霊探偵〉
「探偵作家は天国へ行ける」C・B・ギルフォード(1953)
アホ臭いですが、何か好きですね、これ。性格良さ気だった主人公が意外に性悪なのもグッド。ミカエルさんが出しゃばりすぎてて笑えます。しかし、やっぱりやり直さなかったら犯人は分からなかったんじゃあ……。

〈怪奇〉
「燈台」E・A・ポー&ロバート・ブロック(1953)
まさにポー。作者名がダブルなのは遺稿をブロックが完成させたからですが、それでもポー。
怪奇小説ってこんなんばっかりですが、あんまり好きになれません。

〈リドル・ストーリイ〉
「女か虎か」フランク・R・ストックトン(1882)
【別題「女か、それともトラか」】
かの有名なリドル・ストーリーです。単にランダムな結末を見せる話だと思っていたら、意外に人間心理に踏み込んだ結末でした。今まで読んだリドル・ストーリーと言うと、スタンリイ・エリン「決断の時」しか思い出せないんですが、やはり元祖は強いです。

〈奇妙な味〉
「おとなしい兇器」ロアルド・ダール(1953)
再読。やはりダールの作品の中で群を抜いた出来栄えでしょう。ラスト1行を入れたのは実に効果的。

〈恐怖〉
「長距離電話」リチャード・マシスン(1953)
【別題「遠い電話」】
刻一刻と高まるホラーが何とも、ね。取らずにはいられないという恐ろしさがよく書けています。

〈非行少年〉
「歩道に血を流して」エヴァン・ハンター(1957)
マンハントを代表して入れられた短編だそうです。ハードボイルド調の文体と少年の心情が絶妙に融合した佳作じゃないでしょうか。最後の、何とも言えない寂しさがまた良いじゃないですか。

〈意外な結末〉
「死刑執行の日」ヘンリイ・スレッサー
【別題「処刑の日」】
<意外な結末>と銘打たれていますが、うぅん、どうなんでしょう、結構予想の範囲内なのでは。奥さんの行動もイマイチ良く分からないし。悪くない短編だとは思うんですが。

〈サスペンス〉
「死者のポケットの中には」ジャック・フィニイ(1956)
【別題「死人のポケットの中には」】
傑作。上手いなぁ、ジャック・フィニイ。こんなサスペンスを書ける作家は滅多にいないでしょう。
彼の長編は1つだけ読みましたが、それと共通する、独特な雰囲気(特に読後感)があるように思います。これがあるから良いんだよなぁ。サスペンスはあまり得意ではないですが、本作品はハラハラしながら、非常に面白く読みました。

〈マンハント〉
「白いカーペットの上のごほうび」アル・ジェイムズ(1957)
【別題「ごほうびはベッドであげる」】
同じくマンハントを代表して入れられた短編だそうです。選んだ小鷹信光さんが「いちばん趣味の悪い作品」だと言っていますが……うぅん、ま、分からないでもないですね。確かにあまりに捻りがないし、俗っぽすぎるというか。ストーリーもなにもないですし。

〈SF〉
「火星のダイヤモンド」 ポール・アンダースン(1958)
SFミステリです。SF設定が事件やトリックのカギとなるタイプですね。ちなみに登場する日本人の名前はヤマガタ……おぉ、珍しく普通。
事件もその解決も、舞台が火星でありながらいかにもシャーロック・ホームズ風なところが面白いです。それにしても、火星人の風貌が悪趣味な気が……え、SFってみんなこんな感じ?

〈クライム〉
「ヨット・クラブ」 デイヴィッド・イーリイ(1962)
佳作。これは良いですね。まさに……というか、一風変わったクライム・ストーリー。スタンリイ・エリンに何となく空気が似ている……ような。まぁそんなにエリンは読んでないですけど。
主人公がだんだん変化していく描写に無理がありません。そのためラストがファンタジックなのにも関わらず、いかにも自然に見えてしまうというのが恐ろしいです。

〈詐欺師〉
「クライム・マシン」ジャック・リッチー(1961)
【別題「犯罪機械」】
再読。「火星のダイヤモンド」の2つ後に置くというのは、編集部の策略か?(笑)晶文社ミステリ(または河出書房文庫)から出ているのは好野理恵訳ですが、こちらは丸本聰明訳です。リッチーの代表作にあげられることが多い作品で、確かに傑作だと思いますが、個人的にはこれはベストではありません。有名所では、例えば「エミリーがいない」の方が、リッチーらしくて好き。まぁこれは好みの問題かな。
ジャック・リッチーの短編は、数はあるんだから、良作でも駄作でもいいからもっと訳してほしいです。

〈証拠〉
「一滴の血」コーネル・ウールリッチ(1962)
「迷宮課」風、でしょうか。確かにこれは盲点でした。
……という感想以外に何を書けと。

〈密室C〉
「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」ウイリアム・ブルテン(1965)
何とも皮肉かつ気の毒な結末。個人的には上手くいって欲しかっただけに、このオチには、ま、ある種がっかりしたというか(笑)というより、こういう皮肉系はちょっと苦手。確かに、上手くいけば、到底見破られる心配のないトリックだと思うのですが。

〈犯人消失〉
「最後で最高の密室」スティーヴン・バー(1965)
まさかの密室二連続。いくらなんでも燃え尽きはしないんじゃ……いや、突っ込むだけ無駄か。原題(The Locked Room to End the Locked Room)を考えると、邦題はちょっと趣旨が違ってしまう気がします。特に「最高」の部分が。

〈パロディ〉
「アスコット・タイ事件」 ロバート・L・フィッシュ(1960)
再読。正直、めちゃめちゃ分かりにくいこの作品を選んだのは失敗じゃなかろーかと。少なくとも自分は、短編集で読んだ時は、訳した深町眞理子さんの解説(だったかな)を読まなきゃわかりませんでした。
……とケチをつけながらも、やっぱりシュロック・ホームズは大好きなんですけどね。「ワトニイ博士の前でもご遠慮なくお話しください。いたって耳が遠いほうですから」。爆笑。
短編集『シュロック・ホームズの冒険』は、傑作です。それこそ爆笑物です。まとめて読む方が面白いですよ。『~の回想』は確か積ん読だったから、早く読まないと……。

