髑髏の檻
『髑髏の檻』ジャック・カーリイ(文春文庫)

刑事カーソンが休暇で赴いたケンタッキーの山中で連続殺人が。犯人はネット上の宝探しサイトで犯行を告知し、死体はどれも奇怪な装飾を施されていた。捜査に巻き込まれたカーソンの前に現れたのは、実の兄にして逃走中の連続殺人鬼ジェレミー。ディーヴァーばりのスリルとサプライズで人気のシリーズ第6弾。(本書あらすじより)

『ブラッド・ブラザー』『イン・ザ・ブラッド』と来てこれを読んで思ったんですが、なんかあれですね、ジャック・カーリイって思ったよりマトモなミステリ書くんですね……。
というわけで、ジャック・カーリイの好評シリーズ最新刊です。いまだに『ブラブラ』以前の『デス・コレクターズ』とか『百番目の男』とか読んでないんですよね、早く読まないと。

カーソンは地元の女刑事と協力しつつ、謎の連続猟奇殺人犯が残すメッセージを追います。
ざっくり思うことを書きますと、実は自分、よく出来た警察小説やサイコスリラーの楽しみ方がいまだによく分からないなぁと前から思っているのです。すごく面白いんだけど、犯人に振り回されて犯人が判明して最後ごたごたあって終わる、あー楽しかった、で70点くらいから上になかなかいきません。そんなこと言ったら超真面目な本格ミステリなんてもっと何もないまま終わっちゃうんだけど……。
『髑髏の檻』もそんな感じで、よく出来てるから特に文句を言いたいところが一切なく、まぁやっぱり70点でした。あれかな、キャラ小説として楽しまなきゃいけないのかなー。ちなみに帯にもある、犯人のメッセージの意味に関してはどう反応すればいいのか分かりませんでした……。

というわけで、うん、やっぱり最初の作品を早く読まないと……。

書 名:髑髏の檻(2010)
著 者:ジャック・カーリイ
訳 者:三角和代
出版社:文藝春秋
     文春文庫 カ-10-6
出版年:2015.08.10 1刷

評価★★★★☆
スポンサーサイト
イン・ザ・ブラッド
『イン・ザ・ブラッド』ジャック・カーリイ(文春文庫)

刑事カーソンが漂流するボートから救い出した赤ん坊は、謎の勢力に狙われていた。収容先の病院には怪しい男たちによる襲撃が相次いだ。一方で続発する怪事件―銛で腹を刺された男の死体、倒錯プレイの最中に変死した極右の説教師……。すべてをつなぐ衝撃の真相とは?緻密な伏線とあざやかなドンデン返しを仕掛けたシリーズ第五弾。(本書あらすじより)

世間では大変評判がよろしいのに、読んでみたらいまいちピンと来ない作家、っていますよね。自分の場合、ヘレン・マクロイなんかがそうなんですが、どうもジャック・カーリイもそうなのではないかと……いやまだ『百番目の男』とか読んでいないから何とも言えませんけど。

さて、『イン・ザ・ブラッド』なのですが、自分の中でまだ評価できていない難しい作品です。はっきり言うと面白くもつまらなくもなかったのです。こんなどっちらけの感想を持つことなんてめったにないんですが……。色々な人の感想を読んではみましたが、やっぱりよく分かりません。というわけでほとほとと困り果てているんですよ。

事件自体は楽しめました。赤ちゃん漂流事件や逆さ吊り説教師事件など、色々な要素が、一見バラバラ、だけど最後には(当然というか)一つにまとまっていく……というパターン。なんかこうモジュールっぽいものは基本的に好きで、それが結びついていくとなればそりゃあテンション上がりますよね。結びつき方も実に自然で上手いし。

ところがその捜査の過程がイマイチはまれないんです。淡々としているようで、突然赤ちゃん強奪事件みたいのが起きてバタバタして、また黙々と聞き込みして、というテンポにどうしても乗っかれませんでした。最初の方はのったりしてたから逆に乗りやすくて良かったんですが、まぁわりと終始こんな感じでしたね。
それからカーソンという主人公がまた好きでも嫌いでもないのです。一面では冷静で、一面ではかなり暴走的。それにはなんか色々理由はあったんですけど、だからと言って好感を持てるわけではないし。よく分からないんですよ、この人が。相方のハリーがブレないだけに、余計にそう感じてしまいます。

さらには色々な人が褒めているどんでん返し。あれがまずピンと来ないのです。感心しないとか驚けないとか以前に「ふーん」という感じで……。本格ミステリ的な面白さに相通じるものがあるらしいんですが、どういうことなのかサッパリ分かりません(とか言うと原理主義者っぽくて嫌だなぁ)。最近気付いたんですが、どうも自分にはあまり驚けないどんでん返しのパターンというのがある気がするんですよね……今後の課題です。

