『悔恨の日』発売

2018-02

『嘘の木』フランシス・ハーディング - 2018.02.11 Sun

ハーディング,フランシス
嘘の木
『嘘の木』フランシス・ハーディング(東京創元社)

高名な博物学者サンダリー師による世紀の発見、翼ある人類の化石。それが捏造だという噂が流れ、一家は世間の目を逃れるようにヴェイン島へ移住する。だが噂は島まで追いかけてきた。そんななかサンダリー師が死亡する。娘のフェイスは父の死因に疑問を抱くが……。謎めいた父の手記。嘘を養分に育ち、食べた者に真実を見せる実のなる不思議な木。フェイスはその木を利用して、父の死の真相を暴く決心をする。コスタ賞大賞・児童文学部門賞をダブル受賞した大作ファンタジー。(本書あらすじより)

年末ランキング投票の締め切り後、こんな本が出てたのか!投票し逃した!と話題になり、いつの間にか第9回翻訳ミステリー大賞の最終候補作にまで食い込んでいる作品です。この話題っぷりだと、大賞も取るんじゃないか……?
というわけで読んでみました。ミステリとファンタジーとYAの純粋な融合が、非常に心地よい作品です。これは好きな人はすっごい好きだろうなぁ。

時代は19世紀、進化論の是非をめぐって科学者たちが争っていたころです。主人公は、サンダリー師の娘、フェイス。サンダリー師は科学者として高名な人間でしたが、発掘した化石の偽装疑惑が生じたため、その噂から逃れるため一家全員島に移住することになります。フェイスはその島で、父親の隠していたあることについて知ることになるのですが……。

フェイスは科学がひたすら好きな、そこらの科学者よりもよっぽど優秀な女の子。しかし当時は「女性」というだけで頭が悪いとみなされる時代(骨相学なんかも登場します)。父親である厳格なサンダリー師も、娘のことは低くしか評価していません。しかし、抑えきれない好奇心を秘めたフェイスが、やがてとんでもない秘密を探り当て……という流れは、非常にYAっぽいですね。
当時の女性を取りまく環境がこの上なく冷静に、シリアスに描かれているため、物語は終始重苦しい雰囲気が漂っています(アラン・ブラッドリーなどとは全然方向性が異なります)。両親からも理解されず、島の人からも無視されながらも、孤独なフェイスは懸命に真相を探り当てようとするのです。

本格ミステリとしては、真相解明が徹底的な伏線芸であることが純粋にびっくり。あと、ミスディレクションというか、読者の盲点をつくやり方というか……21世紀の読者も、結局こういう見方しか出来ていなかったんでしょう?と作者に煽られるかのような犯人判明シーンは非常に上手いと思います。物語のテーマと、その謎解きが、見事に結びついていますよね。
YA・少女視点の小説としては、いくら優秀でも自分の見方が一面的であったことに、フェイスが気付く終盤の母親との会話、からの、ラストに至っても(ミス・ハンターなどを)完全に理解できていない当時の14歳の限界、などをしっかり描けているところも良かったです。等身大のフェイスの成長小説を、21世紀の読者が客観的に眺める、という構成が、ミステリ部分ともどもめちゃくちゃ秀逸で、技巧的なんですよね。安易な方向に流れないボーイミーツガールも、変に主人公をヒロイックにさせておらず、良いと思います。
ミステリとファンタジーの融合具合も絶妙です。ファンタジーがファンタジーでなかったとしても、つまり「嘘の木」がなかったとしても、合理性が失われない展開を用意しつつ、あくまで徹底的にファンタジーな「嘘の木」というアイテムが効果的に用いられているあたりが好き。ファンタジー嫌いな人も、こういう絡み方なら許容できるのではないかな、と。

というわけで、確かに一読の価値はあるでしょう。個人的には、自分のランキングには影響しなかったかなー、とも思います。

原 題:The Lie Tree(2015)
書 名:嘘の木
著 者:フランシス・ハーディング Frances Hardinge
訳 者:児玉敦子
出版社:東京創元社
出版年:2017.10.20 初版

評価★★★★☆
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『伯母殺人事件』リチャード・ハル - 2018.02.05 Mon

ハル,リチャード
伯母殺人事件
『伯母殺人事件』リチャード・ハル(創元推理文庫)

アイルズの『殺意』クロフツの『クロイドン発12時30分』と並ぶ、倒叙推理小説三大名作の一つである。遺産を狙って、伯母を殺そうとたくらむ男がこころみるプロバビリティの犯罪! 一度二度三度、彼の計画の前に伯母の命は風前の灯となる……しかし、がぜん後半に至って話は意外な展開を示す。推理小説ファンが必ず到達する新しい境地。(本書あらすじより)

今の俺はいかなる地味なミステリでも行けそう、という確信から、なんとなく地味そうという理由でリチャード・ハル『伯母殺人事件』を読みました。三大倒叙ミステリの一冊として名高い本作ですが、『クロイドン』も『殺意』も未読なんですよね。なんか興味わかなくて。
……なんて言っていた自分を大いに恥じます。え、ちょっと待って、これやばくない? どえらい傑作じゃない???
1934年発表ということですが、当時としてはこれ以上ないってくらいのベストな長編ミステリだと思います。決して「三大倒叙」の枠におさまるようなもんじゃないのです。