〈妄執〉
「選ばれた者」リース・デイヴィス(1966)
この話、好き嫌い以前に、なんかものっすごく退屈でした。最後まで読んでも「だから?」という。凡作のような気がするのですが、なんで37の中に、それこそ「選ばれた」のか。
……と思っていたら、この作品、難解なことでとっても有名なんだとか。小森収「短編ミステリ読みかえ史」の第20回に解説が出ていますが、うぅん、なるほど、そういう楽しみ方をしなきゃいけないのね。
続く「長方形の部屋」と言い、この頃のアメリカは実に病んでる感があります。

〈動機〉
「長方形の部屋」エドワード・D・ホック〈1967〉
うぅん……タイブじゃないです。ホックらしくない良作だとは思いますが、この空虚感はちょっと苦手。

〈?〉
「ジェミニイ・クリケット事件」クリスチアナ・ブランド(1968)
非常に有名な短編を、ついに読みましたが……いやはや、これは確かに傑作です。
『毒チョコ』のような多重解決物でもあるんですね。この点は、容疑者同士での推理合戦を得意とするブランドらしいところかもしれません。
最後の解答が、密室トリックを成立させるものとして一番出来が良いわけではないでしょう。しかし、この読後感には何とも言えない魅力がありますね。ラストには別バージョンがあるらしいけど、うぅむ、どうなってるというんだ。

〈座談会〉短篇の魅力について
これも一読の価値あり。

書 名:37の短篇(傑作短篇集)
編 者:石川喬司
出版社:早川書房
    世界ミステリ全集 18
出版年:1973.6.30 初版

評価★★★★★
インディアン・サマー騒動記
『インディアン・サマー騒動記』沢村浩輔(ミステリ・フロンティア)

「もしかして俺たち――遭難してるのかな」「遭難と決めるのはまだ早い。要は気の持ちようだ」軽い気持ちで登った山で道に迷い、その夜無人駅に泊まる羽目に陥った大学生・佐倉とその友人・高瀬は、廃屋と思い込んでいた駅前の建物“三上理髪店”に深夜明かりが灯っているのを目撃する。好奇心に駆られた高瀬は佐倉が止めるのも聞かず、理髪店のドアを開けてしまう。そこには…第四回ミステリーズ!新人賞受賞作の「夜の床屋」ほか、子供たちを引率して廃工場を探索することになった佐倉が巻き込まれる、真夏の奇妙な陰謀劇「ドッペルゲンガーを捜しにいこう」など全七編。“日常の謎”に端を発しながら予期せぬ結末が用意された、不可思議でチャーミングな連作短編集。(本書あらすじより)

うぅん……何だかなあ。
1つ1つの短編は悪くないんですよ。ただ、これはあくまで「連作短編集」ですから、読み終わって、ある程度のまとまりを読者が感じることができるようになっている方が良いと思うんです。たぶん。

で、この『インディアン・サマー騒動記』、そういう観点から見ると、致命的と言っていいような弱点があります。一言でいえばまとまりがないんです。各話をざっと見ると

「夜の床屋」……日常の謎→犯罪
「空飛ぶ絨毯」……日常の謎?→犯罪
「ドッペルゲンガーを捜しにいこう」……日常の謎
「葡萄荘のミラージュⅠ」……宝探し
「葡萄荘のミラージュⅡ」……つなぎ
「『眠り姫』を売る男」……犯罪&ファンタジー
「エピローグ」……ファンタジー

……なんじゃこりゃ。この本を「日常の謎」系統のものだと思って手に取る人は結構多いと思うんですが、まぁ良い意味でも、悪い意味でも裏切られるというか。

さっきも言いましたが、1つ1つは悪くありません。「夜の床屋」の何とも魅力的な謎の提示、「葡萄荘のミラージュ」の暗号、「『眠り姫』を売る男」の一風変わった犯罪小説……という感じ。ちなみに、佐倉君という人が一貫して語り役ではあるんですが、探偵役が毎話コロコロ変わっていくんですよね。これは結構面白い趣向だと思います。作品単体として面白かったのは、いかにも日常の謎らしい「夜の床屋」と、伏線の張り方が本格的な「空飛ぶ絨毯」でしょうか。
ただ、やはり戴けないのが「エピローグ」。ここまでの流れが既にジャンルが錯綜していて宙ぶらりんなのに、この「エピローグ」によってさらに宙ぶらりんというか、どっちらけになってしまうんです。そこまで全部ひっくり返す必要はあったのかなぁと。驚愕の結末という意味では、ま、成功しているわけですが。この終わり方を気にいる人も結構いるとは思いますが、うぅん、自分は無理でした。ゴメン。

ファンタジーとミステリの融合を図った作品は割合たくさんあると思います。ただ、そういう場合、そのファンタジーは唐突というより、話全体を通じて浸透させていくようなものである方が好ましいのではないかな、と。ジャンルの越境というのはなかなか難しいもんですね。
ま、作者にとって一番の不幸は、あらすじに「“日常の謎”に端を発しながら予期せぬ結末が用意された、不可思議でチャーミングな連作短編集」と書かれてしまったことでしょうか。

書 名:インディアン・サマー騒動記(2011)
著 者:沢村浩輔
出版社:東京創元社
    ミステリ・フロンティア 65
出版年:2011.3.25

評価★★☆☆☆
赤ちゃんをさがせ
『赤ちゃんをさがせ』青井夏海(クイーンの13)

