製材所の秘密
『製材所の秘密』F・W・クロフツ(創元推理文庫)

青年が、旅先で偶然立ち寄った製材所。 そこではすべてが不自然だった。  トラックのナンバープレートに細工がしてあるではないか!  さらに、青年を見る運転手の敵意に満ちた目、製材所主任の娘の青ざめた顔……。いったい、ここでは何が行われているのだろうか?  〈サンデー・タイムズ〉紙のミステリ・ベスト99にクロフツの代表作として選ばれた不朽の名作。 本邦初の完訳版。(本書あらすじより)

超久々にクロフツでも読もうと本棚から一冊取り出したら、なんとノンシリーズでした。マジか。
フレンチ警視で有名なクロフツは、クロフツ登場前の最初の4作はノンシリーズ長編を書いています。順に『樽』『ポンスン事件』『製材所の秘密』『フローテ公園の殺人』です。『樽』しか読んでない……そもそもクロフツ3作しか読んだことないですけど。
でとにかく、先日復刊もされたこの『製材所の秘密』を旧版で読んだんですが、うーん、ダメですね、これは。わたしゃこの面白さが分かりません(断言)。前半の素人探偵(アマチュア)が製材所の秘密を探るべく探偵するところはまだ読めるにしても(でも退屈)、後半の警察が乗り出してからは本当にだらっだら。製材所の謎もあっはいという感じ。

フランスの製材所でナンバープレートの交換という不可解なことを目撃したメリマンは、製材所の惚れた女を救うべく友人のヒラードと共に製材所の秘密を調べ始めます。が全く分かりません。ヒラードは密輸ではないかと疑うが果たして……なんて言ってるうちに警察沙汰になっちゃうというお話。

本格ミステリではなく、捜査小説、冒険小説、犯罪小説に近いですね。ナンバープレートの交換という発端はなかなか魅力的で、潜入したりなんだりとなかなか冒険チックなことをして調べる主人公ズ。樽好きで知られるクロフツ大先生は主人公をトイレにも行かせず24時間樽に押し込んだりもします(これ狙ってるのか)。
まぁまぁだらけているとはいえ前半のメリマン・ヒラードの調査パートはまだ読める方。ところが後半、警察が乗り出してからが本当につまらないのです。何しろウィリス警部がやってることがかなり警察レベルを超えた無茶な感じで、主人公を交代した意味があまりないような気がするのです。うーん話も進まない。
おまけに肝心の製材所の秘密が、こう、そんなに面白くないというか。ナンバープレートも頑張ってはいるけど最後付け足し感があるし(ここ起点でもっと広げられたらいいのに結局イギリス側がメインになるからなぁ)。捜査面も犯罪面もどうにも中途半端で物足りませんでした。

というわけで総じてあまり楽しめなかったです。フレンチ警視が出て来るやつは数作読んで結構面白かったんですけど。当たり外れ大きいのか、それとも向き不向きの問題なんですかね、これは。

書 名:製材所の秘密(1922)
著 者:F・W・クロフツ
訳 者:吉野美恵子
出版社:東京創元社
     創元推理文庫 Mク-3-3
出版年:1979.02.02 初版
     1979.09.28 3版

評価★★☆☆☆
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スターヴェルの悲劇
『スターヴェルの悲劇』F・W・クロフツ(創元推理文庫)

スターヴェル屋敷が一夜にして焼失し、主人と召使夫婦の焼死体が焼け跡から発見され、金庫の中の紙幣が大量に灰になるという事件が起こった。微かな疑問がもとで、スコットランドヤードからフレンチ警部が乗り出すこととなった。事故か?放火殺人か?だが、フレンチの懸命な捜査を嘲笑うように、事件は予想外の展開をみせて……。クロフツ初期の傑作として名高い作品の完訳。(本書あらすじより)

初クロフツとして『英仏海峡の謎』を読んだところ、まぁまぁ面白くって、よしそんならと『樽』を読んで、ダメだちょっとムリ……となってはや3年。以来クロフツはなかなか挑みがたい壁となってしまったのでした。
で、このままじゃいかんということで、とりあえず代表作からと『スターヴェルの悲劇』にしたわけですよ。果たして結果は?

おぉ、結構面白い、というのが正直な感想。あらすじも何も見ないで読みはじめたんですが、最初の一章で黄金時代にしては信じられないくらい規模の事件が起こって、何だか分かりませんけどとりあえず興奮したのでつかみは良し。
火事に不審な点があるとのことでフレンチ警部がはるばるやってくるんですが、この人の捜査って、何だかものっすごい退屈なイメージがあったんですよ。ところがこれがなかなか読ませます。ちょっとずつ事件の裏が明らかになっていく様が楽しいんですよ。な、なるほど、こんな手がかりから!みたいな、読者も一緒に捜査に参加しているという感じでしょうか。
そしてフレンチ警部、どの作品でもそうなのかは知りませんが、今作ではやたらと昇進昇進と連呼しています。おっしゃ手柄を立てた、こりゃあ出世するでしょ、みたいに、虎視眈々とミッチェル主席警部の座を狙っているわけです。ってこんなキャラだったの?(笑)
しかし、登場人物一覧に載っているだけあり、このミッチェルさん、ちょっとしか出てきませんがかなりの切れ者です。当分出世は無理ですね。この人、他の作品にも出てくるんでしょうか。