自分では賢いと思っているけど、どう見てもダメっぷりがすごい甥が、伯母を殺そうと四苦八苦する、というまさに犯人側から事件を描いた倒叙な内容。シリアスさはほとんどなく、どちらかというとスラップスティックコメディっぽいです(『レディ・キラーズ』みたいな)。

ひたすら底意地の悪い英国ユーモアが全編を覆い、それが一筋縄ではいかない中盤以降の展開と実に効果的に結びついているのですが……いやぁ、倒叙も、殺して警察の捜査から逃げようとする話ではなく、そもそも殺すところからして上手くいかない話だとめちゃ楽しいものですね。
そもそも、甥が伯母を殺そうとした理由からして、メインは財産目当てではなく、うざいから、くらいの理由からスタートするのです。黄金時代のゲーム的本格ミステリは、やはりこうでなくっては。ユーモアたっぷりで、地味さなど全くありません。

とは言え、所詮刑事コロンボを経た我々が、今さら大昔の倒叙なんて読んでも……みたいな思いを抱いているそこのあなた、いやいや、少なくとも本作に関しては、古典と侮ってはダメです。はっきり言って、黄金時代の無限に存在する本格ミステリの中でも、21世紀に残り得る有数のミステリだと思います。すっげぇじゃんこれ、という感じは、『ビッグ・ボウの殺人』読了時の感覚に近いのですが、やっていることはあれ以上ですね。
先ほど底意地の悪い英国ユーモアとか、ゲーム的本格ミステリと言いましたが、本書のラストは、いわばその究極の着地点でしょう。ネタバレを食らわないうちに、ぜひ新鮮な気持ちで読み、そしてぶっ飛んでください。

というわけで、2018年、25歳にもなって、『伯母殺人事件』に大いに感心してしまいました。今さら興奮してしまって恥ずかしいので、『殺意』と『クロイドン発12時30分』も今年中に読んだ方がいいかな……まぁ、これを上回れるとは到底思えないけど……。

原 題:The Murder of My Aunt(1934)
書 名:伯母殺人事件
著 者:リチャード・ハル Richard Hull
訳 者:大久保康雄
出版社:東京創元社
     創元推理文庫 Mハ-6-1
出版年:1960.01.15 初版
     1992.06.12 16版

評価★★★★★

『鷲は舞い降りた』ジャック・ヒギンズ - 2018.01.31 Wed

ヒギンズ,ジャック
鷲は舞い降りた
『鷲は舞い降りた』ジャック・ヒギンズ(ハヤカワ文庫NV)

ヒトラーの密命を帯びて英国東部ノーフォークの一寒村に降り立ったドイツ落下傘部隊の精鋭たち。彼らの任務はこの地で週末を過ごすチャーチル首相を誘拐することだった。指揮官は歴戦の勇士シュタイナ中佐。見方は軍情報部の女スパイとIRAの兵士。 イギリス兵になりすましたシュタイナたちは着々と計画を進行させていく……世界の命運を左右する極秘作戦の成否は? 戦う男たちの勇気と闘志を謳いあげる冒険小説の最高傑作!(本書あらすじより)

2017年は、『赤い収穫』『利腕』『寒い国から帰ってきたスパイ』『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』『ロウフィールド館の惨劇』などの「何か名作って言われてるしすごいんだろうけど、ほっといても読まなそうな作品群」を倒すことが出来たのですが、そろそろ2018年の目標も立てなければならないのです。というわけで、2018年の目標がこちら。

マスト︰『鷲は舞い降りた』『死の接吻』『さむけ』
準マスト:『さらば愛しき女よ』『初秋』『千尋の闇』『わたしを離さないで』『荊の城』
新規:『Zの悲劇』『警察署長』『クリスマスに少女は還る』『チャイルド44』

マストは2016年から、準マストは2017年から読まねばと言い続けているので、そろそろ何とかせねば……。
というわけで、有言実行、今回はジャック・ヒギンズ『鷲は舞い降りた』の不完全版です。完全版を読もうか迷ったのですが、とりあえず最初に日本で受け入れられた方、かつ薄い(ここ大事)、ということで。『女王陛下のユリシーズ号』(1955)のマクリーン、『深夜プラス1』(1965)のライアル、『高い砦』(1965)のバグリイ、『ジャッカルの日』(1970)のフォーサイス、『鷲は舞い降りた』(1975)のヒギンズ、で「英国冒険小説読んどけ群」感がないですか。ないですか、そうですか。この中で唯一の未読が『鷲』。
読んでみると、えっ、意外とドンパチする小説だったんだ、というのがビックリ。面白かったのですが、色々な点で不満も感じました。