三人の妊婦が妻として登場した家で始まった本妻捜し。女子高生の出産騒動。次々キャンセルされる依頼の謎。自宅出産専門の出張助産婦コンビが向かう先は、何故かおかしな謎を抱えた家庭ばかり。それらの謎を鮮やかに解き明かすのは、「伝説のカリスマ助産婦」明楽先生!見習い助産婦・陽奈の成長と安楽椅子探偵の冴え渡る推理を描く、爽やかなユーモアに満ちたシリーズ第一弾。(創元推理文庫版のあらすじより)

国内ミステリは……えぇと、7月2日に読み終わった平石貴樹『笑ってジグソー、殺してパズル』以来、7か月振りですか。諸事情により1か月ほどこういう感じのものばかり読んでいく羽目になっており、このブログらしくないんですが、ま、お付き合いくださいませ。

というわけで、まずは『赤ちゃんをさがせ』。作者名があ行なのでこれから始めます。単行本には〈クイーンの13〉という叢書名が……き、聞いたことない。手元にある『東京創元社文庫解説総目録[資料編]』によると、「ミステリ&エンターテイメントの世界も女性の時代」……って、4つしか出てないじゃん。

いわゆる「日常の謎」に分類されるタイプの連作ミステリで、目次は

第一話 お母さんをさがせ
第二話 お父さんをさがせ
第三話 赤ちゃんをさがせ

となっています。といっても、話の中身はタイトルから想像されるものとは全然違うんですけどねー。

まず、助産婦さんが探偵役、というのが面白いです。あまり馴染みのない職業ですが、彼女たちの仕事がまさに事件と直結しているわけですから、かなり細かいところまで書きこまれている……のかな、たぶん。非常に興味深く読めました。
登場する3人の助産婦さんたちも魅力十分。3人とも探偵役ではありますが、基本全てを見抜くのが70歳くらいでありながら元気バリバリ、ほとんど無敵キャラの明楽(あきら)先生、言うこと為すことたいてい間違っている(笑)見習い助産婦かつ語り手のお調子者・陽奈、30代半ばくらいで、出張助産婦として働いているマジメな聡子さん、という構成です。この人たちのやりとりが面白いですね。というか明楽先生がほぼ神がかった設定のような……。

全ての話が、登場人物たちの会話に潜む些細な出来事を元に推理していく、というパターンです。一見そうだと思われたセリフが、見方を変えることでこんな意味に……のようなパターンが多いですね。まぁ、第二話の場合、作者が読者を勘違いさせようとして言わせたセリフを、自分はそのまま受け取らず裏の意味で取ってしまったので、ある意味がっかりですが(笑)とにかく読みやすく、基本ほのぼの系なので、万人にオススメ出来るのかな。第三話はやや話が大きくなりますが、最終話ということでまとまりもいい感じです。

……ということよりもですね、えぇ、解説や各サイトに書かれている、各話をつなぐ「とんでもない共通点」って何なんですか。頼むから誰か教えてください。コメントを非表示にして。もう気になって仕方がないんですが、いくら頭を絞っても……。

まぁでもやっぱり、殺人事件が起きた方が好きかなぁ(って言っちゃうと元も子もない)。

書 名:赤ちゃんをさがせ(2001)
著 者:青井夏海
出版社:東京創元社
    クイーンの13
出版年:2001.10.15 初版

評価★★★☆☆
ちょっとここんとこ忙しくなってしまいました。実は地元でお葬式があったりして。成人式で会ったばかりの人の死というのは、なかなか受け入れがたいものですね。


今日、某ハイソなエリアにあるイタリア語の先生のお宅にお邪魔してきました。目的は、表向きはイタリア旅行の計画相談、裏向きは自宅観光旅行です。クラスな何人かがぞろぞろと、総勢8人。勝手に独身貴族だと決めてかかっていたら、まさかの奥さん登場で慌てふためく学生たち(笑)
いやまぁ、具体的な描写は控えますが、うん、予想以上にゴージャスで度肝を抜かれました。いやまったくねぇ、これを知ると文字通り見る目が変わってしまう……。
地下に書庫があったんですよ。皆で降りてったもんだから詰まっちゃって最初の方しか見れませんでしたが、ちらっと見たらカー『不可能犯罪捜査課』がっ。うぅむ、何でも読んどるのなぁ。探したらもっと掘り出し物のミステリがあったんじゃな(殴

せっかくなので、通りすがりの祖師谷大蔵駅&代々木上原駅周辺の古本屋さんをダッシュで駆け巡って来ました。が、祖師谷大蔵のツヅキ堂書店・文成堂書店・ブックオフ、代々木上原のLos Papelotes・マコト書房、いずれも欲しいのは見つからず。Los Papelotesはめちゃくちゃオサレな良いとこでした。いるとウワサのワンちゃんがいなかった……。
古本なるべく買わないつもりではいたんですが、うぅむ、こうなると何だか不満足感が……。明後日、古本の聖地のごとし高円寺と西荻窪制覇をする予定なので、まぁたぶん大丈夫ですが。


で、目下のところ、国内ミステリをやたらと盛んに読む羽目に陥っています。7月から1冊も読んでいなかったのに、なんたる屈辱……(いやいや)。何だかなぁ、読みたくないのを読まされるのっていかがなものか。
というわけで、青井夏海『赤ちゃんをさがせ』、沢村浩輔『インディアン・サマー騒動記』をひとまず読了。『赤ちゃんをさがせ』の「とんでもない共通点」、頼むから誰か教えてください。
3日間で2冊って……やっぱり国内作家は読みやすいです。読みやすすぎてムカつく。残り、国内ミステリが6つ、再読2つ、海外長編が3つ……くらい。うぅ、これを1カ月でやれと……クイーン強化月間だったのに。
靴に棲む老婆
『靴に棲む老婆』エラリー・クイーン(創元推理文庫)

靴作りで巨億の財をなして《靴の家》に住む、老婆と六人の子供たち。この一家に時代錯誤な決闘騒ぎが勃発、エラリーらの策も虚しく、不可解な殺人劇へと発展する。”むかし、ばあさんおったとさ、靴のお家に住んでいた”――マザー・グースの童謡そのままに展開する異様な物語。狡猾な犯人の正体は?ナンセンスな着想と精妙な論理が輝く、風変わりな名作!(「生者と死者と」改題)(本書あらすじより)

