毒薬の小壜
『毒薬の小壜』シャーロット・アームストロング(ハヤカワ・ミステリ文庫)

ギプソン氏は初老の学校教師として生活は安定し、礼儀正しく、上品だった。親子ほども年の離れたローズマリーも、小柄でおとなしく、気だてのいい女だった。しかし、突然の自動車事故が、彼の世界を粉々にした。妻の不倫が足の不自由な彼の心に重くのしかかってきたのだ。彼は自殺を決意し、ひそかに毒薬の小壜を入手したが……。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞の、心暖まるサスペンス。(本書あらすじより)


傑作です!!!!!!


いやー、自分が本読みで良かったと思いました。だってこんな作品が読めるんですから。ちまたで言う名作だというのは本当です。もうこれからは運命論者にはならないし、他人を決め付けたりもしませんとも。


まず言っておきますと、自分はサスペンスが大いに苦手です。あのとめどない緊張感に耐えられないんですよ。ですから、上のようなあらすじの話は、ぶっちゃけ嫌いの部類に入ります。

が、ですよ、この話は「サスペンス」なんていうジャンルにくくれるものではありません。どちらかというとヒューマンドラマです(そんなジャンルあるのか?)。あらすじにあるような、そんなドロドロした話ではないのです。主人公ギブソン氏が前半で「気付いていった」新たな世界が、後半数々の素敵な登場人物により、いい意味でぶっこわされていくのです。私は自分の物の見方は、この登場人物たちと比べるとなんて浅はかなんだろうと思いましたよ。バス運転手のリー・コフェイが個人的には好きです。

とにかく一人として無駄な人物がいません。後半はコメディだという人もいるようですが、ユーモアミステリとは言えないと思いますし、コメディかというとそうとは言い切れない面があるし。ジャンル分けしにくいですねぇ。そもそもジャンル分けすべきじゃないんでしょうが。


とにかく前半の「静」のストーリーをふまえての後半の「動」という展開が非常に効果をあげていますね。主人公の心の動きだけを延々と述べる前半は全く飽きさせることがありません。後半はそれこそ一気読みで、一人、一人と車に乗る人が増えていくのがまたなんともいえない面白さがありますね。そのメンバーも多種多様でありながらみんな素敵な心の持ち主であり、いたって普通なポールと対比させることで、その印象を一層強めています。結末に関しては自分で確かめて下さいな。最後の場面の「小さなグラスから、何かの液体が~」っていうフレーズは、とってもいい表現だと思います。


なんかまとまりがないですが、読み終わって一日気分がずっと良かった本です、とまとめておきます。


書 名:毒薬の小壜(1956)
著 者:シャーロット・アームストロング
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ミステリ文庫 46-1
出版年:1977.10.31 初版
    1998.12.15 4刷

評価★★★★★
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