チャーチル誘拐という、無茶な指令がヒトラーからくだり、これが様々な人間によって実行されるまでの物語。前半はひたすらドイツ側の準備が、後半はその作戦、およびイギリス側や作戦現場の村の人たちの対応が描かれます。
ポイントは、作戦が上手くいっていないことでしょうか。もちろん、ヒトラー誘拐は失敗するわけです(ということは冒頭から作者ヒギンズによって述べられています)。ですから、冒険小説としては『女王陛下のユリシーズ号』のように「失敗の物語」に入ります。ドイツ側の無茶な作戦の準備をじっくり描写し、それが一気に瓦解し、男(と女)たちが華々しく散る、避けようのない失敗を見せてくるのは上手いし、十分楽しめます。
ただ、その失敗が、ヒムラーというダメ上司の余計な介入などを原因としているのが楽しくないんですよ。中間管理職はつらいのです。そのつらさを書こうとしているのも分かるんですが、作戦の失敗をバカ投入により引き起こす冒険小説はどうも気に入らないんだよなぁ。ガチでやってガチで失敗してほしいじゃないですか。
あと、やっぱり自分は捜査小説が好きなんだなぁ、と。緻密な作戦を、これまた頭脳で迎え撃つような作品。『ジャッカルの日』や『エニグマ奇襲指令』みたいなやつです。実際はミスや偶然での失敗の方が多いんでしょうけど、やっぱり頭脳戦を見たいなって……。

なんだかんだ重くなりすぎないヒギンズの書き方は結構好きです。ドイツ側の反ナチス(戦争やヒトラーに嫌気がさしている様)っぷりをちょっと強調しすぎかなと思いましたが、ドイツ側に英独どちらでもないIRAのデヴリンという存在を投入しているおかげで、そこまで気になりません(どっかのイギリス人は知らん)。キャラクターが良いだけに、失敗ありきの作戦をもう少し上手く書いたものを読みたかったです。

ところで、最後のチャーチルのやついるか?とか、生き残った人々のその後(の生死)をちょっとでもいいからエピローグ的な感じで教えて欲しいよなぁ、というかそれを作中のヒギンズが言わない意味が分からないよなぁ、などと思って続編『鷲は飛び立った』のあらすじを見たら……えええええええ、こんなんありかよぉぉぉぉぉ案件だったんだけど、どうなんでしょうかこれは。面白いの?
あと、『ジャッカルの日』や『鷲は舞い降りた』のように、史実に隠された事件、という体裁を取っていて、最後にその作戦が成功し、まさかのパラレルワールドであったことが明らかになる衝撃の結末の冒険小説はないんですか……と聞こうと思ったんですが、これ聞いた時点でネタバレになるやつじゃん。映画では1作聞きましたが、小説を知りたいなぁ。

原 題:The Eagle Has Landed(1975)
書 名:鷲は舞い降りた
著 者:ジャック・ヒギンズ Jack Higgins
訳 者:菊池光
出版社:早川書房
     ハヤカワ文庫NV 263
出版年:1981.10.31 1刷
     1994.10.31 28刷

評価★★★★☆

『ハニーと連続殺人』G・G・フィックリング - 2018.01.16 Tue

フィックリング,G・G
ハニーと連続殺人
『ハニーと連続殺人』G・G・フィックリング(ハヤカワ・ミステリ)

海から引き揚げられた全裸の女─見るかげもなく水ぶくれしたその女はミス二十世紀の最有力候補と目されていたグラマー美人だった! 世界の美女を一堂に会して美を競うミス二十世紀美人コンテストを舞台に進行する恐怖の殺人劇! 胸のすくような活躍と、並みいる美人を圧倒するお色気をみせるハニー・ウェストに喝采を!(本書あらすじより)

なんじゃこのあらすじは。
ル・カレが重すぎたので、次は軽いものを……と、フィックリング夫妻によるハニー・ウェストシリーズです。ほぼ1年前に読んだ『ハニー貸します』はめちゃ面白かったのですが、その前に読んだ『ハニー誘拐事件を追う』はダメだったという、なかなか信用できないシリーズ。今回は……おぉ、やったぞ、当たりだ。

ミス二十世紀の最有力候補と思われる水死体が発見された。ハニー・ウェストが捜査を開始したが、コンテスト主催者は事件を否定。犯人はコンテストの候補者の中にいるのか、はたまた別なのか? 真相を追い求めて、ハニーはメキシコに向かうが、そこで思わぬピンチに……。