〈クイーン強化月間〉第2弾。読んでいる途中に読書スランプに突入したせいで、1週間もかかってしまいました。前回読んだ『災厄の町』には勝てませんが……いや、どうなのかなぁ、こっちの方がマトモなミステリではあるし。とにかく、佳作と言うか、予想以上に面白い作品でした。とはいえ、べた褒めしているわけではないというのが、自分とクイーンの微妙な距離感なのではないかと(笑)

クイーンの傑作群の中では、取り立てて有名な作品と言うわけではありません。中期の作品も、『災厄の町』『フォックス家』『十日間』とかがまず名前が出てくるのが普通……のような気がしますが。エラリー・クイーン・ファンクラブのランキングでは10位だということですが、1~9位に比べてどうにもインパクトが弱いようです。つまり、所詮10位。

で、なぜなのかなぁと考えると、やっぱりこの作品が初期クイーンらしい作風でありながら、ロジック・推理の面では到底初期クイーンには勝てていないから、なのでしょうねぇ。偏屈なババアの支配するキチガイ家族、マザー・グースなど、題材自体はまさに『Yの悲劇』、というよりはヴァン・ダインの『僧正殺人事件』にそっくりです。前作『災厄の町』で見せたような心理描写は抑えめで、あくまでフーダニットに徹しているとい感じ(そのせいかキャラクターも結構ステレオタイプ的というか、単に1つの属性を与えられたのみ、という感じ)。とはいえ推理自体はそれほどでもなく、やはり一般に言われる傑作と比べて見劣りするというのも分からないではありません。

が、しかしこの作品、そんなに中途半端でしょうか。まず読んで思うのが、圧倒的な読みやすさです。とにかく物語としての面白さ。この点、やはりクイーンは上手くなったんだなぁと。国名シリーズや『X』『Y』の単調さと比べて、この作品は実にファンタスティック、どことなくおとぎ話めいた世界に読者は引き込まれるのです(これを出来なかったことが『僧正』の最大の弱点かな)。
さらに、確かに推理自体はちょっとなし崩し的なところがあり、最後も土壇場で証拠を出すってどうよ、という気もしますが、決め手となる証拠、これはなかなかいい点をついているのではないでしょうか。少なくとも自分は、ほぇ~、っと感心しました。これしかないじゃんと言われるとそれまでですが(例えばピストルの件とかはやっぱりいい加減だし)、そこは上記の物語的面白さがカバーしているということで。
その物語的面白さを支えるのが、二重三重と繰り返すどんでん返しでしょう。残りページの分量からまさかこれで終わらないだろうと分かってしまうと言えば、えぇもうそれまでですけど(笑)この点も初期クイーンからの進化と言えるのではないでしょうか。単に事件を起こして、ロジックからただ解く、というだけではなく、ストーリーとしての厚みを持たせるために、読者の興味を飽きさせない仕掛けを入れる、ということです。

と、ここまで、クイーンにしては珍しくべた褒めです。いや、最初の80ページくらいまではちょっとしんどかったんですよ。出たなキチガイ家族、出たなキャラが濃い割に深みのない登場人物たち、出たなマザーグース、あぁもうやだこの展開→スランプ、というわけです。が、読み終わってみると、うぅむ、結構良いんじゃないか、これ。

というわけで、もしミステリ初読者に何か古典本格を勧めるという場合、クイーンに関して言えば、例えば『エジプト』よりも『靴に棲む老婆』の方が、読みやすさの点からいって良いのではないかなぁと思いました。現実問題として自分はクイーンよりクリスティを勧めると思いますが(笑)

なお、この本はNさんからお借りしました。ありがとう!

書 名:靴に棲む老婆(1943)
著 者:エラリー・クイーン
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mク-1-12
出版年:1959.9.25 初版
    2002.12.20 54版

評価★★★★☆
というわけで、春休みだよヤッホイ!ビバ・大学生!
テストもレポートも終わって、いやもう、ウワサには聞いてたけど、大学生(文系)ってホントに休みばっかりなんですね。ぐわっはっは。

……にもかかわらず、本を読もうという気にならないんですけど。読書スランプ絶賛継続中なんですけど。どうなってんだこれ。

2月中は、ひとまず模試の採点の内職があって、後は特に用事なし。友達と会ったりくらいですね。2月の最後の方で3泊3日で愛知に行ってきます。集中講義って言うんですか、フィールドワークに出たら単位が貰える、というやつ。その後29日から1週間くらい、クラスの何人かと、全部で6人くらいですが、イタリアに行く予定です。3月中はガチで何にもなし。


とりあえず昨日イタリア語のテストが終わった後、何の気なしに渋谷のブックオフに行ってきました。まずはCDコーナーを……

うぉぉぉぉぉぉ!!!!探してたCDがあったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!

Shadow Galleryという、1990年くらいから活動しているプログレッシブ・メタルバンドがあるんですよ。前から欲しいなぁとは思っていたんですが、こんなマイナーバンドがそう簡単に転がっているわけもなく。おぉ、さすが渋谷、都会だ、何でもありだ。セカンドの「Caved in Stone」を500円で購入。聞いてみると、おぉ、実に素晴らしい……。んもぅ、何というか美しいね。どうでもいいですけど、ボーカルのマイケル・ベイカーが、Sonata Arcticaのトニー・カッコに似てるような。
最近、メタルよりプログレメタル寄りになっている気がします。プログレ自体はそんなに好きなわけじゃないんですが。一応探しているのが、って後はプログレじゃないんですが、Korpiklaaniというよく分からんフォークメタル軍団と、Avantasiaという、Edguyのトビアス・サメットのバンド。ま、そう簡単に見つかるわけじゃないんですけど……じゃあ新譜買えよ。

そう言えば、これまだ書いてなかったと思うんですけど、先週の日曜日にたまたま立ち寄ったブックオフ……ええと、どこだったかな地名は、そこで『逆転検事』のソフトを1550円で買ってきました。現在3話に入ったところ。確かに面白いですが、やっぱりシナリオを、というよりセリフを書いているのがタクシューじゃないというのが気になります。御剣検事はなんか反応が一辺倒だし、イトノコ刑事は語末の「~ッス」が乱発されて違和感あるし。というか、なんか上手い言い回しが少なくない?

