小鼠 月世界を征服
『小鼠 月世界を征服』レナード・ウイバーリー(創元推理文庫)

北アルプス山中の小国グランド・フェンウィック大公国──この国の近代化を画す首相マウントジョーイ伯爵は、観光事業用の道路整備と城内の配管工事を施工するために、アメリカに援助借款を申し入れようともくろんだ。だが反対党の攻勢にあって思うようにいかない。そこで首相の考えついた口実は……またまた全世界を震撼させる、月世界有人飛行という大それた計画だった。折しも、コーキンツ博士は、大公国の誇る年代もののワインから強力な放射性元素を発見した! 米ソ両大国を向うにまわし、果たして大公国は月世界に一番乗りできるや否や?(本書あらすじより)

2016年最後に読んだ本です。ぱっと読み切れるものをと思って手に取りましたが……いやー、やっぱりこのシリーズ面白い! 荒唐無稽さという点で1作目の『ニューヨーク』に匹敵する(むしろ勝ってる)し、第3作の『ウォール街』よりこっちの方が好き。これはおすすめです。

ヨーロッパの超小国グランド・フェンウィック公国が、今度は宇宙開発に挑戦。再三にわたってロケットを飛ばすことを発表していたのに全く信用されないまま月日が経ち、ついにアメリカとソ連に先駆けてロケットを飛ばしてしまうのですが……。
全くもってむちゃくちゃですが、これがとにかく楽しいのです。グランド・フェンウィックの動向も面白いけど、それ以上にばたばたしているアメリカとソ連の描写についついニヤリとしてしまいます。ソ連なんてわざわざスパイを送り込んでくる始末。風刺・ユーモア小説として第1作以上に楽しい出来なんです。

終盤があっさりしているけど、それもそれでらしいし、何よりオチが最高に決まっているので文句なし。このシリーズは外れないねー。残る『小鼠 油田を掘りあてる』が楽しみです(絶対面白いでしょ)。


原 題:The Mouse on the Moon(1962)
書 名:小鼠 月世界を征服
著 者:レナード・ウイバーリー Leonard Wibberley
訳 者:清水政二
出版社:東京創元社
     創元推理文庫 Fウ-2-2
出版年:1977.05.13 初版
     1985.07.05 4版

評価★★★★☆
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小鼠 ウォール街を攪乱
『小鼠 ウォール街を攪乱』レナード・ウイバーリー(創元推理文庫)

北アルプス山中の小国グランド・フェンウィック大公国――この平和でのどかな国の国家予算は過去五百年間収支のバランスがとれ、通貨も安定していた。そこへ突然、ふってわいたような大金が転がり込んできた。アメリカのチューインガム会社に眠っていた大公国の投資が、禁煙運動のおかげで思いもかけぬ百万ドルという大金をもたらしたのだ。これをきっかけに、大公国の経済は危機に瀕し政局は混乱する。そこでグロリアナ大公女は、投機をすれば元も子もなくなるに違いないと、その金を株の投資にまわしたところ……世界経済を痛烈に戯画化した抱腹絶倒、痛快無比の傑作シリーズ!!(本書あらすじより)

隙間時間を埋めようと思い、本棚から一日で読めるよう一番薄い作品を選んだら、これでした。この薄さがちょうどいいんですよ(笑)

レナード・ウイバーリーの作品は、グランド・フェンウィック王国という、ヨーロッパのアルプスど真ん中、面積40平方㌔のド田舎王国が世界に混乱を巻き起こすユーモア小説・「小鼠」シリーズが4冊邦訳されてます。 第一作『ニューヨークを侵略』は弩傑作、必読(?)の名作です。

今回読んだ第三作『小鼠 ウォール街を攪乱』は、王国がうっかり100万ドルだか1000万ドルだかを手にして、国内が壮絶なインフレの危機にあい、金を死に物狂いで捨てようと、アメリカの死にかかった会社の株を買い占めたところ……というもの。当時のジョンソン政権を皮肉りたかったらしいですね。
安定のユーモアで、やはり爆笑物。ただ、プロット的には第一作の方がやはり上ですね。ま、凝った笑いじゃなくて、ほのぼの系クスクス笑いを目指してるので、安定株であるのは確か(ウォール街なだけに)。株に関するゴチャゴチャは読み飛ばしても問題なし。 ひたすら変な方向に突っ走るフェンウィック王国を見ているのは、なんだかとっても安心します。

……という、簡単な感想で十分かな。ユーモア小説って、やっぱり良いですね。また復刊してくれないでしょうか……。
あと、Amazonのタイトルが2つとも微妙に間違ってるのは……。

書 名:小鼠 ウォール街を攪乱(1969)
著 者:レナード・ウイバーリー
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 526-3(Fウ-2-3)
出版年:1977.11.11 初版

評価★★★★☆
小鼠 ニューヨークを侵略
『小鼠 ニューヨークを侵略』レナード・ウイバーリー(創元推理文庫)

北アルプス山中の小国グランド・フェンウィック大公国――自由を旗印に平和な日々を送っていたこの小国にも、人口の自然増による社会問題がもち上がっていた。外貨を獲得する手段は、大公国が世界に誇るワインだけ。増収をあてこんだワインの水割り論をめぐって賛杏が国を二分し、決断を迫られた大公女は何とアメリカに宣戦を布告するという奇想天外な手を考え出した。折も折、アメリカでは窮極兵器Q爆弾が発明されたばかりだった……。核による大国支配の国際政治を痛烈に戯画化した抱腹絶倒、痛快無比のユーモア小説。傑作シリーズの開幕!(本書あらすじより)

いっやー、もう、これはね、面白かったですよ。非常に良質なユーモア小説です。読んでいてひたすら楽しいです。あらすじはちょっと魅力的じゃないかもしれませんが、そんなこと気にしないで読むことです。
アメリカに戦争を仕掛けるというとんでもないことをしているグランド・フェンウィック大公国は、やってることは極めて大まじめで、というか例え石弓で攻めていようが終始一貫まじめなんですが、小国と大国の戦争という構図があまりにばかばかしくて笑ってしまうんですよね。周りが誰も本気で受け取ってくれないせいで、ま、こういうことになっちゃうんですが、読めば分かります。個人的には、戦争が終わった後の方がより面白かったかな。

さすがはユーモア小説でして、冷戦時代の当時(1955年)をとことん皮肉っています。現実にこうなると本当にいいんですが。作者の出身国であるアイルランドも小国の一つとして登場しますが、とんでもない田舎者として扱われているのが面白すぎます。まぁ大体、この戦争を笑ってしまうこと自体も批判しているんでしょうね。ちょいちょい出てくる倫理的な深い洞察も魅力的。これを読んだ当時の人たちは何を考えたのやら。原作発表の4年後に映画化されたようで、このことからも当時の人気っぷりがよく分かります。冷戦時代を扱っているとはいえ、今読んでも全く色あせない面白さです。もちろん、読む際にそんな難しいことを考える必要は全くありません。

キャラクターの書き分けが秀逸で、アメリカの上層部の連中とか、ロシア大使とか、いちいち楽しませてくれます。バスコム父はいいキャラしてますよね。グロリアナは、まさか最後ああなるわけですからね、可愛すぎです。

シリーズは全部で4作あり、今現在手元に第3作があります。ぜひ全部読みたいところ。創元さん、もう一度復刊頑張ってみてくださいよ。

書 名:小鼠 ニューヨークを侵略(1955)
著 者:レナード・ウイバーリー
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 526-1(Fウ-2-1)
出版年:1976.12.24 初版
   1982.5.7 4版

評価★★★★★