いつもと比べると、サスペンス味が強めです。ハニー・ウェストのお色気もやや抑え目でしょうか。ミス二十世紀をめぐるゴタゴタを、とにかく手を変え品を変え国境すら越えて、死体を5つくらいゴロゴロ(時に無意味に)転がしつつ、200ページで読み物としてまとめあげるという、思ったよりこなれた書きっぷりが心地よいですね。
ハニー・ウェストシリーズって、基本的に本格ミステリ志向じゃないですか。今回も、まぁここまで来たら犯人誰でもいいんじゃねぇか、なタイプの作品ではありますが、最後の犯人を明かすやり方にはかなり驚かされました。こ、これが真の「ラスト一行の衝撃」ってヤツか……(違う)。冗談はさておき、このラストの処理の仕方には結構感心しました。サスペンス重視とはいえ、やることはやっているのです。
登場人物全員が何かしらの形で殺人に関わっていることもあり、話はややこしいことこの上ないのですが(とりあえず複雑に作っときゃいいや、という考えな気もする)、それなりに読み進めて行くだけでもしっかり説明されていくのですから、やはりこの手の軽ハードボイルドは侮れません。カーター・ブラウンしかり。ちなみに本作を「『ハニーと連続殺人』は俗っぽい『俳優パズル』」と評している方が Twitter におられましたが、まさに言い得て妙。

ところで、ミス二十世紀の候補者である、日本代表サムシ・ノトガ(どっちが名字で名前で漢字はどう書くんだ)なる女性が登場します。彼女が原爆について、「あの爆弾が落ちなかったら、もっと犠牲者がふえたかもしれないとでも思えば、まあ――」と言うシーンがあるのですが、このへん当時の(現在でも?)アメリカの限界を感じます。

結論:『貸します』>『連続殺人』>>『誘拐事件』。個人的には『ハニー貸します』のカオスっぷりと雑っぷりの方が好きですが、本作も十分楽しめました。カーター・ブラウンともども、疲れたら読みたいシリーズに入れましょう。いや、その前に作品を確保しなくてはだけど……。『Gストリングのハニー』『ハニーは闘牛がお好き』『血とハニー』『ハニー、ナチスに挑戦!』を依然として探索中です。誰か!

原 題:Honey in the Flesh(1959)
書 名:ハニーと連続殺人
著 者:G・G・フィックリング G.G. Fickling
訳 者:平井イサク
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ 935
出版年:1966.05.15 1刷

評価★★★★☆

『利腕』ディック・フランシス - 2017.12.29 Fri

フランシス,ディック
利腕
『利腕』ディック・フランシス(ハヤカワ・ミステリ文庫)

片手の敏腕調査員シッド・ハレーのもとに、昔なじみの厩舎からの依頼が舞い込んだ。絶対ともいえる本命馬が、次々とレースで惨敗を喫し、そのレース生命を断たれていくというのだ。馬体は万全、薬物などの痕跡もなく、不正の行われた形跡はまったくないのだが……調査に乗り出したハレーを待ち受けていたのは、彼を恐怖のどん底へ叩き込む恐るべき脅迫だった! 『大穴』の主人公を再起用しMWA、CWA両賞に輝く傑作。(本書あらすじより)

フランシスの競馬シリーズ、以前に『興奮』を読みましたが、正直なところ自分の中では「そこそこの面白さ」くらいの作品でした。良質なスリラーではあるけど、そこまで突き抜けたものは感じず、これがもし東西ミステリーベスト100の順位通り、フランシスのベストなのだとすれば、もうそこまで読まなくてもいいかなと。ブログの過去記事見たら、「あくまで自分の中では80点、90点のミステリではないんだけど、でもこれは75点くらいの、ちょうどいいところにあるっぽい気がします。そしてこの人の作品は全部そうなんだろうなぁという」などと調子のいいことを書いています。でももし、75点を超えない作家なのであれば、たぶん数作読んだら読むのやめちゃうんだろうな……そんな気分で、今回『利腕』を手に取ってみたのです。

何ですかこのぐうの音も出ない作品は。傑作でしかないではありませんか。本当にやばい。『興奮』のベタなかっこよさとは全然違うではないですか。ごめんよディック・フランシス。

主人公は、ディック・フランシスの競馬シリーズでは数少ないシリーズキャラクターである、競馬専門調査員シッド・ハレー。元は競馬騎手でしたが、落馬事故をきっかけに片腕を義手にせざるを得なくなり、調査員に転職。業界では知り合いも多く、調査員としても優秀な彼の元に、本命馬が謎の調子の悪さを見せて失速する事件の調査が依頼されます。その他にも多種多様な事件が依頼される中で、ハレーは突然調査をやめるよう脅迫を受けるのですが……。

という話であることは、読んでいけばすぐに分かります。なるほど、モジュラー型のごとく同時に多数の事件を扱う、どんでん返しも鮮やかなハンディキャップ私立探偵ものだな。折り合いが悪い元妻も登場してますますネオ・ハードボイルド風だな……などと思っていたのですが、途中から全くそんなものではないことが分かり衝撃を受けました。いや、確かにミステリとしてのプロットだけ見れば、その通りで間違いはないのです。しかし、それだけでも既に十分な出来なのに、そんなところでは終わらないのが『利腕』のすごいところであり、傑作たるゆえんなのです。