えぇと、何の話でしたっけ、渋谷のブックオフです。本棚を嗅ぎまわると、とりあえずクリスチアナ・ブランド『はなれわざ』が文庫・ポケミス両方でまだ500円で売られているので、よし、まだ誰も買ってないな、と安心。積読5冊減ったら買っていい、ってルールを決めましたけど、まだ1つしか減ってないってどういうことよ。しかもこれから1か月はとある事情で読みたくもないミステリを大量に読まされるという危険が目前に。ぐわわわわ。
ポケミスコーナーにジョン・ディクスン・カー『三つの棺』が450円であったんですよ。未読ですから、買おうか思案中です。出来れば文庫が良いんですけどねぇ。HM文庫のカーの表紙(あのトランプとかのやつ)が結構好きなんですよ。


その後のお買いもの
◇レオ・ブルース『死の扉』
新刊です。同時発売の『裏返しの男』『火焔の鎖』は図書館が買ってくれるそうなので待機中。お金がもったいないもんね。
フィデリティ・ダヴの大仕事
『フィデリティ・ダヴの大仕事』ロイ・ヴィカーズ(国書刊行会)

妖精のようにキュートな女怪盗のフィデリティが、大勢の手下を使って大胆な犯罪を実行!!悪徳商人やスコットランド・ヤードを手玉にとっての大活躍。「ハウダニット」を楽しめる短篇集。倒叙ものの名作『迷宮課事件簿』(ハヤカワ文庫)で知られるイギリスの作家、ロイ・ヴィカーズが〈迷宮課〉執筆前に刊行した『フィデリティ・ダヴの大仕事』。ミステリ・ファンに人気が高い1冊を初邦訳。(本書あらすじより)

ちなみに表紙は、海外ミステリ史上トップクラスのカッコいいものではないでしょうか。たぶん。

ヴィカーズと言えば「迷宮課」ですが、まぁ「迷宮課」シリーズって、趣向としては面白いけど、退屈なものも多いんですよね。2つ短編集は読みましたが、単体で読むならともかく、一気に読む向きではないかなぁ、と。ちなみに短編「百万に一つの偶然」は超絶傑作ですが。

ところが打って変わって、この『フィデリティ・ダヴの大仕事』の抜群の面白さです。何なんだヴィカーズ、あんた退屈な話しか書けないんじゃなかったんか。ってか迷宮課より前の作品ってどういうことだよ。
このシリーズは今回初めて知ったんですが、その魅力は何と言っても「楽しい」という単語に集約されるように思います。もうただただ愉快な物語。しかも、訳のおかげもあるかもしれませんが、1924年刊とは思えない新鮮さがあります。全く古臭くないんですよね(内容自体は昔のコメディっぽいとはいえ)。コミック化・アニメ化しても売れるんじゃないでしょうか。ってかアニメ化して。

話としては、美少女(決して美女ではない)フィデリティ様が、自分を崇拝している大勢の手下を駆使して、悪どく金を稼いでいる金持ち達から大金を巻き上げる、というものです。美術品を盗むときもありますが、詐欺・ペテンで騙し取るような話の方が多いかもしれません。毎話趣向を凝らしており、さらっと読める良短編集でしょうね。
フィデリティが大悪党だというのを、スコットランド・ヤードはちゃんと知っているということになっています。ってか住所まで知っています。レーソン警部補とはもはや顔見知りで、彼は何とか彼女を捕まえようとはするんですが、結局証拠がなくてダメ、というわけ。この二人の関係が何とも面白く、逮捕したいと同時にその天才っぷりに尊敬しているレーソン警部補が、どこかフィデリティを応援しているように思える話があるというのが、こう、何ですか、いかにも読者好みな感じ。この警部補さん、やっぱり後々迷宮課に飛ばされるんでしょうか。迷宮課ではジョージ・レイスン(George Rason)警部となっていますから、昇進したのかな。迷宮課に行くこと自体はめちゃくちゃ左遷くさいですけど。ちなみに警部補時代の方がキャラが立ってる気がします。

肝心のフィデリティですが、常に灰色の地味な服装を身にまとう超絶美少女で、21歳前後、純真無垢な態度を装う様はまさに天使のよう、しかし実は全て演技で,実はちょっと小悪魔……ってか悪魔入ってるんじゃなかろうかという曖昧さ、崇拝する信者多数、女の子達にはお姉様と呼ばせるという、なんというか、めちゃくちゃ魅力的で、完全に二次元キャラとなっています。帯の「何でも盗んでさしあげますわ」ってのは……なんかキャラ違くないですか?うぅん、やっぱりアニメ化して欲しいなぁ。
彼女の部下で、何度も登場する人は結構いるんですが、一番面白いなと思ったのがサー・フランク・ロートン。彼自身は部下でもなんでもなく、彼女に心酔してもおらず、ただフィデリティの顧問弁護士というだけですが、薄々(いや絶対)正体に気付いています。そして彼は法に反することは大っ嫌いだと思うんですが、法的には問題の無いフィデリティの手法をどことなく面白がっており、いっつもチョイ役で登場するんですね。何とも上手いキャラ設定。

というわけで、結構楽しめる短編集でした。12しかないというのが本当に残念です。

以下個別に簡単な感想を。

「顔が命」
フィデリティ初登場。まずは宝石を盗みますが……。
この話でいきなりフィデリティは警察に顔を知られてしまいます。入れ替えトリックが意外に良く出来ていますね。相手の知られたくない部分を上手く使っているのがグッド。ってか逆に、どうやってその弱点を知ったんですか。