だから結局、どこかこれだ!という要素が自分には見つからなかったけど、かと言ってどこかけなすポイントがあるわけでもない、という感じなのです、たぶん。何を基軸に評価すれば良いのか分かりません。読みやすいだけに味のないうどん食ってるみたいというか(酷い例え)。『ブラッド・ブラザー』『イン・ザ・ブラッド』の2作を読んだ現時点では、カーリイに対して特に親しみを感じられないなぁというところなのでした。

書 名:イン・ザ・ブラッド(2009)
著 者:ジャック・カーリイ
出版社:文藝春秋
    文春文庫 カ-10-5
出版年:2013.10.10 1刷

評価★★★☆☆
ブラッド・ブラザー
『ブラッド・ブラザー』ジャック・カーリイ(文春文庫)

きわめて知的で魅力的な青年ジェレミー。僕の兄にして連続殺人犯。彼が施設を脱走してニューヨークに潜伏、殺人を犯したという。連続する惨殺事件。ジェレミーがひそかに進行させる犯罪計画の真の目的とは?強烈なサスペンスに巧妙な騙しと細密な伏線を仕込んだ才人カーリイの最高傑作。ラスト1ページまで真相はわからない。(本書あらすじより)

ミステリランキング投票時期のため読みましたが、ぶっちゃけ自分はこの手の現代ミステリが嫌いです。何だって異常殺人やらサイコパスやら狂人やらグロい死体やらばっかりなのかしら。勘弁してください。

というマイナスイメージのもと読み始め、で、事実上記の通りだったわけですが、とある大事なことに読み始めてからようやく気付きました。そう、これはシリーズ物だったのです!(笑)シリーズを最初から読んだ方が面白いことは間違いないとは思います(何しろ今までの内容をひっくり返しちゃうわけで)が、読んでいないからと言って問題があるわけではありません。

とにかく登場人物が一人一人魅力的ですね。主人公のカーソンや相棒のハリー・ノーチラス(何て名前だ)もいいですが、今作で登場するNYPD(ニューヨーク市警察)のシェリー刑事が特に面白いキャラクターだと思います。とは言っても断トツに面白いのはやはり兄のジェレミーです。というか、この小説の主人公は実質的にジェレミーだと言っても過言ではありません。彼の頭の良さを示すエピソードが出てくる度に、読む側としては何だか嬉しくなってしまうわけですね、えぇ。これはもうキャラクターとして反則です。
ちなみにアリス・フォルジャー警部補の口調が何だか違和感を覚えるのは自分だけでしょうか?どうも喋り方が定まっていないような気がするのですが……。

そしてこれら登場人物の複雑な関係が、物語の後半に一気に見えてくるわけです。この辺りの伏線の置き方はさすがですね。ただまぁ、終盤に出てくる人物関係はややいきなりかなぁという気もします。ちょっと展開が急すぎるのではないかと。

とにかく、死体のグロさと犯人の性格の異常性さえ我慢できれば、本書は読み物としてはかなり面白いと思います。ハッピーエンド的な、と言っていいのか分かりませんが、この終わらせ方もなかなかかっこいいですね。「ラスト1ページまで真相はわからない」とあるのは……うぅん、あんまり期待しなくていい気もしますが。


と、ここまで好意的なコメントですが、いえ実際面白いことは確かなんですが、この小説、ミステリとしてはやや微妙、という印象が強いです。特に本格物と期待するのは間違っていると思います。もちろんカーリイがゼロ年代に翻訳された「本格ミステリ大賞」を受賞したのは第2作『デス・コレクターズ』な訳で(ちなみになぜか分かりませんが、読む前はずっと『ブラッド・ブラザー』が受賞したのかと自分は勘違いしてまして、しかも本格ミステリ作家クラブは海外の団体だと思ってました)、しかも自分は第2作を読んでないから何ともいえないわけです。おまけに文春さんはどこにも『ブラッド・ブラザー』が本格だと言っていないわけですから、こんな指摘そのものが的を得ていないのかもとも思っちゃうんですが、読書メーターの感想とかを見ていると、どうもこれを本格だと言っている人が少なからずいる気がするんですよねぇ。

すみません、これを語ると長くなるので、続きは追記に記します(ネタバレなしで)。


えぇと、なんかちゅうぶらりんな感想になってしまいましたが、まとめると、面白く、読んでいる間はかなりのめり込みましたし、サスペンス性と緻密な構成力は素晴らしいですが、あまり好みじゃないなぁと言ったところです、はい。

書 名:ブラッド・ブラザー(2008)
著 者:ジャック・カーリイ
出版社:文藝春秋
    文春文庫 カ-10-4
出版年:2011.9.10 1刷

評価★★★★☆
... 続きを読む