まず単純にミステリとしての要素だけ見ると、馬が不調になる事件、シンジケートの件、元妻の詐欺師事件、保安部の不正、が、一方では一切交わらず、一方ではゆるく結びつきながら、作品全体を構成しているのが上手いですよね。詐欺師のやつなんて本筋からは完全に浮いているのに、シッド・ハレーという人間を見せるための道具として完璧に配置されています。
そう、これは、シッド・ハレーという人間を、どうぐっちゃぐちゃにすれば、読者だけに彼をかっこよく見せられるのか、ということをとことんまで突き詰めた作品なのです。だから、読み終わった瞬間に「かっけぇ」「かっけぇ」「かっけぇ」としか言えませんでした。脳がバカになります。
こういう風に主人公を見せてくれる小説を初めて読んだもので、とにかく感動しました。中盤の脅迫で、なんだこの展開は、と思いましたが、こんな話になるとは思ってもいなかったのです。ある意味普通な、だけどある点では譲れないシッド・ハレーに対して投げかけられる最後の言葉……ここまで完璧な終わり方ってあります?

やはり名作は侮りがたし。競馬についての知識なんて一切いりません。個人的には、『利腕』は『興奮』に圧勝です(東西ミステリーの1985年版は『興奮』19位、『利腕』48位、2012年版は『興奮』35位、『利腕』46位でしたが、なぜこうなったのか割と意味が分かりません)。うーん、俄然ディック・フランシスに興味がわいてきたぞ。これを超える作品があるのであれば、ぜひ読みたいものです。

原 題:Whip Hand(1979)
書 名:著 者:利腕
著 者:ディック・フランシス Dick Francis
訳 者:菊池光
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ文庫 12-18
出版年:1985.08.15 1刷
     1999.03.15 20刷

評価★★★★★

『黒い睡蓮』ミシェル・ビュッシ - 2017.11.21 Tue

ビュッシ,ミシェル
黒い睡蓮
『黒い睡蓮』ミシェル・ビュッシ(集英社文庫)

モネの“睡蓮”で有名な村で発生した、奇妙な殺人事件。殺された眼科医は女好きで、絵画のコレクターでもあった。動機は愛憎絡み、あるいは絵画取引きに関する怨恨なのか。事件を担当するセレナック警部は、眼科医が言い寄っていた美貌の女教師に話を聞くうちに、彼女に心惹かれていく。一方、村では風変りな老女が徘徊し……。『彼女のいない飛行機』で人気を博した著者の傑作ミステリ。(本書あらすじより)

いやいやいや、なんですかこれ、めちゃくちゃ面白いじゃないですか。本ミスランクイン、ベスト3待ったなし。とりあえず、『Zの喜劇』以来の仏ミス本格ミステリの傑作ではないかと思います(色々忘れてる気はするけど、とりあえず言い切っておく)。
同作者の『彼女のいない飛行機』は、読もう読もうと思っているうちになぜか読まずじまいになってしまったのですが、どうやら今回の『黒い睡蓮』は『彼女のいない飛行機』とは完全に別タイプの作品だと考えた方が良い、らしいです。つまり、『彼女のいない飛行機』が好きだろうと嫌いだろうと、とりあえず読んでみろ、とそういうことですね。

ネタバレの地雷を踏みかねないのであんまり言えないのですが、とりあえずモネが晩年を過ごしたジヴェルニーという田舎で殺人事件が発生します。一方で村での様々な出来事や人々の行動が描かれ、これらが最後にひとつに結びつく……という結末は、まぁ大方の予想できるものではあるでしょう。

ややずるいところもありますが、総じてギリギリのところを成立させる巧みさが目立つので許せてしまう、非常にトリッキーな作品です。本質だけ抜き出すとめちゃめちゃ王道の仏ミスっぽいのに、仏ミスらしからぬ贅肉のつけかたの上手さによって、これが実にきれいに決まっています。
というか、この贅肉がお見事という他ないんですね。細かいところがめちゃめちゃ技巧的。別に贅肉を入れなくても本筋だけで成立するところを、色々混ぜ合わせているあたり、作者のトリックへのこだわりが見えて大いに感心します。

基本的には淡々と捜査や村の様子が描かれていくのみで(これがまた結構面白い)、相変わらずフランスの警官は容疑者と恋に落ちてばっかりだなマトモに捜査しろ、なんて考えながら読んでいると、第一部終わるあたりで、えっなにどういうこと?という展開におったまげ、さらにそれどころではない真相にあひゃーっとなること間違いなし。作者が読者をここまでで物語に完全に入りこませているため、繰り出されるどんでん返しになすすべもありません。
そもそもこの最後のどんでん返しによって、ここまで描かれてきた物語が一気に収束していき、さらに言い方はあれですがとにかく「良い話」に見事におさまっていくのです。だから、読了後の満足度がとにかく高いのですよね。類似作は思い付きますが、ここまで仕上がっているものは珍しいのではないでしょうか。

超個人的な好みを言うと『Zの喜劇』のような変態ミステリの方が興奮してしまったというあたりに、純粋な良い話では満足できない自分の残念さがうかがえるのですが、間違いなく今年のフランス・ミステリの新たな収穫だと思います。特に国内本格ミステリ好きの方、ぜひぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