「宙吊り」
フィデリティの次なる宝石強奪を防ごうと、レースン警部補は奮闘するが……。
でた、いきなりアニメ目前ぶっとび手段です(笑)レースン警部補がただただ哀れ。
最初読み終わって、アレどうやって盗んだんだ、と頭に入らなくてあせりました。そんなに複雑じゃないんですけどねぇ。あまりにもサラッと読めてしまうせいかな……いえ、単に理解力不足です。

「本物の名作」
フィデリティに騙されかけていることに気付いたサー・ルーファスは、彼女を捕まえようと一計を案じるが……。
何とも小気味良い盗み方。ジャック・リッチーの傑作「誰が貴婦人を手に入れたか」に何となく似ているような。

「偽造の定番」
フィデリティは、愛する地元を守ろうと、その風景を盗むことに……。
かなり荒っぽい手段ですが、相手を陥れようと複数の罠を仕掛ける様がなかなか上手いです。別に風景を盗むわけじゃないんですけどね。土地全体を守ろうと、容赦なく屋敷をぶっこわすフィデリティ様、さすがです。

「ガルヴァーリー侯爵のダイヤモンド」
ガルヴァーリー侯爵に同情したフィデリティは、彼のものであった宝石を取り返そうと……。
こういうストーリーは好きですねぇ。最後が何とも美しいじゃないですか。盗む方法は案外ムリヤリですが。

「貴顕淑商」
ある大手の食品会社の給料があまりに安いことに憤慨したフィデリティは……。
何とも手痛い仕打ち。しかし、目的といいその方法といい、フィデリティの手段の多彩さが伺われます。

「一四〇〇パーセント」
高い利子をつけて金を巻き上げる金貸しに対して……。
いかにもな詐欺、って感じですね。この男もかわいそうだな……。やたらとパーセントを連呼していましたが、いまいち何でそれにこだわるのかがよく分かってなかったり。

「評判第一」
名声を重んじ女を捨てた男に対しフィデリティは……。
相手を陥れようとするフィデリティの方法が面白すぎます。ヴィカーズの発想はなかなか独創的ですね。ちゃっかりお金も巻き上げてるし。

「笑う妖精」
自分の持っている美術品が偽物だと裁判で争うも、当然のように敗訴してしまうフィデリティ。その目的とは?
見え見えの展開ではありますが、これがまた何とも気持ちのいい展開です。今回は義賊というより単なる詐欺ですね。

「ことわざと利潤」
ある薬品の効果を知ったフィデリティは、それを用いてタペストリーを盗もうとするが……。
前提として、フィデリティの一味は余裕で何度でも盗みに入れる、となっている点がいかにもこのシリーズらしいですね。彼女の手段は、いかに正攻法で騙すか、ということですから。

「ヨーロッパで一番ケチな男」
そのケチな男に強制的に慈善をさせるべくフィデリティは……。
この短編集の中では地味目かなぁ。

「グレート・カブール・ダイヤモンド」
あるダイヤモンドを盗もうとしたフィデリティは、誰もが見る中そのダイヤモンドを正攻法で自分のものにしようとしたが……。
いくら何でも被害者が現金すぎる(笑)この結末は、つまり、作者はフィデリティシリーズをこれで終わりにするつもりだった、ということなのでしょうね。盗み出す方法は……ま、これはレーソン警部補さん、お気の毒様、というところ。アメリカ人のおばちゃんがやたらと無神経に描かれている気がしてなりません。

書 名:フィデリティ・ダヴの大仕事(1924)
著 者:ロイ・ヴィカーズ
出版社:国書刊行会
出版年:2011.12.21

評価★★★★☆
消費テスト2、残りテスト3&レポート1。
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!(意味なく身を奮い立たせる)

とりあえず、サークルの仕事として行って来た日曜日のコミティアの売り子が終わったので、一段落です。信じられないほど売れなくてビックリです。ヒマでした。月曜日のテストやばいっつーのに……。

でその肝心のやばいテストですが、とりあえず生物っぽい方は……えーと、うん、単位は来てるはず!(あやふや)
もう1つの法の授業は、持ち込み可だと言うのもあって、何とかなりました。ってか多分上手くいきました。その理由はですね、はい、問題は、3つのテーマのうちから1つ選んで自由に論ぜよ、というやつだったんですよ。2つがいかにも小テーマくらいの分量で、明らかに60分の試験時間のうち20分くらいで終わりそうなやつ。もう1つが、大テーマというか、大大テーマで、明らかに書く内容を絞らないと終わらなそうなやつ。ここで小テーマを選んでも、なんかアレなので、大テーマを選ぶ自分。しかし、問題がこれだけって、絶対何か独創的な意見とか書かないと良い点数は来ないパターン……うーむ、何かないかなぁ……。

と、そこでです。実は、TYが使ってる教科書はAmazonで中古で買ったやつなんですよ。かなりあちこちに前の人の書き込みがあるんですが、おんなじ先生の授業を受けてたんじゃないだろーか、ってぐらい適確に書き込み・線があります。ところどころ、授業で言ってないことも書いてあります。まったく、授業中何度助けられたことか。

で、あるページに書いてある内容が、まさに今回のテーマにぴったり&先生言ってない=独創性バッチリ。いよっしゃああああ!と、結局書いた内容のうち3分の1くらいはその書き込みをベースにしました。何か、ハリー・ポッターに出て来るプリンスの教科書みたいだな……。あの呪文、何でしたっけ、セクタムセンプラ!か。


というわけで、テスト勉強&内職で全く時間が取れません。さらに本読む気力が突然ストップです。今、『靴に棲む老婆』が60ページから先に進みません。どうしたもんか。
『フィデリティ・ダヴの大仕事』の感想は、なるべく早く書きたいです。じゃないと、法やらイタリア語やらの知識に流されて忘れる。