というか実際のところ、今作でのフレンチ警部はあんまりかっこ良くありません。コツコツ犯人を追いますが、そんなにでかい手柄を立てられずに終わってしまうんです。読者としては、犯人を当てられないとしても、薄々真相に気付けてしまうと思います。特に犯人逮捕の数ページ前にもなるとほぼ分かります。ですから犯人当ての要素はそれほど強くはないでしょうね。あくまで捜査過程を楽しむべきミステリでしょう。

まあしかし、プロットはかなり良く出来ていると思います。代表作にあげられるだけはありますね。気軽な読書に最適かもしれません。
さて、次はどれを読めばいいのかなぁ。

なお、やたらと長い解説において、『フレンチ警部最大の事件』の犯人ネタバレがなされています。ちょ、勘弁してください。

書 名:スターヴェルの悲劇(1927)
著 者:F・W・クロフツ
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 106-30(Mク-3-7)
出版年:1987.9.25 初版

評価★★★★☆
2009.06.26 『樽』
『樽』F・W・クロフツ(創元推理文庫)

ロンドンの波止場に到着した汽船の積荷の樽の中から金貨と人の手が現われた。ところが、捜査陣が到着する前に、件の樽は忽然と姿を消してしまったのだ!樽の行方を追って、ドーヴァー海峡を挟み、ロンドン警視庁とパリ警視庁による精力的な活動が開始される。本書はアリバイ捜査の醍醐味を満喫させるクロフツの処女作であり、アリバイものの原点ともなった路標的名作。(本書あらすじより)

この間読んだ『英仏海峡の謎』がまあまあだったので、彼の代表作を手にとって見ましたが…。

犯人は誰だってすぐわかります。なにしろ、容疑者はほぼ2人ですから。警察にフレンチ警部がいないせいか、どうもつまらなかったです。そもそも長すぎ、単調でした。ここまで引っ張る必要を感じません。

足を使った操作、というのを、僕が好まないんでしょうが、微妙、というのが本音です。犯人の使ったトリックに関しては、鮮やかなことこの上ないんですが。これが別の作家だったならなぁ、と思わずにはいられません。これ、デクスターあたりなら、うまく仕上げられそうなんだけどなぁ。

まず、警察の人たちが決定的に謎を解けない人たち、という描き方をしています。そりゃいいんですが、後から出てきた探偵が全部解いちゃうってのもどうなんでしょう?最初から80パーセントまでは主人公警察だってのに。
また、犯人は犯人で、よくもまぁこんなトリックを仕掛けようと思ったもんです。入り組みすぎてて、読んでいるこっちが混乱します。というか、話が長尺すぎて、まとまりがなさすぎるのかもしれません。

こういう作風がクロフツの醍醐味みたいですが、推理小説はあくまで物語である、ってのが持論です。キャラクターももちろん大事だし(アメリカのミステリは本当にキャラが立ってない)、なにより日記になっちゃだめだと思うんです。ただの好みなんですけどね。

書 名:樽
著 者:F・W・クロフツ
出版社:東京創元社
      創元推理文庫 Mヘ-2-1
発 行:1965. 初版発行
     2006.3.17 66版発行

評価★★☆☆☆
『英仏海峡の謎』F・W・クロフツ(創元推理文庫)

英仏海峡をフランスへ向かう定期連絡船。バカンス客で満員のチチスター号の進路を横切って漂流する一艘の小型遊覧船ヨットがあった。そのハッチに頭を撃たれた男の死体、船室にはさらに別の男の死体が。どちらも死んで一時間ほどしかたっていないばかりか、二人以外にヨットの中には誰一人いなかった!海の上の密室で起こった証券会社社長と副社長の死の謎を追うフレンチ警部。(本書あらすじより)

クロフツ初読です。イギリスの黄金時代のミステリ作家ではトップクラスで超有名なクロフツですが、僕まだ読んだことなかったんです。『樽』がかなり有名なんですが、なぜか図書館になくて(泣)それで、これをとったわけです。

いわゆる、アリバイ崩しってやつです。メイントリック含めて、結構読みやすかったです。説明的だし、フレンチ警部はフツーの人間だし(もうちょっと探偵に個性をつけてもいいんじゃないでしょうか?)、作品全体にどこといった特徴がないんですが、それでもストーリーテラー、というか、作家としてうまかったんでしょうね、話の運びが。

『樽』を読み終えた後で考えてみると、むしろ『樽』より読みやすいと思います。正直なところ、あの作品は退屈でしょうがなかったので。こちらの作品の方が、まだ「退屈派」ではないと思います。

書 名:英仏海峡の謎
著 者:F・W・クロフツ
出 版:東京創元社
   創元推理文庫 Mク-3-11
発 行:1960. 初版
     1990. ?版

評価★★★☆☆