原 題:Nymphéas noirs(2011)
書 名:黒い睡蓮
著 者:ミシェル・ビュッシ Michel Bussi
訳 者:平岡敦
出版社:集英社
     集英社文庫 ヒ-8-2
訳 者:2017.10.25 1刷

評価★★★★☆

『闇夜にさまよう女』セルジュ・ブリュソロ - 2017.11.19 Sun

ブリュソロ,セルジュ
闇夜にさまよう女
『闇夜にさまよう女』セルジュ・ブリュソロ(国書刊行会)

頭に銃弾を受けた若い女は、脳の一部とともに失った記憶を取り戻そうとする。「正常な」世界に戻ったとき、自分が普通の女ではなかったのではと疑う。追跡されている連続殺人犯なのか? それとも被害者なのか? フランスSF大賞等受賞の人気作家ブリュソロの最高傑作ミステリー 、遂に邦訳!(本書あらすじより)

セルジュ・ブリュソロといえば、角川文庫から出ている『真夜中の犬』でフランス犯罪小説大賞(フランス冒険小説大賞)を受賞した作家……ということしか知らないのですが、この度国書刊行会から単行本が出ましたので、いざ読んでみたわけです。
最初50ページくらいまで読んだ時は、ずっとこの感じだとしたら傑作じゃないか?と思っていたのですが、うーん400ページやってこういうオチなのかぁ。300ページだったら、もうちょっと評価したかな、という感じ。

何者かに狙撃され、記憶をなくした女。記憶はないながらも、重大な秘密を知ってしまったため命を狙われているのだ、と語る彼女と共に、ボディーガードの女性は逃避行を始める。はたして彼女は正気なのか狂人なのか、その人物だけが目撃しているという敵は現実なのか妄想なのか……?

というミステリなのですが、フランスにはフランシス・リック『危険な道づれ』という先例があることだけは言っておきたいのです。似てるってレベルじゃねーぞ。
ただし、『危険な道づれ』と『闇夜にさまよう女』は、あらすじこそ似てはいますが、やろうとしていることや結末は大きく異なります。『闇夜にさまよう女』については、要するに彼女の夢、ことば、妄想は、全てそういう理由だったのか、と綺麗にまとまるところが頑張りどころでした。とはいえ、いかんせん長すぎだな……。
ラスト50ページは良く出来ていますが、そこに至るまでが何も起きない or 淡々としすぎ、でややつらいのです。地下の無菌室にいる男だとか、迫りくるインディアンの顔だとか、奇想っぽいところも楽しめますし、終盤の旦那登場からはかなりかっ飛ばしているのですが、おすすめするかっていうと……うーむ。

というわけで、フランス・ミステリの良いところとダメなところ(心理描写のくどさが悪い方に出たやつ)が合わさった、いかにもなフランス・ミステリですので、ボアナル好きなんかは読んでみるべきでしょう。あとは、あらすじに興味を持ったら、で十分かなぁ。

原 題:La Fille de la nuit(1996)
書 名:闇夜にさまよう女
著 者:セルジュ・ブリュソロ Serge Brussolo
訳 者:辻谷泰志
出版社:国書刊行会
出版年:2017.08.25 初版

評価★★★☆☆

『雪と毒杯』エリス・ピーターズ - 2017.11.05 Sun

ピーターズ,エリス
雪と毒杯
『雪と毒杯』エリス・ピーターズ(創元推理文庫)

クリスマス直前のウィーンで、オペラの歌姫の最期を看取った人々。帰途にチャーター機が悪天候で北チロルの雪山に不時着してしまう。彼ら八人がたどり着いたのは、雪で外部と隔絶された小さな村のホテル。歌姫の遺産をめぐり緊張が増すなか、弁護士によって衝撃的な遺言書が読みあげられる。そしてついに事件が──。修道士カドフェル・シリーズの巨匠による、本邦初訳の傑作本格。(本書あらすじより)

エリス・ピーターズ、久々の翻訳です。こちらもピーターズを読むの7年ぶりっていう……高3って……(過ぎし日々を思い起こして頭が痛くなる)。
修道士カドフェルシリーズではなく、ノンシリーズの本格ミステリなのですが、読む前の予想の40倍くらいは派手な展開にびっくりしました。また内容的にも黄金時代を彷彿とさせます。とはいえ本格ミステリとしてどれくらい評価できるかというと、また別の話なのですが……。

ウィーンで大物オペラ歌手の歌姫が亡くなった。チャーター便に乗り帰路につく親族や友人たちは、その途中、飛行機が不時着し、大雪で外界との連絡を閉ざされた山村に泊まることになる。そのような状況で発表された遺言状の内容が引き金となり、やがて殺人事件が発生してしまうのだが……。

金持ち老人の死、飛行機の不時着、外界から閉ざされた雪の山村、おだやかならぬ遺言状、当然の殺人、と見事なまでに本格ミステリ的なギミックが揃った作品ですが、ある種そこを逆手に取ったミステリなので、なるほどこれはやはり黄金時代より後の作品なんだなぁという感じ。ちなみに黄金時代において、これらのギミックを逆手に取らずに真正面から攻めているのが傑作『死の相続』です(大嘘)。
ロマンスの交え方も程よく、登場人物もテンプレっぽさもありつつありきたりではなく、物語を上手く作れていると思います。ちょっと人生の苦み、みたいのを描いてみたりとか。このへんは、やはり英国女流作家の本領発揮といったところでしょう。