書くことがないので、テキトーに思うがまま。

第二外国語がイタリア語なんだったら、やっぱりイタリアミステリも読んでるのかと言うと……うーむ、そうじゃないですよねぇ、もちろん。ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』くらいです。イタリアのミステリ作家で断トツ有名なのは、特にイタリア国内ですが、アンドレア・カミッレリでしょうか。邦訳もいくつか出てるみたいですが、手に取ったことすらないです。

じゃあイタリアが舞台になってるミステリなら……H・C・ベイリー「羊皮紙の穴」は、フォーチュン氏がフィレンツェで遭遇する事件でした。クリスチアナ・ブランドの『はなれわざ』『ゆがんだ光輪』は、イタリアが舞台らしいですが未読。サラ・コードウェルは、イタリアが舞台の『かくてアドニスは殺された』だけ未読。ダン・ブラウン『天使と悪魔』も未読。マグダレン・ナブはイギリス人ですが、イタリアを舞台にしたミステリを多数書いている……らしいです。何だよ全然読んでないぞ。

イタリア系が出て来るミステリ……これはもう無数にあるはずです。探偵役だけでもハンニバル・レクター博士(でも読んでない)や、『ホッグ連続殺人』のニッコロウ・ベネデッティ教授とか。ポー「モルグ街の殺人」ですらイタリア人が1行だけ出てるし。
とは言え、自分にとってミステリに出て来るイタリア人と言えば、ただ1人、アントニオ・フォスカレリだけです。誰か分からない?じゃあ、その他の登場人物として、ヒルデガルド・シュミット(ドイツ人)、グレタ・オールソン(スウェーデン人)、ピエール・ミシェル(フランス人)、アンドレニ伯爵(ハンガリー人)、アーバスノット大佐(イギリス人)、ナタリア・ドラゴミロフ伯爵婦人(ロシア人)……分かりました?コンスタンチン博士(ギリシア人)、ブック氏(イギリス人?)、最大のヒントがラチェット(アメリカ人)……そしてもちろん、エルキュール・ポアロ(ベルギー人)でした。
重たい重たいキャリーバッグ片手に、ずるずると帰宅中のTYです。重い。

一応月曜日からテストがどちゃどちゃ押し寄せて来るんですが、まったく試験勉強が終わっていなくてですね。なのに日曜日は市場に出かけ、というかコミティアに出かけ、所属サークルのためせっせと部誌を売らねばならんという。しかもおとといから、模試の採点の内職が再び始まってしまいあっぷあっぷ。精神と時の部屋がマジで欲しい今日この頃です。本なんか読んでるバヤイじゃない。

というわけですから、今日学校に行った際に、偶然先輩に出くわして、オラ今日東西ミス研サークルで飲み会すっぞ(ただし関西1名)来いやゴルァ、と言われてないですけど、行けるわきゃないじゃないですか、えぇまったく。まぁどのみち、面白そうではありますけど、メンバーを見るとやっぱり行けないですね。浮くよ絶対……。


さて、特に書くこともないので、水曜日に学校で見たDVDの感想でも。フロスト警部第1話、『クリスマスのフロスト』です。初映像版フロストです。

あらすじは原作と大体同じです。ある少女が行方不明に&森を捜索中に白骨死体発見、の2つの事件が描かれます。原作はもっと事件があった気もしますが、まぁ100分ならこんなもんでしょう。
ただ、少女失踪に関しては原作と大幅に異なります。例えば牧師さんは全く登場しないし、そもそも少女の事件の結末そのものが根本的に異なります。
さらにフロスト警部の奥さんが、なんとまだ生きています。意識不明ではあるし、ってか(言ってしまって良いと思うけど)途中で死んでしまうんですけどね。フロスト警部の過去を手っ取り早く語るため、現在に持って来た、というところでしょうか。

肝心のフロスト警部ですが、まず原作ほど下品ではありません(笑)ドラマから原作に入った人はびっくりするんじゃないですかね……。また、被害者に対し、原作以上に同情的だと思います。ま、これらのおかげで大分見やすくはなっています。

とゴチャゴチャ相違点を書きましたが、これ、面白いですよ!適度な英国風ユーモア、全体的に地味で沈鬱な雰囲気、など、よく分かりませんがいかにも英国ミステリドラマといった感じ。モジュール型を取るミステリドラマはやはり面白いです。あまり暗くもなく、とっても見やすいですしね。これは続きが楽しみですよ~。


ロイ・ヴィカーズ『フィデリティ・ダヴの大仕事』、読了です。サクッと読める楽しい短編集でした。アニメ化したらかなり面白いんじゃないかなぁ。
現在エラリー・クイーン『靴に棲む老婆』読書中。これ、創元だったのか。

ちなみに全く関係ないですが、シャルル・エクスブライヤ『パコを憶えているか』って、アマゾン中古で10万円越してるんですね……誰が買うんだよ。
災厄の町
『災厄の町』エラリイ・クイーン(ハヤカワ・ミステリ文庫)

結婚式の前日に姿を消したジムが三年ぶりに突然戻ってきた。彼の帰りを待ちわびた許婚のノーラと結婚し、二人は幸福な夫婦となった。そんなある日、ノーラは夫の奇妙な手紙を発見した。そこには病状の悪化した妻の死を知らせる文面が……これはわたしを殺害するための計画か?美しい三人の娘を持つ旧家に起こった不思議な毒殺事件。架空の町ライツヴィルを舞台に、錯綜する謎と巧妙な奸計に挑戦するクイーンの名推理!(本書あらすじより)

めちゃくちゃ今さら感強いですが、『災厄の町』です。いいんです、これから1ヶ月はライツヴィル月間なんですから。1冊おきにクイーンでいきます。たぶん。

で、『災厄の町』です。素直な感想を言いますと、まず感心しました。今まで国名シリーズと『X』『Y』しか読んでいなかった身としては、こんなにストーリーが面白いミステリをクイーンが書けたのか!という驚きでまずいっぱいです。例えば『エジプト』とか、確かに自分の中では星5つレベルの面白さでしたが、じゃあ大好きかと言われると、うーん、なんですよ。理由はシンプル、何か退屈。これです。ロジックはグレイト、ヨードチンキなんかグレイトォォォ、でも何か退屈。だからある意味、ミステリとしてはアレでも『シャム双生児』が面白いわけで。

んがっ、ここで自分が声を大にして言わなくったってみんな知ってることですが、『災厄の町』は明らかに退屈のタの字もない。これは、延々と語られる人間関係でただただ読ませる物語なのです。話の筋としては、ある計画が明らかに→ある人物が死ぬ→ある人物が疑われる、だけ、という非常にシンプルなものなのですが、これがとにかく面白い。だいたい人が死ぬのが100ページ以上という時点で、謎解きオンリーミステリから逸脱しているわけです。

ミステリとしての観点、つまり犯人の意外性という点では、確かに少々物足りない嫌いはあります。というのも、誰かが疑われている場合、読者の思考としては、
①そいつは実際に犯人だけど、何らかの隠された理由によって黙っているに違いない
②ってか犯人じゃない
しかないわけで、そして読者の期待を裏切るのがミステリだ、という方向性で考えると、これはもう犯人が分かっちゃう可能性大です。ただ、そもそもそういう観点から読むこと自体がちょっと違ってきているわけですよね。また、動機の面ではある程度巧妙であり、そして『災厄の町』は、トリックなんかではなくその動機を描くためにのみ大半が費やされているわけですから、これはもう文句を付けるわけにはいかないでしょう。
この作品が、人間を描いたクイーンの最高傑作だ、と言われるのと、そりゃないだろう、もっと上は目指せるはず、とは思います。例えばサブのキャラクター達の書き込みがちょっと甘いかな、とか。ただ、ある意味一本しか道筋のない単調な物語を、人間感情を細かくえぐりだすことでこれだけ魅力的に語ることのできるクイーンは、やっぱり凄いですよね。傑作だと思います。

なお、エラリイ・クイーンは、真相を語るのに悩み苦しむ、従来の神懸かった探偵ではなくなった、なんて感想をよく見かけます。まぁ、その通りだとは思いますが、その点については特に何も思わず読了してしまいましたね……。というのも、真相を語ってはいけない場合に語らない、というのは、ある意味当然じゃないですか。そもそもそういう方針の、何て言うんですか、悩める探偵が書かれたミステリはそれまでにもいっぱいあるはずです。えぇっと、何があったかな、パッと思いつくのでは、古典的大大大傑作、E・C・ベントリー『トレント最後の事件』(1913)とか。そもそもクイーンの作品の中で数少ない自分が読んだものの中でも、『Y』とかそうじゃないですか。あまりその点を騒ぐ必要はないと思うんですが……。

書 名:災厄の町(1942)
著 者:エラリイ・クイーン
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ミステリ文庫 2-12
出版年:1977.1.31 1刷
    1998.10.15 26刷

評価★★★★☆
渋谷駅でのことですが、フト見ると、おそらく付き合い始めたばかりであろう高校生カップルが、見ているこっちがモジモジ、というかイライラするほど、テレテレと一緒に立っているではありませんか。手を握り合って顔をうつむけて。うぅん、なんかいいですねぇ。見ているだけでほっこりします。まさに青春。

しかし「付き合い始めたばかりであろう」なんて当て推量をしましたが、ひょっとすると付き合って数年なのかもしれないわけじゃないですか。初心を忘れず早数年。もしそうなら、世の人々に見せてやりたいですね、この様を。実に素晴らしい。

そういえば、以前読んだ87分署シリーズのどれか(後期の作品のはず)で、スティーブ・キャレラと奥さんのテディが寄り添っているのを遠くから見た男が、「あれはきっと愛人に違いない。でなきゃあんなに新婚みたいな様子でいるわけがない」みたいなことを呟いてましたね、確か。そんな結婚生活が送れれば、さぞ幸せなんでしょうけどねぇ。


で、昨日今日は、授業期間の後の補講期間とやらでした。自分も補講があったので行きましたよ、学校に。しかも今日連続で2つもですよ。連続になったのをありがたがるべきか、それとも2つあることを悔やむべきなのか……。

ちなみにその内の1つは必修の英語二列というやつで、自分がとっているのでは、最終発表として、パワポを使って8~10分、英語でプレゼンするんですよ。内容は自由で。
自由となると、前期に研究練習みたいな授業でミステリ翻訳史を扱ったTYとしては、やっぱりミステリ関連にしたいわけです。というわけで、おととい、海外ミステリの歴史をザックリ話して来ました。そこそこ笑いも取れたし、質問にも答えられたので、まずまずかな、と言ったところ。オススメは?と聞かれたんですが、1つ言えと言われても困るじゃないですか。いきなり『ナイン・テイラーズ』!とか『月長石』!とか言えないし。考えたあげく『毒薬の小壜』にしました。これならミステリ読みとか関係なく、若い人なら(?)楽しめる&感動出来るはず……と思いましたが、よく考えたら絶版でしたねこれ……。
まぁ、後は緊張しないように出来るかですねぇ。ちなみに内容はかなりアバウトで、各所から突っ込まれそうなのでここでは割愛。

その英語二列飲みを2月にやろうということになりました。おぉ、ナイスアイディア!総勢10人(7:3)だから調度良いし。こういう、授業が一緒になった人と盛り上がるのって、なんか楽しくていいですよね。ちなみに先生は……呼ぶと、会話が全部英語になるので(笑)


エラリイ・クイーン『災厄の町』をいまさらですが読了。今まで初期クイーンしか読んだことのなかった身としては、クイーンってこういうのも書けるんだ……と、ものっすごく新鮮でした。感想は近日中に。
現在、ロイ・ヴィカーズ『フィデリティ・ダヴの大仕事』。図書館万歳。