ただ本格ミステリとしては、手がかりもへったくれもなく、ある要素を確認することで事件全体ががらっと変わり、はい犯人確定、みたいなものなので、もうちっとこう、何か欲しかったです。主人公が目撃していたことを明かす160ページの展開とかは完璧なんだけど……。設定だけなら完璧な本格ミステリなんだけどなぁ。何一つ内容を覚えていませんが、感想を見る限りでは7年前に読んだ修道士カドフェル2冊の方が、本格ミステリ的に満足していた気がしないこともありません。

というわけで、うーむ、ちょっと評価に困ってしまいます。ストーリーも登場人物も良いんだけど、本格ミステリとしてはちょっと不満だったかなぁという感じ。ただ、エリス・ピーターズの諸作品の翻訳が始まるのは非常に嬉しいので、東京創元社と猪俣さんにはどんどん(アリンガムなども含め)クラシック本格の翻訳を続けて欲しいですね。

原 題:The Will and the Deed(1960)
書 名:雪と毒杯
著 者:エリス・ピーターズ Ellis Peters
訳 者:猪俣美江子
出版社:東京創元社
     創元推理文庫 Mヒ-9-1
出版年:2017.09.29 初版

評価★★★☆☆

『放たれた虎』ミック・ヘロン - 2017.10.25 Wed

ヘロン,ミック
放たれた虎
『放たれた虎』ミック・ヘロン(ハヤカワ文庫NV)

〈窓際のスパイ〉シリーズ最新刊 英国情報部の落ちこぼれスパイたち、通称〈遅い馬〉のひとりで、ボスのジャクソン・ラムの片腕の秘書キャサリンが、何者かに拉致された。犯人の脅迫を受けたカートライトは彼女の身の安全と引き換えに、本部へ侵入して厳重に保管された情報を盗み出すことを引き受けるが……仲間の危機、そして〈泥沼の家〉の存亡をかけて、ラムが重い腰を上げ、〈遅い馬〉たちの奮闘がはじまる!(本書あらすじより)

相変わらず素晴らしく面白いスパイ小説シリーズでした。冷戦後の英国スパイ小説として、これほど完璧なシリーズがあろうか、と私は思うわけです。

英国情報部の中の落ちこぼれや問題のある者が集まる、通称〈泥沼の家〉。そのメンバーの一人が誘拐された。〈泥沼の家〉のメンバーであるリバー・カートライトは、仲間を取り戻すために犯人の要求にこたえ英国情報部から機密情報を盗み出そうとするが……。

初っ端誘拐から始まるので、冒頭のスピード感は今までで一番かも。もちろんこれはスパイ小説、ただの誘拐で済むわけがありません。何しろ序盤から、〈泥沼の家〉は解体の危機に瀕するのです。物語は二転三転し、怪しげな組織、情報部のトップ、そして〈泥沼の家〉の間で、互いの存亡をかけた賭け引きが繰り広げられます。
全文皮肉に満ち満ちた文章を呼んでいるだけで楽しいのです。150ページ近く続く終盤の戦闘シーン(1、2作目よりはるかにアクション志向)や、ぶっちゃけ結局は小粒だったなぁという真相のしょぼさも含めて、愛おしいのです。作者は窓際スパイの過ごす〈泥沼の家〉という、騙し騙されに最適な設定をよくぞ考えたものです。天才か。

〈泥沼の家〉のリーダー、ジャクソン・ラムのキャラクターも相変わらず最高。屁をこきゲップをし、悪口と皮肉ばかり言い、自らは動かずネチネチといやなことばかりさせるというクソofクソ上司ですが(演じているわけではなくマジでこれ、というのがすごい)、いざという時は歴戦のスパイとしての貫禄を見せ、抜群の駆け引きを繰り広げ、さらに〈泥沼の家〉のメンバーがピンチの時は人知れず動くという面倒見の良さ。今回も絶好調です。
ちなみに第1作『窓際のスパイ』では、以下の名文がありました。

「いいか。普段は言わないことだから、よく聞いておけ」それから煙草を一服して、「おまえたちは役立たずだ。みんなそうだ」
一同は "だが" を待った。
「嘘じゃない。能なしでなければ、いまもリージェンツ・パークにいたはずだ」


そして、今回のジャクソン・ラムの名言がこちらです。

「いいか」ラムはバスが突っこんでめちゃくちゃになった玄関を見ながら言った。
「はじめて会ったとき、わしはおまえのことを役立たずだと思った」
携帯電話を操作しながら、ホーは口もとがほころびるのを抑えられなかった。一を聞いて十を知るとはこのことだ。「それで、いつ考えが変わったんですか」
「いつ変わったって、何が?」

やっぱり、これがミック・ヘロンなんですよ。

ぶっちゃけ客観的に見れば、『窓際のスパイ』や『死んだライオン』の方が上かなとは思います。とはいえ、このシリーズ、読んでいてとにかく面白いのです。シリーズ長編第4作『Spook Street』の翻訳を楽しみに待つことにしましょう。

原 題:Real Tigers(2016)
書 名:放たれた虎
著 者:ミック・ヘロン Mick Herron
訳 者:田村義進
出版社:早川書房
     ハヤカワ文庫NV 1418
出版年:2017.09.15 1刷

評価★★★★☆

『ゴーストマン 消滅遊戯』ロジャー・ホッブズ - 2017.10.17 Tue

ホッブズ,ロジャー
ゴーストマン 消滅遊戯
『ゴーストマン 消滅遊戯』ロジャー・ホッブズ(文藝春秋)

犯罪のプロとしての心得を私に教えた師匠アンジェラがマカオで危機に。彼女を救い出し、異国から脱出せよ。白熱のノワール第二弾。(本書あらすじより)

出ましたゴーストマン。作者ホッブズの急逝により、シリーズ2作目にして最終作でもあります。
邦題からも分かる通り(また編集者さんがツイッターでもおっしゃっていますが)、悪党パーカーへのリスペクト味のある、言わば21世紀版悪党パーカー+α、なゴーストマン。彼は犯罪プランナーではなく、「ゴーストマン」、すなわち痕跡を残さず消えることがお仕事です(もっとも肉弾戦もまぁまぁ強い)。

さて今回は、主人公ゴーストマンのお師匠であるアンジェラさんが大ピンチに陥ったところから物語が始まります。彼女がマカオで立てた宝石強奪計画が、ある事情からとんでもない危機を招き、窮地に陥った彼女は友人であり弟子でもあるゴーストマンを呼び寄せます。そしてアンジェラさんに身も心も捧げ、行方を追うこと数年間、半分ストーカーになりかけていたゴーストマンは、長年待ち望んでいたアンジェラからのヘルプに秒速で飛び込みます。どう考えてもロクな目にならないのに、アンジェラのためならばと、この危機の対処に協力することになるのです。

……というわけで、身を隠し変装するのが得意なはずのゴーストマンが、音速で居場所バレして逃走しながら人を殺しまくる話なので、どちらかというと襲撃担当のボタンマンでした。すなわち、今回はアクション小説なのです。
ところで前作の見どころの1つでもあったのが、主人公ゴーストマンによる軽快な携帯破壊。居場所を突き止められないことが命のゴーストマンは、1回使用するごとにプリペイド携帯を真っ二つに折るのです。その数、24個(推測含めると30個)。
ところが今作では、ゴーストマンとアンジェラことゴーストウーマンを合わせても、5個(推測含めると8個)しか壊していません。ま、つまり、連絡取ったり逃げたり隠れたりする話じゃないってことなんですよね。このへんからも、内容や方向性がちょっと変わったな、というのが分かります。

窮地に陥った主人公達が、複数の犯罪組織を相手にしながら上手いこと立ち回り、いかに逃げのびるか……という内容で、ひたすらバトル&バトル。ピアノ線が首を切断し、船では弾丸が飛び交い、ホテルではパンチが飛び交うのです。とはいえどれだけ画策しても、最終的に立つ鳥跡を濁そうが国外脱出さえすれば身分変えて逃げられるから、ゴーストマンという職業は強い……ってなあたりに、えーこれでいいの、なんて思ってしまうわけです。

1作目同様つまらなくはないんですが、犯罪うんちくを入れすぎて(というか作者が入れたすぎて)テンポが悪くなっているところとか、決着の付け方とかに、ちょこちょこ詰めの甘さが感じられます。方向性が変わったことも含めて、今後どうなっていったのか気になるところですので、生きてシリーズを書き続けて欲しかったなぁと思います。
ちなみに、冒頭、仕事を始める前にスナイパーがiPodを取り出し、イヤフォンを両耳にはめ、演奏時間は10分20秒、などとのたまいます。完全に『ベイビー・ドライバー』じゃないか……(なお、『ハドソン・ホーク』も似たようなシーンがあるという話をこれまたツイッターで編集者さんから聞きました)。音楽と犯罪小説は、やはり、相性が良いのでした。

原 題:Vanishing Games(2015)
書 名:ゴーストマン 消滅遊戯
著 者:ロジャー・ホッブズ Roger Hobbs
訳 者:田口俊樹
出版社:文藝春秋
出版年:2017.09.10 1刷

評価★★★☆☆

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Author:ヨッシー
クリスティ、デクスター、グライムズ、ディヴァインが好きな、ヨッシーことTYこと吉井富房を名乗る遅読の新社会人が、日々読み散らかした海外ミステリ(古典と現代が半々くらい)を紹介する趣味のブログです。ブログ開始から7年になりました。ちなみにブログ名は、某テンドーのカラフル怪獣とは全く関係ありません。
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